アメリカ横断2人旅

めざせNY→LA完全走破!新婚旅行ドライブ挑戦記

アラスカDAY9 さよならアラスカ

 

最終日もマイペース

雨。8時過ぎに起床。しとしとと一晩中降っていたようだ。

テント生活は楽しいと書いたものの、やはり雨のキャンプはつらい。片付けが少しおっくうだが、急いで撤収。屋根付きの食事スペースがあったので移動。

朝食は最後まで残ったラーメン。こんなに毎日ラーメンばかりなのに、飽きないのが不思議。

コーヒーを淹れてタンブラーにたっぷり注ぎ、のんびりと10時にキャンプ場を出発。

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あいにくの雨なので予定も狂いそうだが、帰りのフライトは深夜なので時間は十分。

まず向かったのは、100マイル(約160キロ)ほど離れた、炭鉱跡のゴーストタウン「Independence Mine」だ。

毎度ゴーストタウンに魅せられ、数々の失敗をしてきた私たち。なぜか、「ゴーストタウン」の響きにはあらがえない。

 

 

静寂の世界

雨が降ったりやんだりの中、車を走らせる。

ゴーストタウンを改めてナビで設定すると、20マイルほど迂回した幹線道路を走るよう指示された。

「20マイルも迂回できるか!」ということで、無理やり最短ルートを設定。Willowという街の手前で脇道に入った。

ところが、片側1車線の道路はあっというまに未舗装の道に早変わり。

少し焦ったが、ダルトンハイウェイを走破した私たちにとっては快適な道だ。ゴトゴト揺られながら、きれいな渓流沿いの細道を走り続けると、いつしか標高がグングンと上がってきた。

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見慣れたはずのアラスカの景色だが、標高が高いせいか不思議な世界に迷い込んだ気になる。心細くなるような道をひっそりと走ってきたと思ったら、急に開けた場所に出た。

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車がたくさん停まり、子連れの姿も多い。トレイルがいくつも整備され、思い思いにハイキングを楽しんでいる様子。思いきって歩いてみた。

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小高い山に登り、万年雪が溶け込む池などを眺める。気温が下がっているが、風が心地よい。

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やっと本物のゴーストタウン

車に戻り、少し走ると炭鉱跡についた。

ゴーストタウンと言っても、今は州政府が公園として整備しているようで、駐車料金として5ドル払って入場。

1950年に閉山したというアメリカで2番目に大きかった金鉱山。ビジターハウスやトイレなども完備しているが、行き過ぎたテーマパーク感はなく、昔の建物を再利用したり、崩れゆく建物はそのまま放置したりと雰囲気はよい。

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訪れる人もまばらで、静かな時間を楽しむ。ようやくゴーストタウンらしいゴーストタウンにめぐり会えたことに満足。1時間ほどぶらぶら散策し、ドライブを再開。

 

 

一気に南下、アラスカ湾へ

200マイル(約320キロ)南のキーナイ・フィヨルド国立公園内にある、イグジット氷河に向かう。

昨日ハイキングする予定だったが、雨のため断念した場所だ。きょうも雨のため長時間のハイキングは無理そう。それでも、少し歩けば氷河も見えると聞きチャレンジすることに。

時刻は15時半。今夜のフライトも迫るので急ぐ。

1週間ぶりのアンカレッジに到着。デナリ、フェアバンクスから来た私たちにとっては、久しぶりの「大都会」。これまた1週間ぶりの渋滞にも遭遇し、なんとか市街地を通過。

 

アンカレッジを抜けると、道路はアラスカ湾に沿って進む。

氷河にえぐられたフィヨルドの眺めも壮観。北欧に行ったことがないので比べられないが、地理の教科書の写真にあったような、いかにも「フィヨルド」な地形。

途中、湾内にクジラが泳いでいるのが見えるという場所を見つけ、探してみる。

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気持ちよくドライブを続け、湾内最深部のポーテージという地域を通過し、再び内陸へ。

美しいフィヨルドだったが、恐ろしい歴史も持つ。

1964年、アラスカを襲った巨大地震マグニチュードは9.2。記録上では北米大陸で最大の地震だったという。

アラスカ各地で計139人の死者を出したが、湾内に入り込んだ津波はポーテージの街を壊滅させた。多くの街で復興が進んだが、ポーテージだけは打ち捨てられることになったのだという。

なるほど、宅地などを造成するにの理想的な平地が広がっているのに、いまは手つかずで、ただ草原が広がっている理由が理解できた。

 

 

地球温暖を実感

雨が強まる中、約3時間ほど走ってイグジット氷河のビジターセンターに到着。思ったよりも時間がかかってしまった。

時刻は18時半。フライトは深夜0時。帰りの時間を考えれば、のんびりハイキングをする時間はなさそうだ。

氷河を見下ろすトレイルが整備されていると聞いてきたが、トレイルは往復で5時間ほどかかる。雨も本降りになってきたので、どのみち長時間ハイキングは見送る。

けど、せっかくなので氷河の近くまで歩いてみることにした。

 

説明によると、ここの氷河は年々やせ細り、後退しているとのこと。地球温暖化の影響なのだという。

駐車場からのトレイルには、氷河の先端が存在していた時期を西暦で示す看板が立てられていた。

「1917年」「1926年」「1951年」。なるほど、現在は氷河の痕跡すらないが、昔はこの辺りにまでせり出していたのだろう。

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わずか1世紀も経たないうちに、鬱蒼とした木々が生い茂り、ずいぶんと氷河が消えたことになる。

結局、氷河が見える場所までは早歩きで約10分。昔のひとは駐車場の辺りから氷河が見えていたはずだが、100年後の人はさらに長距離を歩くことになるのかもしれない。

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氷河から流れ出る河川敷にも降りてみた。

氷河特有の細かい泥の川が勢いよく流れている。どうしてもバックカントリーのときの恐怖感がフラッシュバックし、足がこわばってしまった。

 

 

名残惜しいが空港へ

アラスカ鉄道の南端の終着駅があるスワードの街で最後の給油をし、アンカレッジへ戻る。雨はいよいよ土砂降りになってきた。運転はしにくいものの、私たちにとっては恵みの雨だ。

というのも、2日前にダルトンハイウェイを激走して以来、愛車はすっかり砂ぼこりで汚れていた。

ガソリンスタンドで給油するたびに、備え付けのブラシと洗剤で念入りに洗っていたのだが、ダルトンの汚れは相当に頑固。すっきりとキレイになることはなく、最終日を迎えていたのだ。

レンタカー返却時に、「お客さん、一つうかがいますが、この汚れ。規約違反を承知で、まさかダルトンハイウェイに行ってませんよね?」と尋問されることを恐れ、キレイに洗車してから返したいと思っていた。

 

それが、空港に向かい始めた瞬間に土砂降り。

アンカレッジに近づくほど、雨はまさにスコールのように上からも横からも激しくたたきつけてきた。

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「ナイス、雨!グッドジョブだ。もっと強く!!」と願いながら、市街地へ入り、空港へと向かう道路標識を頼りにラストスパート。

 

22時、空港到着。

車から降りてびっくり。まさに「驚きのキレイさ!」だった。見違えるようにピカピカの愛車から、荷物を下ろす。

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アメリカのレンタカーは日本とは違い、返却時にいちいち係員が点検などしないケースが多い。「返却レーンに駐車したら、鍵をフロントまで」という案内にしたがい、ターミナル内へ。

おなじみのHertz。カウンターにカギを返すと、無事に旅を終えられた安堵感が広がる。

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9日間のドライブだったが、デナリ国立公園の奥地を含め計4日間のキャンプをしたり、泥の川をハラハラしながら渡ったり、クマにおびえながら森の中をさまよったりと走行距離自体は多くはなかった。

でも、ありがとう、ヤリス。今回も頼もしい相棒と旅ができたよ。

クマのイラストがキュートな標識に改めてお礼の言葉をかけ、搭乗ゲートへ向かう。

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ここまで来れば、あとは家路へつくだけ。

大きなトラブルもなく、元気にターミナルを歩いていることは、当たり前のようでもあるが幸運なことでもある。特にバックカントリーキャンプのような体験を終えただけに、一層そう感じるようになった。

キャンプとドライブの成功を祝し、搭乗ゲート横のレストランで地ビールの乾杯。サーモンステーキのハンバーグをほおばりながら、旅の思い出を振り返った。

 

深夜24時、空に明るさを残すなか、飛行機はようやくアラスカの大地を静かに飛び立った。

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ここにアラスカ縦断ドライブは幕を閉じるが、さらなるアメリカ横断ドライブに向けて2人の熱は高まるばかりだった。

(なお)

  

この日の走行距離=445マイル

総走行距離=1760マイル

 

 

★私から一言★

告白すると、ゴーストタウン好きは私です。

昔からなぜかB級観光スポットに心惹かれてしまうのですが、広大なアメリカの大地にはゴーストタウンがいくつも点在しており、行き当たりばったりの車の旅。現地で情報を見かけるたびに大して興味もなさそうな彼を無理やり誘ってしまいます。

ただ、さすがアメリカというか、うち捨てられた街のはずなのに、駐車場や散策ルートが整備されている時点で「もう公園じゃん」という思いは拭えず・・・。

いつか本物のゴーストタウンに巡り合いたいと(性懲りもなく)願っています。

 

オーロラなんてものは完全に無視した私たちのアラスカ旅行でしたが、クマの足跡にびびったり氷河の氷でお酒を飲んだり、植村直己の足跡をたどったり、晴天のデナリにも恵まれ、振り返ってみれば最高の旅でした!

アラスカ再訪を誓って、ここに筆を置きます。次回もバックカントリーキャンプをするかどうかはさておきですが・・・笑。

(のん)

 

 

「アラスカ縦断」はこれでおしまい。

 

アラスカDAY8 植村直己を追って

 

最北のプロフェッショナル焙煎所

快晴。8時半起床。

予報に反しての晴れ。フェアバンクス周辺だけ?と思いつつ、アンカレッジ方面も晴れているなら一気に南下する作戦でホテルを出発。

 

向かうはハイウェイ・・・ではなくコーヒー屋。彼女がひそかに調べておいてくれたフェアバンクスの焙煎所へ。

鉄道の引き込み線が入り組む倉庫地帯。「一体、こんなところにコーヒーロースターなんてあるのか・・・」と不安になったそのとき、「NORTH POLE COFFEE」という看板を見つけた。

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「これって倉庫か物流オフィスで、一般人は買えないんじゃ・・・」と恐る恐るドアを開けてみた。すると、店内はコーヒー屋。だが、カフェというより物販専門の様子。

私たちの目的は豆を買うこと。しかし、ミルを持たずに旅を続けている。

店員さんに「旅行中なので少しだけ挽いてくれることは可能だろうか」と相談してみた。12オンス(340グラム)豆を買うので、そのうち半分だけでも挽いてほしいと伝えてみた。

 

すると、男性店員は「ノープロブレム!」。さらに、「旅行中なら、買った豆は開封せずに持って帰った方がいいです。サンプル用に挽いた豆を無料で差し上げますので、そちらを使ってください」とのこと。

さらにさらに、「飛行機で帰るなら、豆は貨物室に預けず、手荷物で。気圧の関係で豆がおいしくなくなります。必ず機内に!」。

うーむ、コーヒー豆にかけるこの情熱。プロフェッショナルな店をアラスカの地で見つけた。

結局、6オンス(170グラム)の挽いた豆を「おまけ」として無料でもらった。

感謝の言葉とともにお店を後にしようとしたそのとき、先ほどの男性店員が呼び止めてきた。

「コーヒーは飲みました?」

 

「ん?コーヒー??」と首をかしげていると、店員は「奥にポットに入ったドリップコーヒーがあるので、どうぞ」と教えてくれた。

「大きいカップと小さいカップどちらがいいですか?」と聞かれたので、大きな紙カップになみなみのコーヒーを入れてお礼を言うと、「1杯だけ?2杯どうぞ!」とさらに笑顔でたたみかけてくる。

恐るべし、極北のロースター。

 

すっかり満足して、車を走らせる。再び定番のフレッドマイヤーに立ち寄り、朝食兼ランチのサンドイッチなどを購入。車内で食べながら南をめざす。

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ケンカはやっぱりいけません

朝いちの定番曲、「美しく青きドナウ」の爽やかな調べとともに車を南へ走らせる。しかし、青く晴れ渡っていた空に少しずつ雲が増え始めた。

 

空模様を反映するかのように、車内に不穏な空気が漂い始めたのは1時間ほど走ったころ。

爆走する大型バイクが気持ちよさそうに目の前を走っていた。車内のBGMは、水曜どうでしょうのテーマソングにちょうど切り替わった。「これぞ、アメリカドライブ!」。

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音楽とともにバイクが走る様子を車窓から動画撮影しようとボリュームを上げる。ノリノリで撮影していたのもつかの間、彼女が音量を下げてしまう。

もう一度、曲をかけ直して動画を撮ると、再びボリュームを下げる彼女。

「動画撮っていたのに、なんで小さくするの?」と文句を言うと、「動画撮ってたなんてわからないよ」と譲らぬ彼女。

おー、この旅はじめてのケンカ!

仕方ないので音量を小さくし、静かにすることにした。なんとなく無言の2人。面白くないので黙って座席を倒し、ふて寝を決め込むことにした。

 

少しウトウトして目覚めると、デナリ国立公園の近くまで戻ってきていた。

いつまでも口をきかないのも大人げない。ふて寝の反省も込めて、ロッジやお土産屋さんが立ち並ぶ一角を散策。

ゴージャスな高級ロッジエリアを歩くと、富裕層と見受けられる観光客ばかり。彼らもツアーバスに乗り、デナリの野生動物を楽しみに来るのだろう。

「我々もやがては歳をとり、こうした旅をする日がくるのだろうか」

「いや、こんな旅よりも、テントを担いで歩き回る方が私たちらしいよ」

「いやいやいや、そもそも金持ちになんてならんよね」など取り留めもない話をしながら、出発。

 

 

キャンプ地をめざして

ここまで運転を頑張ってくれた彼女に代わってハンドルを握る。

車内の空気は、どことなくわだかまりが残ったまま。すると、今度は彼女が座席を倒して、眠りについてしまった・・・。

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まるで、「お返し」とばかりのふて寝攻撃か。いや、本当に眠たかっただけなのかもしれない。

なので、ボリュームを小さく、静かに音楽を聴きながら1人で黙々と運転。

 

今日もデナリは天気が悪い。

私たちが終始見ていたデナリ山も厚い雲にのみ込まれたまま。車内で昼寝するにはちょうどいい天気かも。

毎度感じることだが、旅というのは天気一つでずいぶんと印象が変わる。私たちはラッキーだったのだろう。

デナリでキャンプするなんて、一生に何回もあることじゃない。きょうデナリを訪れているキャンパーにも、一生で一度きりの人もいるはず。

なんだか、晴れているデナリ山を見ることができないのが残念で残念で、とてもひとごととは思えなかった。

 

どうでしょう班も追いかけつつ

そうこうするうちに、デナリ国立公園ゲートから南に30マイルのキャントウェルという小さな集落に到着。

どうでしょう班がキャンピングカーで2夜連続滞在し、大泉さんが特製パスタをお見舞いした地。ちょっと立ち寄り、記念撮影。

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天気予報をチェックする限り、どうにもアンカレッジ以南は土砂降りの模様。一気に南下して氷河近くの国立公園のキャンプ場にテントを張るつもりだったが、予定を見直す。

 

そこで、彼女が代わりのキャンプ地を必死に探してくれた。

デナリ国立公園から南に100マイル(約160キロ)、似たような名前ながら「デナリ州立公園」のキャンプ場が快適そうだとわかった。

テントサイトによっては、デナリ山がきれいに見渡せる場所もあるらしい。この曇り空では見えないだろうが、雨の予報がないことに感謝。

 

1時間半ほど走り、お目当てのキャンプ場に到着。

こじんまりしたキャンプ場だが、きれいに整備されているのはアメリカならでは。テントサイトは芝生で、原野にテントを張ったバックカントリーキャンプと比べれば雲泥の差だ。

隣のサイトとの距離も十分に保たれ、テーブルやキャンプファイヤー用のピット、クマ対策の食料保管倉庫も備え付けてあり、理想的な場所。

しかも、20ドル。迷うことなく、ここをキャンプ地とする!

 

受付もないので、封筒にお金を入れて必要事項を記入し、近くのポストに投函。

車から荷物を下ろし、テントを設営。慣れてきたもので、数分でテントを立てられるようになってきた。

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お隣さんにもお会いしたので、軽くご挨拶。

アラスカにお住まいの女性と、夏休みにカリフォルニアから遊びに来たという10代の姪っ子の2人組。

女性は「昔、東京出身の日本人をホームステイさせていたことがあるのよ」とのことで話がはずむ。

 

 

植村直己を追いかけて

さてさて、キャンプの準備を終えてのんびりしたいところだが、我々にははもう1カ所訪ねなければならない場所があった。

いや、個人的には今回のアラスカの旅で最も重要な目的地と言ってもいい場所。デナリ山への登山基地ともなっているタルキートナの街だ。

キャンプ場からは南へ直線距離で20マイル(約30キロ)しか離れていないが、大きな川に阻まれており、迂回して50マイルほど走らなければならない。

時刻はすでに15時半。往復100マイルの道のりなので早速出発。

 

タルキートナ。

なぜ、この街にこだわるのか。世界初の5大陸最高峰登頂、人類初の単独北極点到達など、日本が誇る冒険家植村直己が滞在した街だからだ。

植村さんを敬愛する山好きの私の母親は、幼いときから繰り返し植村さんの物語を話して聞かせてくれた。植村さんの著書「青春を山に賭けて」は、私が中学生のころからの愛読書だ。

数々の単独冒険に挑みつづけた植村さんだが、1984年、冬季デナリ単独登山に挑戦したのを最後に行方不明となった。

その彼が定宿とし、冬のデナリ山に消える直前に宿泊していたロッジが、このタルキートナにある。ぜひこの目で見たい。これは長年の私の夢だった。

 

曇り空の下、約1時間でタルキートナに到着。

登山の街なので硬派な山男ばかりが集まっているのかと思っていたら、これが予想外。こじゃれたロッジやレストラン、バー、お土産物屋が並び、家族連れで夏のアラスカを楽しむリゾート地であった。

しかし、雰囲気がいい。俗っぽさはなく、歴史も感じさせ、のんびりとした時間が流れる。昔ながらの古き良き山岳リゾート地の印象だ。

 

そして、めざすロッジ「LATITUDE62」はすぐに見つかった。

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丸太づくりで、年季を感じさせる重厚さが伝わってくる。ドアを開けて中に入ってみるが、フロントらしきものがあるわけでもない。

入り口奥には、レストランとバーがあるだけで誰もいない。

「宿泊するわけでもないし、どうしたものだろうか」と戸惑っていると、ウェイトレスの女性が注文を取りに近づいてきた。

「日本人の植村直己がここに泊まっていたと聞き、見学しに来たのですが」と伝えると、「こっちに展示があるわよ!」と案内してくれた。

こじんまりとしたカフェスペースには、日本人として初めてナショナルジオグラフィック誌の表紙を飾った植村さんの写真や、デナリ山に向かう機内で撮ったものと思われる最後の笑顔の写真も。

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偉業をたたえる説明文も掲示してあった。

「歴史はウエムラを偉大なソロ登頂者として記憶するかもしれない。しかし、彼の誠実な慎み深さと謙虚さこそ特筆すべき点だ」

 

人柄を直接に知るからこそ書ける、植村さんへの熱い思いにあふれたメッセ―ジ。

感動しながら見学を終え、バーカウンターに座る。冒険にすべてをかける植村さんがここでのんびりと酒を飲んだとは思えないが、このレストランで食事をしたことだけは間違いないだろう。

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そんな雰囲気を味わいながら、ビールを注文する。バーカウンターには50代ぐらいの女性店員が、宿泊客の問い合わせにも応じていた。この宿の責任者か。思い切って話しかけてみた。

「私たちは日本人なのですが、植村直己の思い出の場所を訪ねてきました」。そう告げると、女性は「まぁ、ようこそ!ここは彼が何度も泊まった場所なのよ」と忙しそうに手を動かしながらも、気持ちよく答えてくれた。

母親が植村さんのファンだったと伝えると、「なんてことかしら。せっかくなら彼が泊まっていた5号室を見せたいんだけれど、あいにく今日は埋まっているの。日本から泊まりに来る人もいるのよ」と気遣ってくれた。

 

植村さんをデナリ山のふもとまで送り届け、その後山頂近くで最期の姿を見届けることになったパイロットは健在で、いまもここでビールを飲んでは、ギターを演奏していることも教えてもらった。

部屋の中を見ることはできなかったが、5号室のドアノブを握り、ドアにそっと耳をあててみた。

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タルキートナのブリュワリーで缶ビールを買い、雑貨店でゆで卵とタマネギを買う。このお店は1921年創業の老舗。恐らく植村さんも食品などを買ったのではないだろうか。

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さらに、タルキートナの小さな空港にも足を運び、次々に飛び立っていく小型機を眺める。短い滞在時間ではあったが、植村さんの足跡を訪ねる思い出深いひとときとなった。

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楽しいキャンプ時間

18時過ぎにタルキートナを出て、50マイルの道のりを1時間かけてキャンプ場に戻る。

夕飯の準備に取りかかるが、なぜかポンプが故障。近くのRVキャンプ場まで水を汲みに行く。

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バックカントリーの残りのラーメンと野菜を煮込む。湯気が立ち、うまそうな匂い。手早く完成。

買ってきたばかりのビールも開け、2人だけの夕食タイム。楽しすぎて、連日のテント生活も苦にならない。キャンプにハマりそうな予感。

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23時過ぎに雨がポツポツと降り出した。いつもより濃い青が残る空を眺めながら、寝袋にもぐりこむ。

(なお)

  

この日の走行距離=320マイル

総走行距離=1315マイル

 

 

★私から一言★

ドライブ中にケンカなんかしたっけ? と全く記憶にないけれど(笑)、タルキートナを訪れて感無量のなおさんの様子はよく覚えています。

植村直己がデナリ山に姿を消してもう長年経つのに、今も彼のことを称える展示が定宿にあったり、宿の人が気軽に植村直己について話してくれたり、山好きの人たちの情の深さを感じたひとときでした。「次は植村直己の部屋に泊まりたいね」なんて話しながらキャンプ場へ・・・。

それにしても、ビール1杯ぐらいなら車を運転してもOKなのは本当にアメリカのよいところです。

(のん)

 

 

DAY8「植村直己を追って」はおしまい。

アラスカDAY9 さよならアラスカ - アメリカ横断2人旅へ続く。

 

アラスカDAY7 めざせ北極圏

 

ダルトン・ハイウェイに挑む

きょうも快晴。9時半ごろ起床。

疲れがたまっていたのだろう、さすがに少し寝坊してしまった。急いで準備をして、ホテルを出発。

 

昨夜も訪れたFred Meyerで朝食、昼食、さらに非常用の水などを買い込み、ガソリンをたっぷり補給。

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きょうの目的は、「水曜どうでしょう班」も走った悪路ダルトン・ハイウェイの走破。

ただし、どうでしょう班が宿泊したコールドフットまでは片道で7時間近くかかるらしいので、目的地はその手前、北緯66度33分の北極圏とした。

もし順調に走れそうな手応えがあれば、一気にコールドフットも狙おうという算段だ。

10時にはフェアバンクスを離れたかったのだが、寝坊のせいで11時に出発。ダルトン・ハイウェイに向けて北上する。

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「未舗装のタフな道」とは聞いていたものの、走れども走れども舗装された道。交通量も少なく、快適なドライブが続く。

「案外あっけなくコールドフットまで行けちゃうかもね」なんて話ながら、2時間ほど走る。すると、不意に道路脇に「未舗装」の標識が出た。

「次の425マイル区間ではライトを点灯せよ」との表示も。425マイル(700キロ)もライト点灯!?

車内の空気もピリリと引き締まる。

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ついにやって来た。ここからが本当のダルトン・ハイウェイだ。

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未舗装の道を走ることに不安はなかったが、道中でのパンクやフロントガラスが割れることには不安を感じていた。

水曜どうでしょうでは、「レンタカーはダルトン・ハイウェイを走れないので、ツアーガイドを雇う」という話だった。もちろん、あれは季節が荒れ出す秋のこと。

 

前述の通り、レンタカーの規約ではダルトン・ハイウェイでの事故、故障は保険対象外。ただ、空港で車を借りるときに特に注意はなかったし(おじさん係員が泣きそうな顔で車種違いのトラブル対応に追われていたためだが・・・)、受け取った書類にもそんな注意は見当たらない。

と開き直りつつも、あくまで「自己責任もやむなし」の覚悟でダルトン・ハイウェイに飛び込んだ。

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憧れのダルトン・ハイウェイ。

未舗装とはいえ、想像よりも路面は堅く引きしめられていた。日本の田舎の砂利道の方が、よっぽど走りにくいかもしれない。

しかし、舗装道路よりスピードが出せないのは事実。50マイル(時速約80キロ)ほどでトロトロ走る。

 

そして、怖いのが大型トレーラーだ。

片側1車線相当の道を、彼らは猛スピードですれ違ってくる。そして、すれ違いざまに大量の砂ぼこりと小石をはねあげる。この小石が強敵だ。

こちらも速度をあげたままでフロントガラスに小石を受けようものなら、運が悪いとガラスが割れてしまいそう。

なので、大型車とすれ違うときは極力車を端に寄せ、停車ぎりぎりまで減速しながら恐る恐るやり過ごした。

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一般車は少ないが、大型トレーラーなどの行き来が多い。

真っ直ぐ伸びた道の遥か先に大きな砂ぼこりが、まるで山火事のように立ちのぼっているのが見える。大型車が近づいてきている証。そのスケールの雄大さに感動する。

 

心配していた道のりだが、意外に舗装区間も多かった。これは心強かった。

そしてさらに走ること1時間、ユーコン川が現れた。

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ユーコンでひと息

ユーコン、この目で一度見てみたいと夢にまでみていた川。その音の響きに長い間ひかれてきた川。

大河だった。下流域ならこの程度の川幅も当然だろうが、ここから河口までは約1千キロ。なんという川だろう。

 

木造路面の橋を渡ると、ガソリンスタンド兼レストランが見える。日本の片田舎のドライブインという印象だが、小休憩のため立ち寄ってみる。

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飲料、簡単な食料などのほか、Tシャツやキャップなどのお土産も売っている。店内ではちょうど食事をしている人たちも。トイレを貸してもらうため店の奥に向かうと、宿泊所もあるようだった。

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荒野が続くダルトン・ハイウェイ。利用客はまばらだが、緊急時の避難などのためにもこうした施設は必要なのだろう。

 

ガソリン残量を確認すると、給油せずとも北極圏まで行って帰るには十分な量。

ただ、「もしかして、コールドフットまで行けるかも・・・」という可能性を残すため、給油することにした。

ところが、私の本音が見透かされたのか、「コールドフットには行かないからね」と彼女から念押しの一言。たしかに無謀な挑戦だよね・・・ということで、本当に念のためだけの給油。

 

給油機は古いタイプが1基だけ、お店から離れてポツンと立っている。

クレジットカードを通す機械も見当たらない。お店に戻って店員に聞いてみると、「給油した後にメーターのPHOTOを撮って、ここに持ってきて」とのこと。

「ん?PHOTO??」。予想外のひと言で、頭の中に「はてな」マークがいくつも浮かんだ。なぜにフォト?私の聞き取り違い??

アメリカに住んで1年。とっさの英語の聞き取りにはいまだに自信がもてない。

給油量を写真で確認するということかと、ようやく理解したのはしばらくしてから。

 

店員にひとまずクレジットカードを渡し、再び給油機へ。1ガロン(3.8リットル)で5.5ドル。高い!

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アンカレッジだと1ガロン約3ドル。倍近い値段がするのは、へき地ダルトン・ハイウェイ沿いだけのことはある。

我々は3.5ガロン入れて約20ドル。「安心を買うと思えば安い」と自分に言い聞かし、メーターの数字をスマホで撮影し、お店に戻る。

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レジの店員に画面を見せると、「OK!」の返事。

給油途中の数字などを撮影し、ごまかす人はいないのだろうか。いや、この極北の地にそんな悪人はいないのだろう。

性善説に立った社会なのだろうなぁ・・・なんてことを考えていたら、20代ぐらいの女性店員が、笑顔でクレジットカードを返してくれた。

こんな女の子がここで働いているのか。オーナーの娘さんか。思い切って聞いてみると、「数カ月ここに住みながら働いています」とのこと。

 

お店を出ると照りつける日差しがまぶしい。

駐車場には、衛星電話やインターネット工事の車両。もちろん、長期滞在してもネットや電話も使えるし、お酒も飲める。美味しい物だって食べられるに違いない。

でも、20代の女の子が何カ月も・・・そのワイルドさに感服しつつ、車を発進させる。

 

 

進路は北へ

ダルトン・ハイウェイを走っていると、ちらちらとパイプラインが見える。

北極海に面するアメリカ最大の油田プルドーベイから、南部の港町バルディーズへとアラスカを縦断する約800マイル!(1300キロ)のパイプラインだ。

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なんという長さ!北海道最北の宗谷岬から東京までの直線距離が700マイル(1100キロ)なのだから、その長大さがわかる。

この中を原油が長距離運ばれているのかと思うと、気が遠くなるほどだ。

  

さらに車を走らせること約1時間。とこどろころにカメラマークの標識が立っており、景色を眺めるビューポイントであることを知らせてくれる。

標識を過ぎてしばらく行くと、道路脇で「STOP」表示を持った工事現場のお兄さんの姿が。「工事であと15分ぐらいは通れない。そっちで待ってもらえる?」とのこと。

指の先にはトイレとビューポイントらしき場所。しばし、散策へ。

 

フィンガーロックと呼ばれ、指の形のような巨岩など奇岩が点在するスポットらしい。小高い丘になっており、まるで古代都市の遺跡でも見ているかのような気分だ。

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北極圏に近づくにつれて緯度が上がるため、森林は尽き、背の低い灌木やツンドラの大地が広がっている。

晴れ渡る青空に緑の大地。気持ちがいい。

どうでしょう班が訪れたときは鉛色の景色に雨が降り、大泉さんが「まるで登別の地獄谷みたいだな」と言っていたのが印象に残っていたが、正反対のすがすがしさ。

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軽いハイキングを終えて、車に乗り込み道路に戻ると、通行止めも解除。北上を再開する。

 

 

北極圏到達

走ること30分。ついに北極圏に到達した。

その景色はこれまでの風景と大きく変わるわけではなく、「ここから北極圏!」と言われなければ気づかず通り過ぎてしまいそうだ。でも、れっきとした北極圏である。

ここから先は、夏至には一日中太陽が沈まない白夜の世界になるわけだ。当然、冬には太陽が昇らない極夜となる。

「もしかしたら、2人の人生で最北の場所に来ているのかもね」「いやいや、将来グリーンランドアイスランドを訪れることもあるって」なんて会話をしながら、北極圏を示す看板の前で記念撮影。

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ここは観光スポットでもあるらしく、それなりに人が立ち寄る。

私たちの滞在中だけでも、乗用車が2台、バイクが2台。バイク乗りは初老の男性2人組。テネシー州からツーリングしてきたとのこと。

「退職して時間があるので、いろんなところを旅している」。うらやましいリタイア生活。北極海に面するプルードベイをめざしていたが、天候が大荒れで通行止めになると聞いて、ここで引き返すそうだ。

 

駐車場の片隅には、記念スタンプを押してくれるおじさんの姿も。「こんな場所で記念スタンプ!?」と思いながらも、押してもらう。

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雨でも毎日いるのか聞いてみると、「交代でね。テントで屋根もあるから、全然平気だよ」と人なつっこい笑顔で答えてくれた。

決して観光客で混み合う場所ではない。というより、普通の観光でこんなところまでわざわざ来ないだろう。しかし、なぜか気持ちがいい。

どうでしょう班のように、赤いカーペットを敷いてシャンパンでも開けたいところだが、時刻は16時過ぎ。

ここまで道草をしながら5時間。そろそろ戻らねば。15分ほどの滞在で、いざ帰還!

 

 

ユーコンでまたひと息

帰り道は、ツーリング2人組を追いかけながら一気に南下。

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ユーコン川まで2時間。せっかくなので、車を降りて川岸まで近づいてみる。水を手ですくってみると、想像通りの冷たさ。目の前でみると改めてその大きさを実感。

今度来るときはカヌーにでも挑戦してみたい・・・そんな密やかな願いを彼女にばれないように胸に秘めた。

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せっかくなので近くのパイプラインも間近で見学。もちろん、ベンチャーズのヒットカバー曲「パイプライン」のメロディーを口ずさむ。

この壮大さに魅せられてエレキギターをかき鳴らしたのだろう・・・とばかり思っていたが、調べてみるとハワイのサーフィンスポットの波「パイプライン」に由来するようだ。

極北の地とハワイ、まるで見当ちがいであった。が、この壮大さはすごい。

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ドライブを再開し、ダルトン・ハイウェイの入り口まで戻るのに約1時間半。車は砂ぼこりにまみれ、色が変わってしまったよう。

明日にでも気合を入れて洗車しないとダメだな・・・そんなこんなで、ダルトン・ハイウェイを走り終えた。

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ダルトン・ハイウェイを走ってみた実感では、北極圏への道のりの3割程度は舗装路だった。

どうでしょう班がこの道を通ったのが1998年。もう20年以上も昔のことだ。その間、ダルトン・ハイウェイも幾多の歴史をくぐり抜け、完全舗装化への道を歩み出しているのかもしれない。

実際、ドライブ中は何カ所も道路工事が行われており、長時間の停車を強いられたが、これだけの道路はメンテナンスするだけでも大変だろう。

日本と違って、工事現場では男女関係なく活躍しているのもアメリカならではなのだろう。パワフルに働く女性の姿も数多く見かけた。

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10年後に来たときは、全線で快適なドライブが出来るハイウェイに変わっている・・・なんてことは結構あり得る話なのかもしれない。

思い出いっぱいのダルトン・ハイウェイとなった。

 

 

長い夜をのんびりと

往復で計10時間ほどのドライブで、ホテルに戻ってきたのが21時前。

早速夕食に繰り出す。ホテル隣にあるアメリカンなダイナーに決定。ステーキをほおばり、ビールを飲みながら北極圏到達を祝う。

 

ほろ酔いでレストランを出て、せっかくなので散歩。23時を過ぎてもまだ夕焼けが明るいフェアバンクスの街。白夜とは行かないが、どうにも不思議な感覚だ。

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ホテルに戻り、明日の作戦会議。

アンカレッジを通り過ぎて、アラスカ南部の国立公園でキャンプをしながら氷河見学を予定していたが、南部は天候が悪いらしい。

明日の天気次第でキャンプ地を決めればいいやと、結構いい加減なプランを立てつつ、極北の地でぐっすり就寝。

(なお)

  

この日の走行距離=400マイル

総走行距離=995マイル

 

 

★私から一言★

未舗装の砂利道を何百キロも走るなんて何が面白いンだ? などという疑問を差し挟んではいけません。相棒が行きたいと言ったらとにかく付き合う。それも旅のスタイルの一つです。

がたがた道をのろのろ走っているときは、「軽トラならもっと飛ばせるのになぁ」と呑気に田舎の農道を思い出していましたが、砂ぼこりを巻き上げてダンプが近づいてくると、気分は一気に『マッド・マックス』。アメリカには、タイヤが乗用車の車高ほどもあるモンスター級のダンプがいるのです。象の突進に身をすくめる子ネズミのような心地で何度もダンプをやり過ごしました。

延々と広がる低木の原野はまるで別の星のようで、往来する車が途切れると、ふいに風の音だけになり、ぞくっとする瞬間がありました。ユーコン川を見つめて感無量のなおさんでしたが、実はカヌーで川下りをしたいのだと知っています。まぁそれは別の相棒を探してもらおうかな(笑)。

(のん)

 

 

DAY7「めざせ北極圏」はおしまい。

アラスカDAY8 植村直己を追って - アメリカ横断2人旅へ続く。

 

アラスカDAY6 文明への帰還

 

朝焼けのデナリ山

4時過ぎに起床。快晴!

彼女はすでに起きていたようで、「デナリ山の朝焼け、すごいよ!!」と興奮気味。

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昨夜は緊張とあきらめとで眠りに落ちたが、クマがうろつく夢を見たり、うまく撃退するような夢を見たり、眠りが浅いままフワフワとした感じで目覚めた。

しかし、何より最大の難関と思っていた夜を無事に越せたことに安堵した。

「夜を無事に越す・・・」なんて大げさかもしれないが、何事もなく朝を迎えられたことに正直ホッとした。

 

寝不足ではあったものの、朝焼けに輝くデナリ山を見た途端、眠気なんか吹っ飛んでしまった。とにかく美しい。

そして、この広大なユニットとデナリ山の眺めを「2人占め」していることにも改めて感動。

天気予報ではお昼から雨になるかもとのことで、雨中行軍を避けるために早朝出発と決めていたが、どうやら今日も天気はすこぶる良さそうで一安心。

 

早速、茂みにデポしておいたベア缶を見に行く。

「クマがこじ開けようと格闘した形跡はないだろうか」と恐る恐る近づいてみると・・・昨日とまったく同じ場所、同じ向きで置かれたままだった。これまた一安心。

クリークの冷たい水で顔を洗い、歯磨きもして出発準備。

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2人を一晩守ってくれた「手づくりバリケード」を撤去。人がいた痕跡を残さないよう、流木はあたり一面に散らす。

川の中につくった即席冷蔵庫の岩も元の場所に戻した。

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朝食はチョコやクリフバーを食べながら歩くことにした。一刻も早くワンダーレイクのキャンプ場に戻るためだ。

というのも、ワンダーレイクを発車するバスの時間が限られていたからだ。私たちが乗りたいバスは11時半発。少し余裕を見て、6時過ぎにはキャンプ地を出発することにした。

ベア缶の荷物も詰め替え、準備を急ぐ。テントが朝露にキラキラ輝く。

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帰りのルート

さて、どのルートで戻るのか。ちょっと頭を悩ませた。

昨日は川を渡ったり、森の中をやぶ漕ぎしたりして4時間半かかった。同じ道を戻るだけなら昨日ほど時間はかからないだろうから、3時間半ほどで踏破する自信はあった。

 

だが、やはり森の中は怖い。

2人とも口には出さなかったが、茂みの中でクマにばったり遭遇する恐怖は消えていなかった。なので、できるだけ森は避けたい。

そこで浮上したのが、キャンプ地に流れ込む清流のクリーク沿いに戻るルート。

草原に流れるクリーク沿いであれば森の中を歩く恐れもない。問題は、地図で確認できないクリークが出現した場合、道に迷ってしまわないかどうかだった。

しばらく検討したが、道に迷いそうな場合は携帯の地図アプリで確認すれば大丈夫だろうという結論に至った。

 

それほど、この極限の世界ではクマの存在が怖かった。しかし、昨日の経験から水の流れで立ち往生する事態が恐ろしいのも事実。

マッキンリー川の泥の急流は、なぜだか恐ろしさを感じさせる。クリークの流れもところどころ速く、深いところは腰まである。それでも何とかなるような気がするのだが、泥で濁るマッキンリー川には不思議と恐怖を覚えた。

 

というわけで、クリークを上流に向かって歩く。どうしても進めないような状況になれば、昨日のルートに復帰することに決めて出発!

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ツンドラの大地を行く

クリーク沿いはツンドラ特有のフワフワした草が生い茂る程度で、とても歩きやすい。昨日の森のやぶ漕ぎと違って、スピードも出る。

森との距離も5~10メートルはあるので、見通しもきき安心だ。

「これは、なかなか快適だねー」なんて2人で喜び合っていたのもつかの間、クリーク沿いに小さな崖が迫り、どうしても森の中に戻ることを余儀なくされた場面もしばしば。

できるだけ森の端を歩き、クマに警戒しながら進む。

「クマさーん、おはようございます」

「クマさーん、少しだけお邪魔しております」

「クマさーん、水曜どうでしょうです。怪しいものではございませんよー」などなど口に出しながら森の中を歩く。

 

昨日と違ったのは、叫ぶような大声は出さなくなったこと。そりゃ、朝から大声を出されたら目が覚めて苛立ってしまうのはクマも人間も同じだもの。

それでも、なぜかクマに語りかけるような声が自然に出てきたから不思議だ。

 

 

蛇行するクリーク

クリーク沿いのルートは正解だった。だが、やはり懸念していたことも起こった。

地図アプリを見たところ、途中どうしても大きなクリークを渡河する必要が生じたからだ。

渡るのであれば、できるだけ浅い場所で渡りたい。だが、地図を見ながら歩みを進めると、地図には載っていない無数のクリークが目の前に現れた。

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地図上では2本のクリークが並行しているはずなのに、実際にはクリークが大小10本ほど。

「どのクリークが地図上のクリークなのか・・・恐らくこのうちの大きな2本だろう」と目星をつけるのだが、どれが大きい流れなのか判別しにくい。

小さなクリークをどんどん飛び越えて本流をめざすべきなのか、いやいやこの小さな流れが地図で示されたクリークなのか。確認のため、たびたび足を止めざるをえなかった。

なので、少し歩いてみてGPSで位置を確認し、方角を確かめながら微修正することを繰り返した。

しかし、だんだん歩いているうちに、どれが本流で、どれが支流なのかが自然とわかるようになってきた。

川の流れ、深さ、周辺の草原の広さ、そして行く先の森林地帯が開けているかどうか。それらを見ているうちに、進むべき方向がおのずと見えてきた。

これもまた、動物としての人間が持つ能力のひとつなのかもしれない。

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小さなクリークを渡るうちに靴も濡れてしまったが、一度濡れればもう怖いものはない。渡河しなければと懸念していた大きなクリークも、いつのまにか無事に渡ってきたようだった。

そして、しばらく歩くと急に平原が広がり、視界が開けた。

 

  

美しきバックカントリー

この瞬間だろう。まだまだ道半ばだったが、我々2人は「これで無事に帰ってこられた」と確信した。

川幅を増したクリークが悠々と流れてはいたものの、多少遠回りしてでも歩いていけば、もう大きな危険をおかさずともキャンプ場まで戻れるだろうと思った。

相変わらず、「あるー日、森のーなか」「ぼくは熊、クマ、熊、クーマー」と歌い続けていた2人だったが、この開けた草原に出てから歌う声はより明るく、テンポものびやかになっていった。

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昨日の炎天下とは違って早朝で気温が低いせいか水の消費量は少ない。それでも、貴重な飲料水。節約しながら飲んでいた。

そろそろ思う存分飲んでも問題ないかな・・・と思った矢先、彼女が叫んだ。

 

「あ、ブルーベリー見つけた!!」

 

実は小さいが、一粒つんで口に入れてみる。その甘いこと、みずみずしいこと。

ほどよい酸味で、のどの乾きも一気に癒えた。ちなみに、これは後でわかったことだが、私たちがブルーベリーだと思っていたのはハックルベリーだったらしい。

当然、小さな一粒では足りない。

しかし、そんなに群生していないためか、10粒とるのがやっと。のどが渇いていたので、まだ緑色の熟していないものまで試しに食べてみたが、これがうまい!

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そして、彼女は実によくベリーを発見した。なんでも、一度葉っぱの形を覚えれば、多少離れた距離からでもすぐにわかるのだという。もしかしてクマですか??

 

帰路に就いた安堵感もあったせいか、すっかりベリー探しに夢中な2人。大きな群生地を見つけたときには、「おー!ここすごいよ!!」と声を合わせて狂喜乱舞。

 

「クマさーん、のどが乾いているので少しいただくだけですよー!」と森に向かって声をかけては、口にほおばる。

本当に美味しい。一気に体力が回復してくるような気がする。

それでも、もちろんベリーは摘み過ぎず、適度に食べては次の群生地を探した。クマにも生態系にも優しく!

 

身も心も軽くなった2人を悩ませたのが蚊だ。

クリーク沿いを歩いていたときも蚊柱が立っていたが、草原に出てからの方が数が増したようだ。

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常時、100匹ぐらいは体の周りを飛んでいる気がする。蚊よけネットを頭からかぶってはいたものの、ネットが顔にくっついた瞬間などを見逃さずに刺してくる。

こんな早朝から元気に飛び回るとは、さすがアラスカの蚊は都会の貧弱な蚊と違う。

 

さらに歩く。

ときどき、地図やGPSで現在地を確認したが、このまま進めば往路のトレイルにぶつかることを確認。あとは何の心配もなく、ハイキングを楽しむだけだ。

振り返れば、早朝の陽に輝くデナリ山。気温が上がると山に雲がかかるので、楽しむなら早朝に限りそうだ。

それにしても、この広いバックカントリーユニットを2人だけで占有しながら、デナリを楽しめるなんて。こんな豪華なキャンプとハイキング、ほかでは味わえないのではないだろうか。

小さな池の穏やかな水面には、デナリがキレイに映っていた。

2人が会話を止めると、ただただ静寂だけが広がる。野花も風に揺れる。天国があるとすれば、こんな景色なのかもしれない。

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文明への帰還

歩き続けること3時間弱。トレイルに出た。

ベリーを探したり写真を撮ったり、後半はのんびり歩いたけれど、予想以上の早さで戻ってきた。

トレイルにかかる橋を見た瞬間、真っ先に感じたのは「人工物だ!」ということ。

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出発してから人工物を目にしたのは、昨日森の中に落ちていた靴下のみ。こうして、しっかりと手入れされた橋を見ると感慨深いものがある。

結局のところ、人は人の存在に心を癒やされるのかもしれない。自分たち以外の存在を久しぶりに感じ、ふとそんなことを思った。

 

とにかく、文明社会に戻ってこられたという実感が湧く。改めて振り返ってデナリ山を見る。何度見ても美しい。夢のようだ。

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トレイルをのんびり歩く。まだまだ森の中を通過する区間もあるので、改めて「ある―日、森のなかー♪」を合唱。いったい何度歌ったことか。

 

しばらく歩くと、向こうからハイキングの男性が現れた。「グッドモーニング、最高の朝だね!」と声を交わす。

久しぶりに彼女以外の人間と会話をした。たった1日のバックカントリーキャンプ。なのに、ものすごく久しぶりに人と話をしたような感覚だ。

 

トレイル沿いには数え切れないほどのベリーが群生していた。昨日歩いたとき、なぜ気づかなかったのだろう。

「きっと、昨日はいろいろ集中していて、道ばたのベリーなんて目に入らなかったんだよ」と彼女。

うん、納得。往路は知らず知らずのうちに、ものすごく緊張していたんだろう。

 

トレイルヘッドまで戻り、さらにバスが走る道を歩き、9時過ぎにはワンダーレイク・キャンプ場に帰ってきた。

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のんびりバスを待つ

前述の通り、ワンダーレイク・キャンプ場はデナリ国立公園の最深部。携帯も圏外で決して文明の地とは言いがたい。

だが、バックカントリーから帰ってきた私たち2人にとってはトイレ、水場、テーブルなどなど、「これこそ人間が生み出した文明!」と感謝せずにはいられない。

2日前に訪れたときとはキャンプ場の印象がまったく違う。

 

泥にまみれた靴を洗って干し、早速食事の準備。スーパーで買ってきた29セントのインスタントラーメンに、タマネギを煮込んで食べる。

うまい!どうしようもなくうまい!!

そんなにお腹は空いていなかったはずなのに、2袋も食べてしまった。

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食後にはコーヒーをいれ、デナリ山を見ながらのんびりと過ごす。

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さて、11時半のバスに向けて、そろそろ出発準備。

キャンプ場の食料庫の中には不要になったガス缶を次のキャンパーのために置いていくコーナーがあることも前述した。

それ以外にも登山靴、ドライフード、鍋なども置いてあった。キャンプ用のチタン鍋セットが置いてあったので、残りのキャンプ用に拝借。

替わりに私たちのアルミ鍋を置いてきた。

 

バス乗り場に行くと、すでにバスは到着。

ただ、キャンパーバスではないので、あくまで空きがあれば乗れるというルール。すでに5~6人が待っている様子。

どうやら私たちが乗れるスペースはないようで、「次の1時間後のバスに乗ってくれ」と言われてしまう。

 

しかたないので、バス停で待つ。蚊が飛び回るので、蚊よけスプレーと蚊よけキャンドルを点火。けれど、この暑い中じっと待っているのもつらい・・・再びワンダーレイクを見に行くことにする。

一緒にバスを待っていたカップルは、バス停の横に蚊よけのためにテントを立てて、横になって読書を始めた。さすが本物のキャンパーだ。

「ちょっと湖まで行ってくるよ」と声をかけると、「いいねー、エンジョーイ!」と答えてくれた。

 

湖までは歩いて5分ほど。先客も2人ほどで静かだ。

しばらく眺めていると、後方からバスが近づいてきた。ぞろぞろと大量の観光客が湖に押しかけ、のんびり楽しむどころではなくなってしまった・・・撤収。

さようなら、ワンダーレイク。

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バス停に戻り、キャンパーバスの到着を待つ。

運転手さんに「空きスペースまだありますか?」と確認して、無事にバスに乗り込む。これで本当に一安心。

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再びバス旅へ

12時半、再びデナリ国立公園をめぐるバスの旅のスタート。

大きな荷物を置きやすいように最後部を確保し、今度は眺めのいい進行方向右側に陣取る。

行きのキャンパーバスは動物の出現を大声で知らせてくれるだけだったが、このバスはマイク完備。しかも、より丁寧に説明してくれた。

バスはグリズリー、ムースなどを発見するたびに止まった。つい、数時間前まではあんなにも恐ろしかった野生動物たちも、車窓から見ると愛らしく見える。

周囲のキャンパー同士で双眼鏡を貸し借りしながらワイワイ楽しむ。

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車窓からは遠くにデナリ山とマッキンリー川らしい流れが見える。

私たち2人も、あんな原野で奮闘していたのか・・・悪戦苦闘した泥の河川敷も。そんなことを振り返っていると、バックカントリーキャンプの雄大さを改めて実感する。

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途中、いくつかのビジターセンターなどで休憩しながら進む。その後もバスはときどき止まっては動物の説明をしていたようだが、バスの心地よい振動とポカポカ陽気の中で一気に眠気が襲ってきた。

今朝までの緊張が解けたせいもあるのだろう。開け放した窓からは気持ちのよい日差しと風が吹き抜け、しばしまどろむ。

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デナリに別れを告げ

揺られること5時間。

17時半前には懐かしのライリークリーク・キャンプ場に到着。駐車場に行ってみると、愛車が2人の帰りを律義に待っていてくれた。

レンジャーにベア缶を返すためビジターセンターまで車を走らせるも、ビジターセンターはすでに閉まっていた。

だが、彼女が返却ポストを発見。苦楽をともにしてくれたベア缶、どうもありがとう!とポストに投函。

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しかし、こんなに手軽に無人ポストでベア缶を返却できるとは・・・・予定通りにバックカントリーから生還できなかったとしても、レンジャーが行方不明かどうかをすぐに判断できないはずだ。

3泊した思い出いっぱいのデナリ国立公園に別れを告げる。いつの日か再訪することを誓って。

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進路を北へ

車を走らせ、フェアバンクスへ向かう。

と、その前にもう1カ所寄りたい場所があった。HEALYという街にあるブリュワリーだ。

 

しばらくビールも飲んでおらず、まさに「喉から手が出る」ほど飲みたかったのもあるが、本当の目的はビールではない。映画「INTO THE WILD」に使われたバスを見てみたかったのだ。

ここは映画のモデルにもなったクリストファー・マッキャンドレスがアラスカの原野に入り、生還できぬままバスの中で24歳の生涯を遂げた地だ。

車中でマッキャンドレス氏が亡くなったバスは、HEALYの街から数マイル先にあるトレイルヘッドから20マイルほど歩けば着くという。

(注:バスは2020年6月に撤去されたとのこと・・・)

 

私たちの目的は本物のバスではなく、撮影に使われた複製バス。ブリュワリー「49th State Brewing」にあると聞き、北上した。

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ブリュワリーに到着。車を止めると早速バスが見える!

レプリカとは言え、雰囲気は十分。ご丁寧にバスの前にはイスも置かれていたので写真撮影。

生前のマッキャンドレス氏が撮った写真と同じポーズで撮ってみた。

ここでは多くの来訪者が彼を偲び、記念撮影をしていくいくそうだ。

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本物のバスを見に行こうかとも考えたが、彼の生還を阻んだ川はいまも水量が大きく変動し、トレッキングには注意が必要との説明も聞いた。

映画や書籍を読んで彼の生き方に憧れ、終焉の地を訪ねる人も多いとか。なかには彼と同じように車中で寝泊まりする人もいると聞き驚いた。

だが、彼の足跡をたどろうとして川に流されて亡くなったり、レスキューが出動したりする事故も続出。実際、私たちの訪問後にもハイカーが川に流され死亡。

結局、これ以上の遭難事故を防ごうと、地元当局によってバスは撤去されることになったという。

 

レプリカを前にマッキャンドレス氏のご冥福をお祈りし、手を合わせる。

ビールの誘惑をふりほどきフェアバンクスまで走る。

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最北の地ビール

20時ごろフェアバンクスに到着。

緯度が上がったせいか、アンカレッジよりも夜が明るい。

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ホテルにチェックインし、荷物をほどく。寝袋を広げたり、キャンプ用品を整理したりと大忙し。久しぶりに屋根のある生活だ。

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ホテル内のランドリーが22時で閉まるらしいので、慌てて洗濯物を放り込む。

しかし、お腹も減り、のども渇いた。

アラスカ第2位の都市とはいえ、人口約3万人のフェアバンクス。しかも、日曜の夜。

飲食店の閉店時間も迫っている。ましてや、美味しい地ビールを飲もうと思えばなおさらだ。

洗濯を待っていてはビールは飲めない。

ビールを飲みに行くと洗濯はできない。

大いなるジレンマを抱えつつ、洗濯を乾燥機に放り込んでから出発することに。ビールを1、2杯飲んでからホテルに帰ることに決めた。

 

ホテルから3ブロックほどの「Lavelle's Taphouse」に入る。地ビールが勢揃い。何を選ぶか迷ったが2人が大好きなIPAを注文。

うまい。うますぎる。

ビールってこんなに美味しかったっけ?と涙がにじんでくる。バックカントリーキャンプの成功を祝って乾杯!

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軽食もない硬派なビアハウスだったため、一度ホテルに帰って洗濯物を収容。車を運転して、近くのスーパーにサラダやピザを買いに行き、部屋で晩餐することにした。

 

そう、私たちが敢えて狙ったこのスーパーこそ、「どうでしょう班」がキングサーモンを買ったあの「Fred Meyer」。

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私たちの御用達、オレゴン州ポートランド生まれのFred Meyerのフェアバンクス店。しかも、ここに大泉さんや鈴井さんらが訪れたと思うと感動もひとしおだ。

店内を思う存分散策したい気持ちにかられるが、時間がないので急いで買い物をしてホテルへ戻る。

 

部屋に戻ってサラダ、酒のつまみ、そしてまたまたビールで乾杯。

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お腹いっぱい食べ、美味しいビールを飲んで語っていると時刻はもう23時半。

今朝、デナリの原野で目覚めたとは思えない。人間はどんな環境にもすぐになじむものらしい。

さすがに長い一日。そして、久しぶりのベッド。2人とも意識を失うかのように眠りに落ちてしまった。

(なお)

  

この日の走行距離=130マイル

総走行距離=595マイル

 

 

★私から一言★

四国の里山で育った私にとって、山林で食べられる木の実をぷちぷち食べながら歩くのはごく普通のこと。とりあえず美味しそうなら口に入れてみる習性があり、ハックルベリーも一粒食べると、木イチゴみたいな甘酸っぱさ!

もしもの時のため水を節約したい思いもあり(目の前にクリークはあるけど飲まない方がベター)、ベリーで喉を潤しながら進みました。

実は私は日本にいる間はあまりブルーベリー系が好きじゃなかったのですが、この時に味をしめ、以降、アメリカにいる間はハイキング中にとどまらず散歩中でも道ばたにベリーの樹を探すことになります(笑)

でも日本に帰ってくると、なぜかブルーベリーがあんまり美味しくないんだよなぁ・・・。空気でしょうか。

 

さて、おっかなビックリ挑戦してみたバックカントリー。本格キャンパーの方には笑われる程度の原野体験かもしれませんが、デナリだからと浮かれず、Into the wildしすぎず、身の丈にあったプチ冒険をできた気分です。

「またやりたいね!」と目をキラキラさせるなおさんには「蚊がいなければね」と答えた私ですが、うーん・・・蚊のうっとうしさを忘れた頃に誘われたら、またホイホイ行ってしまうかも。

(のん)

 

 

DAY6「文明への帰還」はおしまい。

アラスカDAY7 めざせ北極圏 - アメリカ横断2人旅へ続く。

 

アラスカDAY5後編 バックカントリーへ!

 

再び緊張が・・・

キャンプ地も決まって、ほっと一息の2人。「さて、テントでも張ってコーヒーでも飲もうかね・・・」と、そのとき。

突然、視界に何か動くものが飛び込んできた。「ん?何なに?どこ??」。一瞬身構えた。

 

カリブーだった。

300メートルほど向こう。川で水浴びをして遊んでいたところ、2人組の人間の闖入に驚いのだろうか。

私たちの様子を身動きせずジーっとうかがっている。

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↑↑さて、どこにいるかわかるでしょうか??

 

クマではなくカリブーだったことに安堵。

同時に、こうやって野生の動物を近くで見られるのはデナリに来たからこそだと嬉しくなる。しかし、喜んでばかりもいられない。

バスの中から動物を「見る」のとは違い、バックカントリーの場で動物と向き合うことは、文字どおり「対峙する」ことにほかならない。

カリブーは30秒ほど私たちに視線を向けたまま動かなかったが、自然の中ではまさに1対1。(正確には1対2だけど)

「クマじゃないから、襲ってはこないだろう」とは思ったものの、人間と動物が対等の立場で存在している怖さを感じた。

スプレーやらナイフやら道具を持っているとはいえ、何かに庇護されているわけではない人間の弱さを感じる緊張の瞬間だった。

 

やがて、私たちにも飽きたのかカリブーも去っていったので、手早くテントを立てることにする。

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クマの直撃を受けないようにと、森からはできるだけ距離を取ることに。だが、流れの速いマッキンリー川を越えることができなかったので、増水も見越して川ギリギリに設営。

森からの距離は100メートルほど。少し不安だったがやむを得ない。

 

 

のんびり過ごす以外にない

時刻は15時半。

明日の天気が崩れるかもという予報もあったので、早めに食事をして早めに就寝、早朝に出発しようと決めた。

とはいえ、暑さと緊張でドッと疲れが出ていたので、クリーク沿いで休憩。

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泥の川とは違い、清流を見ているだけで心が落ち着く。足をつけてみると驚くほど冷たいが、照りつける太陽の暑さもあって冷たさも心地よい。

顔も洗い、アタマも洗いとやっているうちに、ついにパンツ一丁で飛び込むことにした。

胸までつかると死ぬほどつめたかったが、これは気持ちいい!

昨日はシャワーも浴びれなかったので、天然のお風呂だ。遠くにデナリ山を眺めながら、清流につかる。これを天国と呼ばずに何と呼ぼうか。

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私の沐浴がうらやましくなったのかどうかは定かではないが、ついに彼女も下着だけでクリークに飛び込む。

何とものどかな2人だけの時間。最高のバックカントリーキャンプだ。

 

着替えもしてさっぱりした彼女、今度はテントでお昼寝タイム。

だが、日差しが強いせいか、寝苦しそうな様子。テントへの風通しをよくし、砂ぼこりが立たないように砂利を敷いて、打ち水もする。

デナリで打ち水をしているキャンパーも我々ぐらいだろう・・・。

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持参したペットボトルの水が冷えるようにと、マッキンリー川の流れに岩を運び込んで、即席の冷蔵庫も完成。

冷たい水がまた美味しい。ビールでも冷やしておければ、これまた天国なのに・・・と川の流れを一人眺める。

 

 

飲料水問題

18時ごろから夕食の用意。計算を重ねて持参してきた飲料水だが、あまりの暑さのせいか消費量が早い。600ミリリットルのペットボトルが残り3本。

明日は最低でも2本は持って帰路につきたいので、今夜寝るまでに飲めるのはあと1本。

だが、どうにもこうにも喉が渇く。

料理やコーヒーはクリークの水を沸かして使うにしても、のどの渇きは冷たい水でいやしたい。「ええい、ままよ!」とクリークの水を手ですくって飲んでみる。

清流に見えるものの、微妙に泥が混じり込むのか、少し土の味。しかし、やっぱり冷たくて美味しい。野趣あふれる味わいだ。

それでも、「バックカントリー前編」にも書いたように、クリークや沢の水は何が混じり込んでいるのか分からず、健康被害の恐れもある。

水は余分なほど持ち運ぶのがよい。これは私たちの大きな反省点です。

 

 

夕暮れは来ないが夕食を

そろそろお腹も減ってきたので夕食の準備。

デナリ山が見えるように流木でベンチもつくり、特製ダイニングを設営!

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夕食はアウトドアショップで買ってきたドライフードのカレー。お湯を沸かして入れるだけ。

本当はしっかりとした食事をつくりたい。だけど、あまり食材を焼いたりすると、においに釣られてクマがくるかも・・・という恐怖心もあり、出発時の荷物の軽量化も兼ねて主食はドライフードにしたのだった。

でも、やっぱり物足りないので、ソーセージを切って入れることにした。

串刺しでBBQにしたかったが、やっぱりクマを引き寄せないようにドライフードの中に混ぜ混ぜこむことに。うまい。

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食後はもちろんコーヒー。

これだけはインスタントで済ませられないので、挽いた豆をドリップ。うまい。

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特にすることもない。することと言えば、コーヒー片手にボーッとデナリ山を眺めることぐらい。

2人きり、あれやこれやでおしゃべりを楽しみ、ディナータイムも終了。夜用のコーヒーもタンブラーに入れ、いそいそと片付け。

 

 

夜の恐怖に備えて・・・

19時半。まだまだ明るいが寝る準備。クリークで歯を磨き、顔も洗い、いつでも眠れる状態に。

さて、ここからがバックカントリーキャンプの真骨頂。クマの襲撃に備えて、あれこれ最終準備。

まず、食料、調理に使った鍋、香りのするような歯磨き粉など、すべてベア缶に押し込む。さらにバックカントリーのルールではベア缶の置き場も定められている。

「テント、夕食の調理場、ベア缶は一辺100ヤード(約90メートル)の三角形になるように離して置くべし」とのこと。

テント前のマッキンリー川のせいで、正三角形ではなく微妙な二等辺三角形になってしまったが、その代わり150メートルほど離しておいた。

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左下にちらりと上部が見えている黒いのがベア缶。クマさんに見つからぬよう、茂みの中に隠した。

日はまだまだ高く日差しも強いが、昼間よりはいくぶん涼しい風が吹くようになった。

食事のいい香りにクマが誘われて来る可能性も考え、テントは調理場から風上にしたかったのだが、風はきまぐれなもの。ときどき風下になる。

こんなことでは、夜通しドキドキで眠りにつけないかもしれない・・・そこで、気休めではあるが、テントの周りに「バリケード」をつくることにした。

大きな流木を拾い集め、岩の上に木を並べて簡易の柵を完成。

クマが突入してきそうな調理場とベア缶方面は、5メートルほど間隔をあけて二重のバリケードに。万全の態勢をとった。

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バリケードと呼ぶには、何とも貧弱な囲い・・・クマが来たらあっさり突破するのは必至。

それでも、寝込みを襲われたとき、倒す際に音でも鳴ればクマに対処する時間が数秒でも稼げるかもしれない・・・そんなことを本気で考えた。

もしかすると人間は原始のころから、こうして外界への守りを固めるようになってきたのではないだろうか。原野でそんなことを考えた。

  

 

寝つけないけど就寝

なんだかんだで時刻も22時。

ようやく太陽も地平線に近づいてきたが、まだ日差しは強い。

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明日は朝4時ごろに起きようと、テントに入り、寝袋に潜り込む。

しかし、なかなか寝付けない。もちろんクマのせい。

外が気になってしょうがないので、入り口のファスナーを開け、虫除けネットだけにして外の様子を監視することにした。

わずかな物音にも耳をすまし、ひたすら森の方向を眺めた。ときどき川の流れの音が微妙に変わったり、水や空気の抜けるような音がするたびに気になり、テントから顔を出して外を見渡した。

安心して顔を引っ込めて横になると、今後は川の流れに混じって足音のようなものが聞こえたり、何かの鳴き声のようなものが聞こえたり・・・・延々とそんなことを繰り返しているうちに、時刻は23時。

太陽もまだオレンジ色の強い光を輝かせながら、地平線をコロコロとゆっくりと動いてる。

眠っていたと思った彼女だが、同じように寝つけなかったのか起き上がった。

「夕日」にデナリ山が美しく照らされている。せっかくだから記念写真でも撮ろうかと、再びテントから顔を出す。 

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こんな光景、見ようと思ってもなかなか見られない。なんて贅沢なんだろう。そんな心地よい興奮とともに、2人でテントから顔を出し、記念写真。

深夜だというのに青空が広がるデナリの原野を目に焼き付け、再びテントに入る。


ようやく彼女も眠ったようで、時計を見ると24時。さすがにそろそろ寝なくては。

しかし、予想以上に夜も暑い。彼女も寝袋の中で寝苦しそうだが、明け方は冷えるだろうと思い、ファスナーを閉めてあげる。

だが、私まで寝袋に入ると、いざというとき身動きが取れないのではと思い直す。寝袋には両脚だけを入れて上半身は出し、メガネもかけたままで、ベアスプレーを右手に握る。

そして、何か物音がするたびに、テントの小窓から外を見る。

特に何も変わったことはないようだ。

 

マッキンリー川の流れに岩で囲った即席冷蔵庫のプールが増水し、水没しかけている。増水を見越し、寝る前にペットボトルをテント内に運んでおいて正解だった。

少しヒヤッとしたが、テントは川より一段高い場所にある。

テント設営時も、周辺の植物が水に浸かった形跡がないことも確認していたので、安心して再び横になる。

 

時刻は1時を過ぎた。

このまま朝まで眠らずに体を休めようかとも思ったが、だんだん考えが変わってきた。

ここまで、まんじりともせず警戒しながら2時間を過ごしたが、結局何も起きなかった。

あと2時間、ベアスプレーを握ってテントの外を見ていても、同じように2時間が経つのだろう。

警戒しても襲われるときは襲われる。

ぐっすり寝ていても襲われないときは襲われない。

開き直りなのか、はたまた神経がずぶとくなったのか。いや単に眠くなってきただけなのか。

なぜかは分からないが、急に「よし寝よう!」という気になった。

 

それにしても、原野の中で眠りにつくということが、これほど緊張を強いられるものとは考えたこともなかった。

野生動物も毎晩こんな夜を過ごしているのだろうか・・・気持ちが少しだけわかるような気がした。

 

寝袋のファスナーを首もとまで閉め、メガネを外して枕元に置いた。それでも、クマの恐怖は消えないので、ベアスプレーは最後まで握っていた。

どうかクマが来ませんように・・・そんなことを考えているうちに眠りに落ちた。

(なお)

  

この日の走行距離=0マイル

総走行距離=465マイル

 

 

★私から一言★

キャンプ場で私たちをさんざん悩ませた蚊は川べりで風通しがいいためか、幸いほとんどいなくなって快適に食事できた。

誤算だったのは、デナリの夜が意外に暑いこと。

夜と言っても日が沈まないのだから、気温が大して下がらないのは当たり前で、外は明るいし暑いし、もちろんクマも怖いし、なかなか寝付けなかった。

ただ、クマに関して言えば、出る時は出るし、襲われたらまず勝てないし、「どうせ食べるなら2人とも食べてほしいなぁ。私1人だけ生き残るとかヤだなぁ」とか考えてるうちに私は眠りに落ちてしまった。

朝起きて聞くと、なおさんはほとんど眠れなかったらしく、「守らなきゃと思ってくれてありがとう、私は早々に諦めたのに・・・」と少々申し訳ない気持ちになったのでした。

(のん)

 

 

DAY5後編「バックカントリーへ!」はおしまい。

アラスカDAY6 文明への帰還 - アメリカ横断2人旅へ続く。

アラスカDAY5前編 バックカントリーへ!

 

キャンプに備えて

6時起床、きょうも快晴!

昨夜はデナリの夕焼け(深夜でも夕焼け・・・)を寝転びながら見ようと、テント入り口のファスナーを開けたまま寝落ちしたようで、肌寒さで目が覚めた。

テントの外には朝日に輝くデナリ。寝ぼけ眼にも美しい。

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もう少し日が差したら写真を撮ろう・・・と待っているうちに二度寝。彼女の「デナリがすごいキレイ!」の声でふたたび起きる。

なるほど、テント内からでもデナリを楽しめるのが、ワンダーレイク・キャンプ場の醍醐味なのかもしれない。

昨夜つくっておいたおにぎりを食べる。もちろん朝食もデナリ山を眺めながらという超特等席!

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パッキングの苦労

出発の準備。ザックに荷物を詰め込む。バックカントリーで大変なのが、装備をいかに減らすかだ。

特に悩ましいのが水。デナリのバックカントリー挑戦者に共通の問題らしい。というのも、一部エリアでは沢の水が動物のフンなどでバクテリア感染の恐れがあるほか、鉱山からの重金属で汚染されている可能性もあるとのこと。

水を現地調達するのは難しい。なので多めに持って行きたいが、いかんせん重い。

考え抜いた結果、水は600ミリリットルのペットボトル6本、コーヒータンブラーにも水を入れて計4リットルほどにした。

人間が必要とする飲用水は一日約1・5リットル。翌日午後に帰ってくるとして、2人分で一日半だと5リットルほど。調理、歯磨き、洗顔など足りない分は川の水を使うことにした。

トラブルに遭って計画通り帰れない緊急事態も想定し、ラーメン、レトルトなど3日分の食糧も用意。チョコ、クリフバー、リンゴも入れる。小さな鍋とプリムスの小型ガス缶も何とか詰め込んだ。

不要なものは、ワンダーレイクキャンプ場の食料庫に置いていけるので便利!

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ちなみに、食料庫やガス缶置き場には、使いかけのガスを「どうぞご自由に」と置いていく人も多いようだ。少量だが、いざというときはありがたい。

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荷物を相当減らしたはずなのにザックがはちきれそう。背負うと肩にズシリと重い。当然、彼女のも重い・・・早くも不安がよぎる。

 

出発前、隣のテントサイトのインド系の家族に写真を撮ってもらった。サンフランシスコからやってきたそう。誕生日だったようだ。ケーキをおすそ分けしてもらい、見送ってくれた!
 

 

出発したものの・・・

10時出発。

まずはハイキング用のトレイルを歩く。途中ですれ違うハイカーと「Hi!」と爽やかに挨拶をかわす。まだまだ余裕たっぷり。

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青空に映えるデナリ山を眺めながら、さらさら流れるきれいなクリーク沿いに腰を下ろして一休み。うーん、気持ちがいい。

最高のハイキングで幸先もよさそう。

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林の中を抜け、トレイルの終点が見えた。

いよいよバックカントリーの始まり。ここからは地図を片手に、川沿いにのんびり歩く作戦だった。ところが!!! である。

目の前に現れたのは予想外の濁流。川べりも急斜面で迂回できそうにない。

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そこまで深くはなさそうだが、膝上ぐらいまでは濡れそう。流れも速い。スタートから早くもピンチ。

よく見ると、川には大きな流木が1本引っかかっていた。誰かが渡るために架けたのだろう。何とも頼りない橋なので、補強しようと大きな流木をもう1本探すことにした。

ハイキングにやってきたらしい軽装の老夫婦が物珍しそうに私たち2人を眺めている。即席の橋を完成させると、「あなたたちはエンジニアね!」と手をたたいた。

気恥ずかしさと、「こっちはハイキングではなく、バックカントリーに行くのだ!」という気負いもあり、引きつっていた表情をこらえ、満面の笑顔で手を振ってみせた。

 

 

先に進むしかないが・・・

とりあえず前に進むしかない。

氷河の河川敷は広く、荒涼とした風景が広がる。そして、想像していたよりも川沿いを歩くのは困難なことがわかった。

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川は幾すじにも分かれている。浅い小川は流れのなかの岩を踏みながら渡ったが、少し進むとまたすぐに急流が現れる。

自分一人なら飛び越えられそうだが、ザックを背負った彼女には無理だろう。ふたたび流木を2本探し、橋を作ることにした。

杖になるような丈夫な木も見つけ、まずは彼女が恐る恐る渡ってみる。続いて自分が渡河。この先、こんな行程ばかり続くのだろうかと思うと、暗たんたる気持ちにもなってくる。

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何度も渡っていくうちに、「いつか増水して戻れなくなるのでは・・・」。そんな不安にかられ、少し鼓動が早くなる。映画「INTO THE WILD」を思い出した。

 

 

ついに!!

衝撃的なものが目に入った。川沿いの泥にクマらしき大きな足跡が!!

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「落ち着け」と自分に言い聞かせる。見間違えであってほしい。そんな思いで足跡の形を確認するが、間違いなくクマだ。しかも巨大。20~30センチはある。

だが、焦るのは禁物だ。おそらく古い足跡だろう。きっとそうだ。

ドキドキしながら足跡を指で触ってみる。泥が柔らかい・・・全然乾いていない。今朝、もしくは昨夜の足跡に違いない。

恐れていた現実を早くも突きつけられた。2人とも平穏を装っていたが、緊張しているのが伝わり合う。

まっすぐ進みたかったが、クマが通った可能性がある道は避けるのが賢明だ。ひとまず迂回した。


しばらく歩くが、再び大きな濁流にぶつかった。進むか退くかで悩み、靴を脱いで渡ろうとも考えたが、腰ほどの深さはありそうだ。

2人で体を寄せ合えば渡れなくもなさそうだが、渡河後に増水して戻れなくなるのが怖い。急がば回れ。先ほど橋をつくった場所まで引き返すことにした。相当のロス。

 

思い切ってスタート地点まで戻って進路を変えようかとも思ったが、ずいぶん歩いてきてしまっている。しばらくは川沿いの森を抜けることに決めた。

「タフなユニットではないよ!」とレンジャーは笑っていたが、なかなか命に関わる選択が続く。

 

 

森のクマさん

森の中を歩くことにした。予想以上に木の枝やブッシュが行く手を阻み、足元も悪い。ツンドラ特有のフワフワした場所もあれば、木の根っこを草が覆っていて踏み抜きそうになる場所も。慎重に進む。

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何よりも恐れたのはクマとの遭遇。2人で交代しながら大声で、「ハローベアー!」「クマさーん!」と大声を出し続ける。

のどかなトレイルで、「ある~日、森の中~♪」と面白半分で歌っていた数時間前が懐かしい。いまは2人で必死に歌いながら歩く。

「クマさんに出会った・・・」なんて冗談にもならない。きっとこの歌をつくったひと、実際に森の中でクマに出会ったことがないに違いない・・・。

 

視界が遮られる森の中を歩くのが怖いので、少しでも河川敷に降りられそうな場所を見つけては川沿いを歩いた。
アラスカとは言え、夏は日差しも強い。気温もぐんぐん上昇し、日陰のない河川敷は猛烈な暑さだ。

流木とマットを使い、即席の日よけをつくって小休止。何とか足りると思っていた飲料水も予想外の暑さで消費が激しい。少し不安になる。

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少し進むとまた濁った急流に阻まれ、再び森の中へ。また河川敷に降りては森・・・を何度も繰り返す。

 

森の中を歩いていると、ふと靴下が落ちていたのを見つけた。ビクッとした。

長時間、自分たち以外に人間の痕跡がない世界にいるせいか、急に人工物が目に入るとひどく驚く。だが、同時に懐かしく、ホッとさせられる。

森の中に人が歩いた痕跡を見つけたときも不思議と安心感が湧いた。「誰かがここを歩いたのか」「この道で間違っていないのだ」と嬉しくもなった。

俗世を離れて大自然に親しむのが目的なのに、こんなことで喜んでいるようではバックカントリーキャンパー失格か。それでも不安のせいか、ついついそう思ってしまう。

 

2人だけの世界をずんずん進む。

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これまた不思議なことに、森の中は枝や草葉で乱雑なのに、動物のフンが落ちているとすぐ気付くようになった。

普段なら泥や土と間違えそうなのに感覚が鋭敏になってきているのだろうか、瞬時に気が付くようになってきた。野生の本能は普段眠っているだけで、人間も大自然の中で生命の危機にさらされると、感覚が研ぎ澄まされるのかもしれない。

泥の上に足跡を見つけるたびにヒヤッとするが、クマじゃないことに安堵しながら進む。

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すると、今度はむしり取られた鳥の羽と骨が散乱。どう考えても肉食動物のしわざだろう・・・心臓に悪い。

しかし、動揺した様子を見せると彼女を不安にさせると思い、「お-、骨だ骨だ」など明るくふるまって進むことにする。

 

 

GPSに助けられ

河川敷と森を交互に歩き、ようやく視界が開ける場所に出た。

地図上で目星をつけていたクリークか? と思ったが、流れは泥水。めざしていた場所とは違うが、少し離れたところには清流も。何とか食事には使えそう。

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ここまで荒々しい大自然の連続だったが、野花も咲き乱れていて気持ちもなごむ。キャンプ候補地にすることにして、先へ進む。

少し歩くと再び氷河から流れ出る濁流に阻まれ、森の中へ迂回。ふたたび緊張を強いられる。

 

バックカントリーの受け付けでもらった無料のユニット地図を携行していたが、略図なので役立たない。地図にはない無数の川が目の前に広がり、流れも時として変わっているからだ。

詳細な地図を買っておけば・・・と後悔もしたが、我々を助けてくれたのが携帯アプリの「MAPS.ME」だ。

事前に地図をダウンロードしておけば、オフラインでも携帯のGPSで現在地が表示されるすぐれもの。

昨日、受け付けを終えた後に、「どうせ使わないだろうなぁ」ぐらいに考え、念のため自分たちのユニットを含むエリアの地図をダウンロードしておいた。

これが実に役に立った。

いや、役に立ったというよりも、このアプリがなかったらどうなっていただろう。無数の川の流れに現在地を見失い、さまよっていたかもしれない・・・。

往路はもちろん、後述するが復路でも助けられた。ぜひ、事前のダウンロードを強く推奨します! 携帯の予備バッテリーも!

 

GPSを見ると、目指すポイントまでは残り500メートルほど。暑さで水の消費が早いが、復路のことも考え少しずつ口に含む。アラスカの夏の暑さも想定外だった。

 

 

キャンプ地とする!

ついに目的地へ着いたようだ。

泥川が流れ込み、視界も開けたガレ場に出た。地図を見る限り、この泥川に清流が流れ込んでいるはず。もしこのクリークがなければ、先ほどの候補地へ引き返さなければならない。

少し先にクリークらしきものが見える。「どうかキレイな流れでありますように・・・」。祈るような気持ちで近づいてみると、キラキラと輝く清流が!!

これで一安心。ようやくキャンプ地が決まった。

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ここまで5時間半歩いた。疲れてはいたが、キャンプ地も決まり元気も出てきた。

クリークの水も煮沸すれば調理用にも使えそう。ほっと安心。

緊張に次ぐ緊張の往路。長引いたので後編に続く・・・・・・。

(なお)

  

この日の走行距離=0マイル

総走行距離=465マイル

 

 

★私から一言★

写真では川の流れは大したことないように見えますが、実際には足を取られそうな深さの濁流。転んで足をひねったり、裂傷ができたりすれば、一大事。とは言え、見通しの悪い林の中を進むのも怖い・・・。

キャンプ場に向かう乗り合いバスの中から遠くの丘に見えたグリズリーの、1km以上も離れているのに感じた巨体さを思い出してゾッとした。あのドキドキ感と、のどの渇きは今でも鮮明に思い出します。

天気がよくて、いつでも美しいデナリが目の前にそびえているのが何よりの救いでした。アウトドア慣れしてる人ならさくさく進むのかな・・・と自分を情けなく思いつつ、彼が一緒であることに感謝。

まあ、誘われなければ自分では絶対に来ませんでしたが!笑

(のん)

 

 

DAY5前編「バックカントリーへ!」はおしまい。

アラスカDAY5後編 バックカントリーへ! - アメリカ横断2人旅へ続く。

 

アラスカDAY4 デナリ最奥部でキャンプ

 

バックカントリー前日

5時半起床、快晴!
ついにデナリ国立公園の最深部「ワンダー・レイク」キャンプ場へ旅立つ。昨夜作っておいたおにぎりをほお張り、淹れたてのコーヒーをタンブラーにたっぷり注ぐ。

バスの出発は6時55分。「ライリー・クリーク」キャンプ場近くのバス乗り場から。カリーブーループ近くのオーバーナイト専用駐車場に車を停め、バスへ急ぐ。

しばらくは愛車ともお別れ。無事に戻れますように。朝いちのキャンパーバスだが、乗る人は結構いる様子。

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バスが到着。深いグリーン、いかついフォルム。

早速乗り込むが、座席はフカフカではなく、汚れ防止のためビニールでカバーされており、まさに「キャンパーバス」と呼ぶにふさわしい武骨さだ。

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最前列左側がベストの席と聞いていたが、運転手さんの荷物置き場になっている。

ひとまず、彼女を一番前の右側にする。運転手の名前はレックス。

「どちら側が景色を見るのにいい?」と聞くと、「どっちに動物が出るかはわからないぜ。どっちもGood」とのこと。

本当かよ、と思いつつ、バスも混んできそうだったので、一人で左側に座る。
ワイルダーネスセンター、さらにその先と、停留所に止まるたびに乗客も増え、バスはいつしか満席近くに。

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どんどん進んでいくと、やはり左側の座席の方が景色はよさそうなので、彼女を呼び寄せる。

しばらく走ると、遠くに白い峯が見えてきた。誰かが「Denali!」と叫び、みんなが一斉に写真を撮り始めた。


その後もデナリ山は断続的に姿を現した。天気が良いせいもあり、ピークまできれいに見える。これはラッキーだ。

というわけで、迷ったときは左側の席に座る方がいいのかもしれない。

 

 

ひたすらバスの旅

思っていたより動物は見えない。そもそもキャンパーバスなので、ほかの観光バスが動物観察のために止まっていても、我々はどんどん追い抜いていく。

それでも一度、バスの横をトナカイが駆け抜けたときは車内で歓声が上がった。

みんなの目的はもちろんキャンプ。だけど、野生動物を見たい気持ちも一緒なのだ。

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途中、トイレ休憩を2度ほどしながら、バスは進む。「10分程度休憩します」とレックスが車を停めた。

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快晴。青空。とても気持ちがいい。 

10分しかないのに、急いでお湯を沸かしてエスプレッソを入れるキャンパーもいた。さすがバックカントリー大好きのつわものばかりだ。

キャンパーバスは単なる移動手段かと思っていたけれど、休憩を兼ねてときどき止まってくれるので、みんなが思い思いにデナリのバス旅を楽しんでいる様子。

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バスはどんどん進む。

デナリ山に近づいていく。

なんという光景だろう。遠くから何度も見ていたはずなのに、天国に続くかのような道の先に神々しいデナリ山を見ていると、まるで初めて見る山のようにも見える。

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キャンプにばかりこだわっていたけれど、こうした風景をバスに揺られて見られるだけも幸せな気持ちになれる。多くの人がバス観光だけに訪れるのも理解できる。

遠くに砂ぼこりを巻き上げながら原野を疾走するバスも見える。大自然のまっただなかにいることを改めて感じる。

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まだまだバスの旅

バスはさらに進む。

そして、ときどき停まる。休憩場所でもないのになぜ?と思っていたら、キャンパーが降りていく。

キャンプサイトの表示がある場所で降りることもあれば、「そこで降ろしてくれ」と運転手に告げ、何の標識もない道沿いに降り立つときも。そこにはツンドラの大地が広がっているだけ。

何もない原野に分け入り、バックカントリーキャンプに向かう。寂しげな場所にただ一人降りる勇気と覚悟はいかばかりだろうか。

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そんなキャンパーがバスを降りるたびに、窓から「See you!」「Enjoy!」と声が飛ぶ。バックカントリーを愛するもの同士だからこその仲間意識だろう。

降りる人がいれば、道路で手を挙げて途中から乗り込んでくる人も。キャンパーバスは本当にキャンプのためのバスなのだ。

 

 

クマの美しさ

バスはずんずん進む。

予想していたよりは動物が見えなかったためか、乗客もみんな窓の外を食い入るように見つめている。

「そこの下にいる!」と誰かが叫び、バスが急停車。でも、見間違えだったようで、「Sorry、白い岩だった」との声が聞こえ、車内には「ドンマイドンマイ」的な笑いも起こる。


すると、レックスがバスをスローダウン。マイクなしで聞き取りにくいが、動物を見つけたようだ。

前後の乗客同士で「いま何て言ったの?」「左手にグリズリーがいるみたいだって」と教え合う。
みんな左側の窓にしがみつき、「どこだどこだ」と声をかけ合いながら探す。

いた!! 遠くにグリズリーの親子が遊んでいる。

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陽を受けた毛が金色に輝き、威風堂々とした印象。美しい。

ただ、彼女は「キレイだねぇ。でも、あまり私たちのキャンプサイトの近くでは見たくないね」と一言。その通りだ・・・。


デナリがさらに近づき、山の峰々もキレイに見え始めると、乗客から「レックス!デナリを撮りたいからストップしてくれ!」とのリクエストも。

レックスは「あと20分ぐらい行けば、もっとキレイに見える。写真も撮りたい放題だから!」と返事をしつつも、少し停めてくれた。

こういう緩さもよい。

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さらにバスを走らせ、ついに最後の休憩場所、アイルソンビジターセンター着。

ここで40分の小休止。トイレ休憩を兼ねてはいるが、中には急いで火を起こし、ラーメンをつくり出すキャンパーもいた。さすがだ。

ここで2人でリンゴを食べ、デナリを心ゆくまで堪能する。

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デナリ国立公園は、奥に行けば行くほど道も険しくなる。

それでもバスは進んでいく。そして、デナリもどんどん近くなる。そして、デナリ山は常に美しい。

雲がかかることも多く、いつもきれいに山容が見えるわけでもないらしいので、私たちはラッキーだったのだろう。

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過酷なキャンプ生活開始

いよいよバスは終点、ワンダーレイクキャンプ場へ。

バスにはまだ20人ほどのキャンパーが残っている。みんなワンダーレイクで一斉に降りて、テントサイト争奪戦が始まるのだろうか。彼女とバスを降りた後の手順を確認。

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テントサイトの条件は、デナリが見えやすい場所! なるべく早めにバスを離れて選びたい。
12時半、ようやく到着。

バス降りてキャンプ場へ急ぐ。とは言え、ここで走るのも大人げないので、もちろん平然と歩く。

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一番乗り!nと思ったらまだ前日のキャンパーが帰りじたくをしていた。連泊中のキャンパーもいる。

どこにテントを張ろうか決めかねていた。さらに、テントサイトまでの道もブッシュに隠れてわかりにくい。
それでも、静かそうでデナリ山が見える場所を確保。急いでテントを張る。

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炊事場で手早くラーメンと焼きそばをつくる。食べ終わって戻ってくると、さっきまで埋まっていたテントサイトが空いている。デナリ山が真正面に見える!

急いで引っ越し。

テントを2回も設営するとこになったが、手早くテントを張る。炊事場もトイレも近く、これまたラッキー。

 

 

クマ対策訓練

夕方までハイキングに出かける。まずは、キャンプ場の名前にもなっている湖「ワンダーレイク」へ。すぐに着いたが、観光客も多いふつうの湖。泳いでいる人もいた。早々に退散。

道を歩きがてら、誰もいないのを確認し、ベアスプレーの噴射訓練をすることにした。

説明書には「必ずクマの風上に立つように」とある。ばったりクマに遭って、そんな冷静な行動がとれるものだろうか・・・しばし考え込む。

ハイキング中に突然「クマが出たよ!」という想定までして、いかに早く安全装置を外し、噴射できるか交代で試してみた。

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思っていたよりも遠くまでスプレーが飛ぶ。だが、若干風下から噴射したせいか、風に押し戻されてきたスプレーが目や鼻に入った。すごい刺激だ。

強烈な刺激だが、本当に巨大なグリズリーに効くのだろうか。ないよりは心強いが、なんとも心もとない気も。

 

さらに歩き、デナリ山が水面に反射するという池「リフレクションポンド」をめざす。

地図で見ると近くに感じたが、実際歩くとなかなか遠い。バスが通る道を行くので日陰もなく暑いし、車が通ると砂けむりにまかれる。

40分ほど歩く。すれ違った2人にあとどれぐらいか聞いてみると、「20分ぐらいかなぁ」との返事。気力を振り絞る。

ようやく着いた! が、池には少しさざ波が立ち、デナリ山は映らず・・・しばし休憩してから戻ることにする。

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帰り道で老夫婦とすれ違ったので、あとどのぐらいか教えてあげる。「なかなか遠いねぇ」とおじいちゃん。そのお気持ち、わかります。なかなかキツいハイキングコースだった。

太陽がずっと照りつけるので、わずかな日陰を見つけては休憩。2人とも黙ってしまうと無音な景色だけが広がる世界。美しい。

そんな静かな道を2人きりで歩き続ける。

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明日に備えて
なんとかキャンプ場に戻り、夕飯の準備。

ご飯を炊き、スープをつくり、ソーセージも焼いた。周りはドライフードを食べているキャンパーも多かったので、我々の方が美味しそうだ。えへん。

食事や火を使う調理は炊事場でしかできないが、ここからもデナリ山をきれいに眺めることができる。

デナリを間近に望むことができるのがワンダーレイクキャンプ場の最大のポイントだ。

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食事を終え、コーヒーを淹れる。

自分たちのテントに戻り、備え付けのテーブルでコーヒーを飲みながら改めてデナリを眺める。これまた贅沢な時間だ。

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しかし、ものすごい蚊だ。こんなに多くの蚊、いままで見たことがない。

そして、払っても払っても関係なく飛んでくる。人間を怖がるという思考はなさそうだ。そもそも蚊に思考はあるのだろうか。

夜になっても夕焼けのまま。こんな時間にキャンプ場に現れる人もいる。バックカントリーからの帰りだろうか。

私たちの隣のテントサイトにも、スーツケースを引きずりながらインド系の大家族が現れた。

そろそろ寝る準備。とは言え、シャワーもなし。トイレ前の流し場で顔を洗って、歯を磨くだけ。それでも、気持ちがいい。

23時を過ぎてもまだ空には明るさが残る。

気温が下がり始めたためか雲も少なくなってきたので、雲に隠れていたデナリの頂上がキレイに見えるまで起きてようと思った。

テントの入り口のファスナーを下げ、寝袋に入りながら山を見ているうち、いつのまにか眠ってしまっていた。

(なお)

  

この日の走行距離=0マイル

総走行距離=465マイル

 

 

★私から一言★

写真で見ると米粒ほどにしか見えないグリズリーだけど、実際に肉眼で見ると、「こんなに離れているのにこんなに大きく見える」とその巨体さを実感するばかり。

翌日、彼らのテリトリーに分け入っていくのかと、ぶるっと身震いする思いだった。

 

デナリ山の素晴らしさは本文で彼がさんざん賛辞した通り。でも、「たいがい曇ってて、てっぺんまで見られる確率は20%」だなんて当時の私は知らず(あとで教えてもらった)、無邪気にキレイだキレイだと喜んでいた。

 

すごかったのは蚊。噂には聞いてはいたけれど、デナリ山を眺めてても食事をしてても歩いてても、追い払っても追い払っても襲ってくる。虫除けスプレーなんて気休めにもならない。養蜂家がしているような虫よけネットをしていないと、顔中刺されて真っ赤になっていたと思う。

「大げさだなぁ」と思ったけど、買ってきて本当によかった。写真で私が足にまでネットを”履いて”いたのをお気づきでしょうか?

前日のライリークリークでのキャンプは快適だったなぁ・・・。

(のん)

 

 

DAY4「デナリ最奥部でキャンプ」はおしまい。

アラスカDAY5前編 バックカントリーへ! - アメリカ横断2人旅へ続く。

 

アラスカDAY3 デナリ国立公園デビュー戦

 

デナリ国立公園へ

8時半起床、曇り。

デナリ国立公園へ出発の日。急いでホテルを出るも、まだ悩んでいた。そう、バックカントリー・キャンプを決行するかどうか。

 いまだに決めかねていて、「最後は天候次第だね」と先送りしていたけど、天気予報では数日間晴天が続くらいしい。

 

「もう、これは覚悟を決めろということに違いない」と2人で最終確認。となると、必要なのがクマ撃退用のベア―スプレー。

開店の9時をめざし、昨日のアウトドア用品店へ向かう。

ベアスプレーは47ドルと50ドルの2種類。うーん、やっぱり高い・・・・・・だけど、命に関わるものだけにお金をケチるわけにもいかない。

といいつつ、噴射距離は同じみたい。なので3ドル安いのを選んだ。

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ホテル近くのマーケットで目覚めのコーヒーを買い、出発準備OK。

バックカントリー受付の締め切りは15時半。デナリ国立公園まで5~6時間かかることもあるらしいので、先を急ぐ。

昨日の残りのサンドイッチ、ピザ、サラダをぱくつきながら、ひたすら北上。

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アンカレッジを抜けると、日差しが戻ってきた。

思っていたより道路も空いていて、すいすい進む。ワシラの街で初めての給油。

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ナビの到着予想時間が「15時40分」だったので少し焦っていたが、どうやら早めに着けそうだ。

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デナリ山とご対面

北上を続けると、突然目の前に白い大きな山が見えてきた。デナリ山だ!

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個人的には、子どもの頃に覚えた「マッキンリー山」の方がしっくりくる。

これまた個人的なことだが、私の母親は、この山で消息を絶った世界的登山家「植村直己」のファンだった。私の名前も植村さんの字にあやかってつけられたそうだ。

 

なので、いつの日か自分の目で見てみたいと思い続けてきた。遠くに小さくではあるが、初めてマッキンリー山の神々しい白い山容を目の当たりにし、息をのんだ。

マッキンリーの名称は2015年にオバマ大統領により、先住民の言葉で「偉大なもの」を意味する「デナリ山」へと改称されたばかり。

私も敬意を込め、今後はデナリ山と呼ぼう。一人、心に誓った。

 

道路が右に左にカーブするたび、デナリ山が見えたり見えなくなったり。それでも、どんどんデナリ山に近づいていく。

 

途中で路肩に車がたくさん停まり、大勢の人が三脚を出したりして川の方を見ている。

「もしやクマ?」と思い。車を止めて近寄ってみる。

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ん?何がいるんだろ・・・集まった人たちに聞いてみると、「あれあれ、あそこだよ」と指をさす。ん・・・・・・?

 

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おお!!

川でムース(ヘラジカ)が水浴びをしているではないか。

大きな野生動物が次々と登場するエリアに近づいてきた。写真を撮ろうとするも望遠レンズがないので苦戦。じっくり野生動物の観察を楽しみたい方は、望遠レンズは必需品です。

 

デナリ山を左手に眺めながら、国立公園に向けて北上。彼女の奮闘の運転の甲斐もあり、公園に13時半に到着。

ついにきた、デナリ国立公園だ!

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デナリ国立公園デビュー

まずは、本日宿泊のために予約していた「Reilly Creek」キャンプ事務所で受け付け。

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ついでに、同じくネット予約済みの「Wonder Lake」キャンプ場、さらに明日乗る予定のキャンパーバスのチェックインもしてくれた。

ワンダー・レイクはバックカントリーを断念したときのために、明日から2泊分を予約しておいた。念のために。

人気があり、当日空きがないことも多いと聞いていたためだ。

 

ライリー・クリークは、ループを描くように車が通れる道沿いに、テントサイトが点在している。ループも3種類。

どのテントサイトがいいか受付で聞くと、「小川が近くて、明日のバス停留所も近くて、駐車場までも近いのはカリブーループだ」とスタッフが教えてくれた。こういうときは聞くに限る。

ループ内を走りながらよさげなテント場所を探しに行くと、木立の中で静かそうなサイトを発見し、無事に確保。ポストに予約票を張りつけておく。

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バックカントリー挑戦へ

テントサイトも確保。いよいよバックカントリー許可証を取得しに、ビジターセンターへ向かう。

「レンジャーとの面談」と聞いていたので、アウトドア経験の質問など英語でうまくやりとりできるのか、少し気が重い。

というより、ベアースプレーまで買っておきながら、ここにきてバックカントリー・キャンプに尻込みする2人。

なので、ひとまずレンジャーと話をしてから最終決断することにした。

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ビジターセンターに入るとすぐに、バックカントリー受付所が見えた。ホワイトボードにはユニットの番号と、予約人数が書き込まれている。

予想していたよりもユニットには空きがあったので、まずは一安心。

壁に張られたバックカントリーマップを見ると気持ちもぐっと高まる。そして、緊張も高まる。

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意を決して、「バックカントリーがしたいんです!」とレンジャーに伝える。

大自然の厳しさを熟知するレンジャー。厳しい表情で・・・と思ったら予想外の気さくさだ。

レ:「OK、どんなバックカントリーがしたいの?」

私:「ワンダーレイクに前泊します。初心者向けの場所はありますか」

レ:「ユニット14、15はトレイルを歩き、川沿いに約3時間。タフではないよ」


これまた笑顔で答えてくれる。

もっと厳しくあれこれ突っ込まれると身構えていただけに、ちょっと拍子抜け。と同時に安心感もわいてくる。

 

私:「どちらがオススメですか?デナリ山をきれいに見たいんですが」

レ:「ほとんど同じかな。どちらも楽しめると思うよ!」

 

うーむ、これは私たちでもキャンプできそうな予感がする。

 

ひとまずバックカントリーの説明ビデオを見てきてと言われる。「見終わったら戻ってきて。一応15番は予約しておくね」とこれまた笑顔。

 

併設のシアターで、説明ビデオを鑑賞する。30分ほどらしい。暗くてよくわからなかったが、小さな子連れや高齢者カップルの姿もちらほら。

しかし、途中でいなくなった。恐らく、デナリの自然紹介ビデオか何かと勘違いしたのだろう。

 

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ビデオがスタート。

川を渡る方法、天候への注意など初歩的な情報から始まり、メインイベントはやはり動物への注意。もちろんクマだ。

テントの張り方、食事の場所、ベア―缶の使い方、トイレの後始末。すべてクマ対策。

 

対処方法も細かい。遠くに目撃したとき、近くでばったり遭遇したとき、威嚇されたとき・・・・・・などなど多岐にわたる。

特に驚いたのは、「アタックしてきたとき」。

「ブラックベアーに襲われたときは、すぐに反撃を」。ふむふむ。

「大声で叫び、石でも岩でも投げて、出来ることはなんでもやれ」と。なるほど、もう格闘する以外に生き残る道はないのだろう。

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しかし、驚愕したのはグリズリーに襲われたときだ。なんと、ブラックベアーとは対応が違うらしい。

「グリズリーに襲われたときは、地面に伏せて身体を守る」。ふむふむ。それでそれで?

「危害を加える相手じゃないとグリズリーが気づき、去ってくれるのを待つ」・・・・・・え、それって運まかせということ!?

 

「グリズリーがいよいよ嚙みついてきたら、反撃せよ」とも。そんな冷静に対応できるとはとても思えない。恐ろしい・・・ガクガク。

 

その他、オオカミ、ムースなど動物からどうやって身を守るかに主眼が置かれたビデオだが、アタマの中で想像してみると、さすがに怖くなってくる。

ビデオの最後には、こんなメッセージも。

「それでも、バックカントリーを恐れなくてもいいのです」。

 

あんなビデオを見せられたあとで、「恐れるな」と言われても・・・いやがおうにも緊張感が高まる。

 

 

許可証ゲット!

ビデオを見終わってから、改めて受付へ。

最後の最後までユニット14か15で迷っていたが、模型地図を見ていると、「デナリ山からの直線距離は15の方が近いよね?」ということで、2人の意見が一致。

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受付カウンターで、気合を入れて「15番にします!」と伝える。

渡された書類に必要事項を記入する。

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氏名、住所、連絡先はもとより、身長、体重、髪の毛の色。

さらには、ジャケット、パンツ、バックパック、テントの色まで記入するにいたっては、「これって、クマに食べられたときの身元確認のためだよね・・・」と2人で顔を見合わせる。

レンジャーのナイスガイ、チャドからついにベアー缶を手渡される。

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そして、チャドによる最終レクチャー。

一つ、バスが見える場所でテントを張らない。

「2人にバスが見えるということは、バスからも2人が見えるから。せっかくの大自然、お互い台無しになっちゃうからね」

 

一つ、三角形をつくるべし。

「テント、調理場、ベアー缶はそれぞれ100ヤード以上距離をとって三角形にすること。クマが来ないようにね」

 

一つ、トイレのゴミも持ち帰れ。

「トイレは穴を掘り、紙は土に埋めずに持ち帰ること。動物が掘り返しちゃうと、大自然が汚れてしまうからね」などなど。

 

最後にチャドがこう付け加えた。

「ユニットで何かあっても、すぐに探しには行けないんだ。なんせ広いからね。それじゃ、気をつけて。Enjoy!」。

こんな不吉なことを爽やかに告げるチャドよ。ますます不安になるではないか・・・。

 

とは言え、これでバックカントリーの受け付けはすべて終了。計1時間ぐらい。

予想していたよりも、あっさり終わった印象だ。ひとまず、無事にハードルを越えたことを喜び合う。

ビジターセンターにいたグリズリー君にも、「明日からお世話になります」とあいさつを入れておく。ペコリ。

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ベア―缶を小脇に抱え、軽い足取りでビジターセンターを出る。心なしか、なんだか少し強くなった気さえする。

アーバスの観光客を見ていると、「我々はバックカントリーをやるんだぞ!どうだ!!」という優越感さえ覚える。

しかし、この優越感は後に、私たちがいかにうぬぼれていたかを存分に思い知ることになる前ぶれでしかなかったのだが・・・。

ひとまず、ウキウキ気分でキャンプ場に戻る。

 

とその前に、国立公園の年間パスを購入したので、キャンパーバスに含まれていたデナリ入園料の払い戻しのためバスデポに立ち寄った。

カウンターですばやく20ドルを払い戻しもらう。

さらに、ワンダーレイク2泊分のうち、バックカントリー挑戦のため不要になる1泊分を戻してもらう。アメリカは、こういう払い戻しが気軽に出来るので楽ちんだ。

 

 

テント設営

ひと仕事終え、ようやくテントサイトに戻る。

許可証の取得に気を揉んでいたので、ほっと一息。早速テントを組み立てる。

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彼女の姉一家から借り受けた2人用テント。コンパクトで持ち運びも便利。2人で協力し、あっという間に設営完了!

 

アメリカの国立公園のキャンプ場は、隣のテントサイトとの距離も十分。木立で隔てられ、プライバシーも保たれている。本当に快適だ。

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テントでのんびり・・・と行きたいところだが、もったいないほどいい天気。散歩に出かけることにする。

ライリー・クリークというキャンプ場の名前だけに、近くにはクリーク(小川)が流れる。

 1時間ほどハイキングをした。

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きれいな小川に美しい山々。バックカントリーと違い、ここは国立公園の入り口にも近く、クマ襲来の心配の少ない。

まぁ、あくまで「少ない」というだけなのだが、のんびり2人きりで自然を満喫。

 

 

長い夜

夏のアラスカのキャンプでうれしいのは、夜の長さ。いつまでも続く夕暮れの下、ディナーの準備。

明日からは過酷な環境でのキャンプが続くので、「今夜は豪華に!」。米を炊き、野菜とチキンをたっぷり投入したカレーライス。もちろんビール付き。

おなかもいっぱいになったところで、寝る準備。

 

準備編でもお伝えした通り、このキャンプ場にはシャワー設備がある。

キャンプ受付場でお金を払うと、コインのようなものをもらえる。クマの形なのかな?ちょっと可愛い。

これをシャワーブースにあるレバーの枠の中に投入。

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すると、熱いお湯がたっぷりのシャワータイム!

シャワーブースはお世辞にも広いとは言えないが、明日から2泊はシャワーなしの生活なので、文句は言えない。

足もとが水浸しになるので、サンダルで行くことをおすすめします。

 

そして!お風呂上がりは、やっぱりビール!! なんだか飲んでばかりだけど。

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売店には飲み物の種類も多く、アイスやスナック、蚊取り線香コンタクトレンズの保存液まで各種雑貨を取り扱っていた。

悩んだあげく、地ビールを2本購入。

 

22時近くになってもまだ明るい。夕暮れ風に吹かれながら飲むビールの旨さよ・・・くー、たまらん。

明日からはしばらくビールともお別れなので、ぐびぐび飲み続けます。

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ちなみに、売店やシャワーがある受付には多くの家族連れが集い、思い思いの時間を過ごしていた。

携帯電話もつながる「デナリ最後の文化圏」だけに、PCを持ち出して調べ物をする若者も。私たちも携帯充電をしつつ、しばし夕涼み。

くどいですが、この明るさでまだ22時なのです。

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明日に備えて就寝

テントまでとぼとぼ戻る。そろそろ寝る時間だが、明るくてとても眠る気にもならない。

「明日からの作戦会議!」ということで、改めて火を起こしてお湯を沸かし、おやすみ前のコーヒータイム。

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朝食用のおにぎりもつくり、準備万端!

明日からのデナリ最深部への旅を思い描きながら、バックカントリー用にレンジャーからもらった地図を広げ、念入りにシミュレーションも繰り返す。

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デナリ国立公園での初めてのキャンプということで、どうにも興奮がおさまらず、なかなか眠気も起きない。が、明日に備えてテントに入る。

しかし、なんて楽しいんだろう。「こんなに快適なら、何泊してもいいよね」なんてことを言い合って、寝袋に入る。

すべてがうまく行きすぎている気がする・・・そんな私たちのデナリ最初の夜が静かに過ぎていった。

(なお)

  

この日の走行距離=240マイル

総走行距離=465マイル

 

 

★私から一言★

ついにデナリまで来てしまった!

最後の最後までバックカントリーをするかどうか悩んでいたけれど、青空に映えるデナリ山があまりにキレイだったこと、そして、手つかずの原野でのキャンプという魅力には抗えず、私たちはいよいよクマ缶とベアスプレーを“武器”に旅立つことになった。

だって、こんな機会、この先もうないかもしれない!女は度胸なのである。

そういえば、私はスキューバダイビングもするのだけど、「海でサメに遭遇した時」の注意をダイビングショップの人に教えてもらったことがある。曰く、「慌てず焦らず、鼻っ柱を思い切り殴りつけよ」。え、咬まれた状態で・・・?

「グリズリーに遭遇したら」のビデオを見ているとき、私の脳裏をよぎったのはものすごくいい笑顔で親指を立てる、沖縄のベテランダイバーの顔だった。

(のん)

 

 

DAY3「デナリ国立公園デビュー戦」はおしまい。

アラスカDAY4 デナリ最奥部でキャンプ - アメリカ横断2人旅へ続く。

 

アラスカDAY2 氷河をClimb On!

 

アラスカ初ドライブ

8時半起床、快晴。

いつ夜が明けたのだろうか。なんとも不思議な気持ちで朝を迎えた。

この日のミッションは明日からのキャンプの準備のため、寝袋やらベアスプレーやら必要なものを買いそろえること。そして、マタヌスカ氷河トレッキングへの挑戦だ。

 

ホテルを出発してアンカレッジの中心部へ。朝も早いため人もまばら。コーヒーショップで朝食用のクロワッサンサンドとコーヒーを買う。

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まずは、アウトドア用品店「Alaska Mountain Hiking」へ。

氷河を歩くために、クランポン(アイゼン)をレンタルする。一日10ドル。女性店員が装着の仕方も丁寧に教えてくれたので安心。

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アンカレッジから北上。

途中、Walmartによってキャンプ用に買い出し。

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寝袋は2人分用意してきているけれど、デナリがどのぐらい冷え込むのか分からず、冬用の分厚い寝袋をチェックする。

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実はポートランドにいる時からネットでウォルマートの寝袋をチェックしていたのだが、寒冷地用はなんせデカい。かさばるから、必要なら現地で買おうと考えていた。(だってデカすぎて絶対帰国の荷物に入らないし・・・)。

ただ、肌感覚として今のところアラスカはさほど寒くない。デナリと言っても標高の高い山に登るわけではないし、「大丈夫じゃない?」が私の結論だった。

彼はまだ悩んでいたが(→以前、5月の上高地のキャンプで凍えて眠れなかったトラウマだろう)、「絶対使わないよ」と押し切る!

 

ランチ用にサンドイッチも調達。

キャンプ必需品の珈琲豆も買いたかったけど、ウォルマートのはアメリカンサイズすぎたので断念。

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北上するハイウェイから進路を東へ。1号線をひた走り、早速マタヌスカ川の速い流れを眺めながらドライブ。

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氷河の影響で水が濁った様子や、川幅が広がった景色など、なかなか日本では見られない景色ばかり。峰に雪をいただいた山々を楽しみつつ、車を走らせる。

今回の旅の相棒も美しい景色に嬉しそう。

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山裾は緑に覆われていても、標高があがるとゴツゴツした山肌が露出する。地層のように色合いが変わる山々の姿は、ずっと見ていても飽きないくらい不思議。

同じアメリカとは言え、アラスカまで来ると風景が変わるものだ。

おかげで途中、何度も寄り道してしまった。空気もすがすがしくて気持ちがいい。

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いざ氷河へ

13時、約2時間のドライブでマタヌスカ氷河の分岐ポイントを発見。ナビに従って運転してきたが、注意深く見ていないと見落としてしまいそう。

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到着。ここは国や州が運営する公園ではなく、一部私有地で民間人が経営しているとのこと。駐車ゲートを抜けてビジターセンターに向かう。

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私有地を通らせてもらうということで、入場料は1人30ドル。

いい商売だなぁと思いつつ、仕方ないから払う。

 

「事故に遭っても自己責任です」という誓約書にサイン。アメリカらしい。

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ビジターセンターを出ると、遠くに氷河が見える!

ついにやってきた。テンションが上がる。

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なんだか急に青空まで広がってきた。

さらにテンションが上がる。いざ氷河へ向けて歩く!

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観光地でもあるので歩きやすく整備はしているものの、氷河を間近に見るまではパッと見、泥にしか見えないびしょびしょ地帯を延々歩く。

ただ、泥に見えるこの地面も、よく見ると氷が泥の下でキラキラしており、氷河の一部なのだ。残念ながら写真にはうまく撮れなかったけれど・・・(どう撮ってもただの泥にしか見えない)。

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氷河の上を歩く予定がなくても、近くまで行きたいなら長靴か厚底の靴の方がよさそうだ。

ご高齢のハイカーさんたちもたくさん。クランポンを見て「上まで登るの?」なんて聞かれつつ、ずんずん行く。

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遠くから眺めても美しい氷河だったが、泥が混じった雪の塊のように見えていたものが、近づけば近づくほどその白さが輝いてくる。

いよいよ地表も氷で覆われはじめ、ワクワクする気持ちを落ち着かせるようにベンチでクランポンを装着する。

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いざClimb on!

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そこは別世界

クランポンのおかげで氷河の上も歩ける。最初はおっかなびっくりだったけれど、足裏にザクザクとあたる氷の感覚が楽しい! 少し散歩したら帰るつもりが、先へ先へと足が進んでしまった。

せっかくなのでと、少し小高い氷河の山も登ることにすると、景色はさらに変化していく。

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白く輝く氷河に、青みが増してきて、辺りが神秘的な世界にみえてくる。本当にきれい。裸眼でずっと見てると、青と白のまぶしさで目がやられそうなほどだ。

ちなみに、気温は低いものの、この日は快晴。太陽にあたっているとポカポカあたたかい。歩き続けて体温も上がり、彼はTシャツではしゃいでいる。

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小高い氷河の丘を越えていくと、景色はさらにどんどん変わっていく。

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氷河の上を少し散歩するだけでも大満足と考えていたが、ここまで来たらドンドン先に行ってみたい気になる。

 「氷河の上から滑落したらどうしよう」「クレバス(裂け目)に落ちたら・・・」と来る前は心配もあったけど、しっかり装備して注意しながら進めば、私のようなクランポンは初めてというビギナーでも大丈夫。

 

後ろを振り返ると、小さな子どもの手を引いたお母さんの姿が。しかも背中に赤ちゃん。アメリカのお父さんお母さんは本当にアウトドア派だ。

どうすれば子どもを連れながらでも楽しめるのか、諦めるのではなく知恵を絞っているように思う。

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さらに高みをめざす。気分は完全にアイスクライマー

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ときどき現れるクレバスにはやっぱりドキドキするけれど、のぞき込んで見るとその割れ目は吸い込まれそうなほど深く青い。キューブリックタルコフスキーの映画をなぜか思い出す。

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氷河の丘をいくつか越えると、水色、いや青色に輝く氷河の池を発見。もう、言葉が出ないほど美しい。

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一方で、世俗的な欲にまみれて行動する人も・・・。

 私が青い池に心を奪われている間、彼は氷を採取していた。昔からやってみたいと思っていた「ウイスキー・オン・ザ・氷河ロック」のため、少しだけ持って帰りたいという。

タンブラーに入れようと、なかなか小さくならない氷を割ろうとしていた。

 

彼が氷と格闘している間、疲れを癒やすべく私は大きな岩に座ってサンドイッチとコーヒーで昼食(この岩はいったいどこから来たのか?)。

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ほとんどの観光客は氷河の手前で散策を楽しみ、登った私たちは少数派だったけど、さらに先へと進むいかにもハイカー風のお兄さんもいた。この氷河はさらに何キロも続いているという。

かつての姿に比べれば、温暖化の影響かずいぶん小さくなったらしいマタヌスカ氷河。いつか溶けてなくなってしまう日も来るんだろうか。

 

そうすると入場料で商売しているビジターセンターのあの一家はどうなるんだろう・・・という卑近な想像はさておき、あの美しい青い池が地球上から消えてしまうのは、あまりにも寂しい。

言ってしまえばただの水たまりなのに、こんなにも心を打つのはどうしてなんだろう。 

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1時間ほどで帰るつもりが、気づけば3時間。後ろ髪を引かれる思いで、帰路につく。

帰り道、氷河から流れる小川で顔を洗ってみた。冷たくて冷たくてしばらくじんじんした。

 

 

街へ戻ってキャンプの準備

というわけでアンカレッジへ戻る。帰りは一部区間で工事渋滞が発生。

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クランポンを一日レンタルで借りたので、お店が閉まる19時までに返却したかったのだが、間に合うかどうか。

大急ぎで車を走らせ、お店に着いたのは19時5分。ドアにはもうカギがかかっていて開かない・・・。

ダメ元でドアを叩いてみると、店員さんが快く迎えてくれた。笑顔で「どうでした?楽しめました?」と嫌な顔ひとつせず、返却に成功。ホッ。

 

すぐ近くにあったキャンプ用品店「REI」で明日からのキャンプ生活に備えて最後の買い出し。ガスやらフリーズドライなどを買う。

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クマ除けのベアスプレーを買おうと思ったが、45ドルと意外に高い。バックカントリーキャンプには必須だけど、まだバックカントリーをやるかどうか決めかねていたので迷った末に買うのをやめた。もっと安いのが売っているかも、なんて考えながら。

さらにおなじみのスーパーFred Meyerに寄って食料の買い込み。

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今回はなんせキャンプが3泊も続く。作りやすいもの、かつ飽きない献立で・・・とあれこれ悩んで食材を選ぶ。

面倒くさいからほとんどをキャンプ用品店で売ってるフリーズドライにしたいけど、彼はどうにもそれは嫌みたい。結構おいしそうなんだけどな。

 

 

一日の〆はやっぱりビール

買い出し後は一旦ホテルに戻り、荷物を整理してから地ビールを飲みにメインストリートまで歩く。

行ったのは「49th State Brewing」。ルーフトップの席に案内してもらえたので、景色と夕日が綺麗に見える。

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夕日とは言え、すでに22時半。まだまだ明るいので「夕方」と呼ぶにはなんとも違和感。ジャーナリズムを勉強していたというご機嫌の女性店員さんのオススメを聞き、美味しいクラフトビールで乾杯。

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午前0時近くにホテルに戻るが、まだ明るい。

彼は早速、氷河から持ち帰った氷でウイスキーを飲んでいる。満足そう。

 

ホテルの地下で洗濯、乾燥機で計4ドル。洗えるときに洗っておきたいので助かる。

洗濯を終え、荷物の整理をしたらまたまた午前2時半。明日からのキャンプに備えて急いで寝ることにするが、窓の外はまだ薄青い色を残していた。

(のん)

  

この日の走行距離=220マイル

総走行距離=225マイル

 

 

★俺から一言★

氷河を一度見たい。できれば歩いてみたい。

こんな夢をずっと持っていただけに、この日のドライブは大切な思い出になった。アラスカにはいくつもの氷河があり、観光名所の国立公園や氷河クルーズもある。

だけど、こうして自由自在に(あくまで自己責任だけど・・・)歩き回れる氷河も少ないのではないだろうか。

そして、もし行くなら絶対にクランポンをレンタルしていくことを強く強くおすすめします。恐らく、氷河をただ見るのと、自分の足とで歩くのとの間には質的に決定的な違いがあるはず。

カップルでもファミリーでも、そしてもちろん一人でも、氷河ハイキングは是非一度体験を!

(なお)

 

 

DAY2「氷河をClimb On!」はおしまい。

アラスカDAY3 デナリ国立公園デビュー戦 - アメリカ横断2人旅へ続く。

 

アラスカDAY1 遥かアンカレッジに白夜は・・・

 

ベアーカントリーへ

2018年7月。私たちが住むオレゴン州ポートランドは快晴の夏日。

2カ月後に迫った帰国準備はそっちのけで、アラスカ旅行の準備に追われていた毎日だったが、ついに出発の日を迎えた。

搭乗便は20時なのだけれど、大型スーツケースに無理やり詰め込んだ中身は、テント、寝袋、ガスバーナー、包丁などなど。重量もヘビー級で、空港で手続きに時間がかかることを見越し、17時には家を出た。

マンションロビーでは、いつも笑顔でナイスガイの管理人チップとリッキーが、「旅行かい?」と声をかけてくれる。

アラスカ旅行でしばらく留守にすることを伝えると、「ベアーに気をつけて!Enjoy!!」と笑顔で送り出してくれた。

うーん、アメリカ人もアラスカと聞いてまず思い浮かぶのは、やはりクマらしい(笑)

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荷物を引きずりながら、自宅近くの路面電車の停留所まで歩く。電車に乗れば空港までは30分。空港について手続きを終えたら、ビールかコーヒーでものんびり・・・と思っていたら、なにやら停留所の様子がおかしい。

 

 

災い転じて

平和で穏やかなポートランドの交差点に大勢の人がひしめき合っている。「もしやトラブル!?」と思ったら、まさにその通り。

路面電車のスタッフに聞くと、「事故で電車が橋を渡れない。歩いて橋を渡るか、代替バスで次の停留所まで行ってください」とのこと。

幸い時間には余裕がある。荷物も多いので、バスに乗ろうと列に並んだが、いくら待てどもバスは来ない。

しかも、トラブルの影響で道路も大渋滞してきた。

「いやー、早めに家を出て正解だったね」と余裕の表情で彼女に話しかけつつ、こっそりと腕時計を見る。「間に合うだろうか」と焦りが募る。

トラブル続きのアラスカ旅行になる・・・と予想していたものの、まさか自宅を出て10分で早速ピンチが訪れるとは。

 

なんとかギュウギュウのバスに乗り込み、次の停留所から路面電車に乗車。ダイヤも大幅に乱れ、乗り換えのため名も知らぬ停留所で一度降ろされる。彼女の顔に早くも疲労の色が浮かぶ。

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電車の行き先き変更も頻発し、停留所で待っている人はみな不安げな様子。

当然、私たちも飛行機に間に合うのか不安になってきた。すると、隣の若い男性が「空港行きはこっちのホームで大丈夫だよ」とわざわざ声を掛けてくれた。

相当不安な顔をしていたに違いない。

大きな荷物を抱えたアジアからの海外旅行客が途方に暮れているとでも思ったのだろう。こういうとき、ひとの優しさほど救われるものはない。

 

何とか電車に乗り込んだが、果たして本当に空港まで行くのか確信が持てずにいた。車内では乗客同士、お互いに行き先を確かめ合う光景が広がる。

突然、我々の前に座っていた品のいい女性が、「空港まで長旅になってしまったわねxぇ」と笑いながら話しかけてきた。

「日本から来たの?ポートランドには旅行かしら?」と問われるままに会話がスタート。アラスカに行くことを告げると、「私はアラスカに20年ほど住んでいたのよ!」とまさかの展開。

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夏のアラスカがどんなに素晴らしいか、目をキラキラさせながら語るこの女性から、あふれる自然、おいしいレストラン、おすすめのバーまで詳しく教えてもらった。

停留所の男性といい、車内の女性といい、こうして声を掛け合う日常に心が満たされていく。トラブル続きのスタートで先が思いやられる旅立ちだったが、これからの旅がうまくいくような気がしてならない。

 

 

いざアンカレッジへ

19時過ぎ、自宅から2時間もかかって、なんとか空港に到着。

手荷物預け入れの締め切りまであと15分という駆け込みでギリギリセーフ。早めに家を出て本当によかった。やれやれと一息つく。

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アメリカ旅行あるあるの一つに、搭乗手続きや手荷物検査などに長時間を要する大混雑がある。

だが、心配していた預け入れ手荷物の手続きはあっさりとパス。こういうとき、係員が笑顔でさわやかに対応してくれるのがポートランド空港のいいところだ。

搭乗まで時間はないが、なにはなくてもビールを飲まないと旅も始まらない。

売店でサンドイッチを買い、彼女はコーヒー、私はドラフトビールを注文して簡単な夕食を済ませる。

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ほぼ定刻、飛行機は満席で離陸。20時過ぎとは言え、サマータイム中の北米はまだまだ明るい。

機内からはオレゴン州が誇る名峰マウントフッド、ワシントン州が誇る秀峰マウントレーニア、そして大噴火で知られるセントヘレンズ山の3峰が並ぶ姿が美しく見えてきた。

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機内サービスが始まったころを見計らい、恒例となった旅のしおりを彼女に手渡す。

いつも旅の直前になってから、はじめて旅の全貌を知ることになる彼女。水曜どうでしょうの大泉さんも同じような心境なのだろうかと考えてみたりする。

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クマを倒せる?

カナダ上空も過ぎたころ、隣の席の若い女性に声をかけられた。

私が旅の記録を書いているのが、よほど珍しかったのだろう。「それって本当に一つ一つが文字?読めるの?」と日本語に興味津々な様子。

彼女の名前はアンジェラ。ウクライナ系の美女で、両親、妹と4人でアラスカへ旅行に行くところだという。昨年夏に続き2回目のアラスカで、昨年は大きなサーモンを何匹も釣り上げたとのこと。

携帯の写真を見せてくれると確かにデカい。1メートル以上はあるだろうか。今年も家族で長期滞在し、釣りを楽しむらしい。アメリカ人の夏休みの楽しみ方は、本当に真似しなくてはならない。

アラスカの魅力を熱く語るアンジェラに、我々がデナリでキャンプすることを伝えると「ベアーカントリーだから気をつけて!」。笑顔でおなじみのセリフ。

 

彼女らは釣りの最中、いつでも撃てるように必ず手元に銃を用意しておくのだという。

「拳銃でクマを倒せるの?」と聞くと、「無理むり!もちろんショットガンよ!」とのこと。

バックカントリー・キャンプにますます自信をなくす私たちだった・・・。

 

そうこうするうちに、窓の外には雪をいただいた山々と氷河らしきものが見えてきた。生まれて初めて見る氷河だ。いよいよアラスカまで来たことを実感する。食い入るように窓の外を眺めた。

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レンタカーがない!?

アラスカ時間の23時、アンカレッジ空港に着陸。

真夜中近いのに夕方のような明るさ。アンカレッジ程度の緯度では白夜にはならないようだが、いつまでも続く夕焼けが神秘的だ。

これが極北の夏。中学生のときに教科書で学んだだけの知識だが、実際に体験してみると何とも不思議だ。

 

手荷物を受け取ると、早速巨大なムースが「ようこそ」と出迎えてくれた。

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外が明るいからついついのんびりしてしまうが、もう深夜。急いで今宵の宿に向かうため、私たち御用達のHertzレンタカーのカウンターへ向かう。

すると、並んでいた私たちの前に突然、男性客が割り込んできた。憤慨しているようで、「写真で見ていたのと車が違う!」と車のキーをカウンターにたたきつけた。

平謝りの係員。これは時間がかかりそうだなぁ・・・と思っていたら、隣のカウンターでも「もう車が残っていないんですぅ」と係員が泣きそうな顔で対応している。

不穏な空気が流れる。

 

もしや、観光シーズンのピークで、オーバーブッキングかなにかで車が残っていないのか。そんな新たな不安を抱えながら待っていると、私たちの順番になった。

 

初老の係員が恐縮しながら、「あのぅ・・・何サイズの車がいいんでしょうか・・・?」と聞いてきたが、我々が予約していたのは空き次第で車種が変わるプランだ。

困り果てている係員に恐る恐るそのむねを伝えると、「お名前は?」「お、ゴールド会員ですか?」とキーボードを叩く手つきが軽やかになってきた様子。ちなみにゴールド会員は誰でも無料で入れるので、入会をおすすめします。

ほどなく車のキーを取り出し、手続きが完了。毎度のことだが、レンタカーの手続きを終えるまではいつも気が抜けない。ようやうく一息つく。

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今回の旅の相棒は、トヨタのヤリス。日本でいえばヴィッツだが、日本で見かけるのよりは大きく感じた。小型の軽自動車みたいな車だったらどうしようと思っていただけに、改めて安堵した。

 

 

どうでしょうの縁

車に荷物を積み込み、ホテルへ向けて出発。

すでに午前0時だが、空にはまだまだオレンジ色の光が残る。本当に不思議な感覚だ。

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15分ほどでホテルに到着。

今宵の宿は、水曜どうでしょう班も宿泊した「Inlet Tower Hotel and Suite」。マニアのファンならすぐ気付くかもしれないが、エントランスの様子は当時と違っていた。放送から20年という時間の流れを感じる。

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急いでチェックイン。フロントの男性は気さくで話し好きな青年だ。「日本から来たんですか?コンバーンワ」と突然の日本語。

カタコトでも日本語を話せるのは、どうでしょうファンが大挙して押し寄せているからか!?

と思っていたら、「昔、妹がチトセでホームステイしていたんです」とのこと。

なるほど、アンカレッジと千歳市姉妹都市である。なにかと北海道との縁を感じさせるホテルだ。

 

古いホテルのため、部屋には少々くたびれた感はあるが、キャンプ泊がメインとなる今回の旅ではお風呂に入れてベッドで寝られるだけでも快適空間だ。

荷物の整理をしたり、明日の下調べをしたりしているうちに、時刻はすでに午前2時半。

窓の外はさすがに暗くなってきたが、まだほんのりと空に青さを残している。

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カーテンを閉めないと窓から明かりがもれてくる。時間の感覚が狂い、眠いのか眠くないのか混乱してしまうほどだ。何度も言うが、本当に本当に不思議な体験である。

こうして長い長い1日目がようやく終わった。

(なお)

  

この日の走行距離=5マイル

総走行距離=5マイル

 

 

★私から一言★

アンカレッジのホテルに着くや、彼が「ここで!ここで写真を撮って!」「違う、撮り位置はそこじゃなくて・・・」と大興奮。

聞けば水曜どうでしょう班も泊まった宿だという。ファンなのは重々知っていたけれど、まさか宿まで被せてくるとは。

そういえば、以前ラスベガスに行った時、「本当はシーザーパレスがよかったんだけど・・・」とがっかりしていたことを思い出す。言わずもがな、シーザーパレスもあの中年4人組ご用達のホテルだ。

 

明日は氷河の上を歩くトレッキングに出かける。クランポン履いて上手く歩けるかなぁとドキドキしつつ、キャンプでよかった、(どうでしょう班がやった)ユーコン川の川下りに連れ出されなくて・・・とちょっと胸をなで下ろしたのでした。

(のん)

 

 

DAY1「遥かアンカレッジに白夜は・・・」はおしまい。

「アラスカDAY2 氷河をClimb On! - アメリカ横断2人旅」へ続く。

 

準備編② 真のキャンプとは

 

キャンプはキャンプでも

私たちが予約したキャンプ場は「Wonder Lake(ワンダー・レイク)」。デナリ国立公園内ではバスでしかたどり着けない最深部だ。

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たき火は禁止。シャワーもなし。そんなに快適な場所でもないのだが人気はある。

それは、デナリ山に最も近づけることができるキャンプ場だからだ。我々もそこに魅力を感じた。

だが、泊まりたいと思った最大の理由はそれだけじゃない。

私たちが挑戦しようとしていた「バックカントリー・キャンプ」エリアの拠点ともなるキャンプ場だったからだ。

 

 

 バックカントリー・キャンプとは

自然をこよなく愛するアメリカ。自然保護にも力を入れるアメリカ。

「せっかく大自然に来たのに、人間に会いたくない!」「人間が整備した施設なんか見たくもない!」という発想から、手つかずの原野に泊まるというキャンプスタイルがある。それがバックカントリー・キャンプだ。

指定された広大なエリアを独り占めできる。が、もちろん水道もトイレもない。

それどころか、「人間の痕跡を残してはいけない!」という掟まであり、「歩くときは足跡すら残すな!」という指示まであったことには驚きだ。

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デナリ国立公園サイトより

デナリ山を眺めながらのキャンプなど、この先の我々の人生でそうそうないチャンス。それなら、普通のキャンプだけでなく、ぜひバックカントリー・キャンプもしてみたい!

そんなことをひそかに考え続け、「もう行くしかない!」となかば決めかけていたのだが、いくつか不安もあった。

 

 

心配あれこれ

まずは、事前予約ができないこと。

デナリ国立公園まで行ってレンジャーによる講習を受けなければ、バックカントリー・キャンプの許可証はもらえないらしい。なので、ひとまず現地に行かなければ話が進まないのだ。

 

そして、天気。

せっかく現地まで行って許可証をもらったのに、土砂降りではさすがに悲しい。直前まで天候を見極める必要があると考えていた。

 

そして、過酷さ。

いったいどのぐらいハードなのか。登山好きの我々だが、日本の3千メートル級を登山道に沿って歩く程度。冬山に挑んだこともなければ、過酷なテント生活の経験もない。

 

そして・・・クマ。

アラスカの別名は「Bear Country」。なるほど、クマがあふれかえる国。そんな原野で2人きりの我々が彼らにばったり遭遇してしまったら・・・。

 

などなど、考えれば考えるほど不安はつきない。

こんな素人同然の私たちでも大丈夫なのか。レンジャーの話を聞いてから、決行すべきかどうかの最終判断してもよいのではないか。

あまりにも厳しそうなら、バックカントリーは断念してワンダー・レイクに泊まるだけでも十分ではないか。「デナリでキャンプした!」と胸を張って帰国できるのではないか。

そんな思いをいだきながらアラスカ旅行の準備をしていた。

 

バックカントリ-・キャンプの詳細は旅日記でご紹介するが、ここでは準備編として簡単な事前情報だけを記す。

 

 

バックカントリーに挑むために

まず、前述の通り、他のキャンプサイトはネットで事前予約ができるが、バックカントリーは現地での手続きが必要となる。ビジターセンター内に受付がある。

講習といっても、ビデオを見た後でどんなキャンプをしたいのかレンジャーと相談する程度のもの。テストがあったり、アウトドア経験を厳しく問われるようなものではないのでご安心を。f:id:ff_galene:20200215124817j:plain

 

バックカントリーは「ユニット」と呼ばれるエリアを自分たちで選び、その範囲内でキャンプを楽しめるようになっている。

ユニットは全部で87カ所。ただし、デナリ山登頂をめざしたり、氷河を渡るプロ登山家レベルのものも含まれているので、家族向けや一般向けのユニットは43カ所。

それぞれのユニットには人数制限があり、早い者勝ち。逆に言えば、ひとり占めできる可能性もある。

 

私たちが選んだユニットはJR山手線の内側を占めるほどの広大な面積。なのに2人きりだった。どこまで行っても2人だけ・・・なんとも贅沢なキャンプである。

ユニットは国立公園を貫く道沿いにも広がっているので、わざわざ最深部まで行かなくても選ぶことはできる。

ただ、我々は原野の先に広がるデナリ山を間近で見たかったので、ワンダー・レイクから歩いていけるユニットを選択した。

どのユニットを選ぶかは、希望やスキルを伝えながら当日レンジャーと相談して決めることができる。制限人数が超過していなければ無事に許可証をもらえる。

料金は無料。国立公園の入場料が必要なだけ。

 

バックカントリー・キャンプに関するデナリ国立公園のサイトはこちら

https://www.nps.gov/dena/planyourvisit/backcountry.htm 

英語だが、Google翻訳を使っても十分意味がわかる内容です!

 

 

お次はバス

無事にユニットを決めたら、次はバスの予約。

国立公園の入り口付近、または無料バスで移動できる範囲をのぞけば、キャンパー専用バスの予約が必須だ。

ネットでも事前予約可能だが、不明な場合はビジターセンターではなく、バスデポ(Bus Depot)で予約もできる。

ビジターセンターとかバスデポとか手続きに立ち寄る場所が異なるのが面倒くさいが、位置関係は以下の通り。ワンダーレイクキャンプ場の遠さもよく分かる。

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バス予約の際に迷うのが、バスの種類の多さ。同じルートを走るバスだが、キャンパー専用、トランジットバス、ツアーバスなどさまざま。

大半の来園者はバス観光が目的で、運転手による動物ガイドなどのサービスもある。行き先、乗車時間にもよるがツアーバスの料金は高めの設定。

だが、トランジットバスは基本的に移動のためだけのバス。親切な動物ガイドは期待できない代わりに、料金は安め。また、ルート上であればどこでも途中乗り降りが自由という優れもの。

さらにキャンプ利用者だけが乗れるキャンパーバスはもっと料金が安い。

動物ガイドがないといっても、私たちが乗ったときは、運転手さんが野生動物を見つけるたびに一時停止してくれ、「ほら、左手の向こうに見えるぜ」的なアナウンスもしてくれた。

 

バスに関するデナリ国立公園のサイトはこちら

https://www.nps.gov/dena/planyourvisit/visiting-denali.htm

 

  

デナリの王様

バックカントリー・キャンプは自然との闘い。厳しいルールがいくつもある。というよりも、そのほとんどがクマから命を守るためのルールだった。

そう、ここはクマ王国なのだ。

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デナリ国立公園サイトより

食料など一式はクマの襲来をさけるためテント内に持ち込めないばかりか、「ベアー缶」とも呼ぶ専用コンテナに入れる。さらに遠く離れた場所に保管するなどルールはいくつもある。

ただ、こうしたベアー缶は無料で貸してくれるので事前に準備しなくても大丈夫。(注:私たちが旅したときはそうでした)

 

 

 いざ、アラスカの旅へ!

準備として必要なのはこんなところ。

あとはテント、寝袋、トレッキングシューズ、雨具などなど普通のキャンプでも必要な装備なのでここでは省略。

 

毎年、どのぐらいの日本人がデナリのバックカントリー・キャンプに挑んでいるのか分からない。少なくとも、我々が滞在中には1人も見かけなかった。

ただ、私たちは事前にバックカントリー・キャンプの情報が知りたく、いくつかのブログを拝見し、参考にした。

こうした諸先輩方のキャンプ記に触発され、デナリに行きたい気持ちを募らせたのだった。

なので、このブログが新たなバックカントリー・キャンプ挑戦者の参考になればこんなにうれしいことはありません。

では、いざ旅立ちのとき!

(なお)

  

 

★私から一言★

「登山好きな2人」なんて言うけれど、私は登り道の続く山では必ず終盤には10歩ごとに休憩を要求するヘタレです。

バックカントリー・キャンプについては事前に「広大な原野でのキャンプ!」ぐらいしか聞いておらず、詳細を知った時には(アラスカに発つ直前ぐらい)、かなり及び腰でした。

「一生に一回だよ!」「キャンプ好きとしてずっと憧れていたんだよ!」などなどの請願陳情を受け、「まあ、やってみてもいいかな」なんて気になったのが良かったのか悪かったのか、ノー・リターン・ポイントに来てしまった時にはクマ以上に厄介な敵と遭遇したのでした。詳細は本編にて!

長らく間があきましたが、当時たくさん書き留めておいたメモと記憶を頼りに、アラスカ編、頑張ってまとめてみます。

言ってるそばから、耳元でわんわん鳴ってたデナリの蚊の羽音が甦ってきました・・・。

(のん)

 

 

準備編②「真のキャンプとは」はおしまい。

アラスカDAY1 遥かアンカレッジに白夜は・・・ - アメリカ横断2人旅へ続く。

準備編① アラスカとは 

 

アラスカとは

北米大陸の北西に位置するアラスカ。カナダを挟んだ飛び地のため、アメリカ本土から車で行こうとすると、カナダ国境を越える海外旅行となる。 

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今回はアラスカ州最大の都市アンカレッジから北極圏へ向かって走れるだけ走ってみようと計画した。

縦断といっても、幹線道路が続くのは北極海に面する油田基地の街、Prudhoe Bay(プルドー・ベイ)まで。石油パイプラインと並行するその道は、北へ行けば行くほど未舗装となり、一般の観光で訪れるにはあまりに悪路すぎるらしい。

 

そこで、私たちはアンカレッジを起点として北極圏に突入。「水曜どうでしょう」ファンにはおなじみの「Coldfoot(コールドフット)」をひとまず目的地と定め、アラスカ行きの準備を進めた。

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アンカレッジからコールドフットへは600マイル(約1000キロ)ほど。アメリカ横断で4300マイル走破を経験している我々からすれば、楽勝なドライブのはず。

 

そして、せっかくアラスカまで行くのなら、ただ車を走らせるだけなのはもったいない。 

そこで、今回の旅のテーマを二つにしぼった。

 

①観光地をめぐるドライブを楽しみながら北極圏到達

②デナリ国立公園の大自然の中でキャンプ

 

なので、上記目的でアラスカへ旅行を予定しているひとの参考になれば幸いである。

 

 

まずは、ルート

旅の日程は7泊8日。自宅のあるオレゴン州ポートランドから、アンカレッジまで車で行くことも計画したが、その距離約2500マイル(約4000キロ)。行くだけで疲れてしまいそうなので、空路でアラスカに入ることにした。

 

起点はアンカレッジ。ユーコン川を渡り、北緯66度33分の北極圏をめざし、さらに走れそうならColdfootまで行きたい。

そして、その道中のデナリ国立公園にも寄りたい。

さらに、魅惑の氷河にもいくつか寄ってみたい。

欲張っているうちに、なんとなく下図のようなルートを考えた。

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前回の横断でも感じたことだが、おおよそのルートを決めておけば、あとは当日の気分次第で変えることこそドライブ旅行の醍醐味。

特に今回は、テント持参なので宿泊場所には困らないはず!と根拠のない自信をもとにルートを選び終えた。

なお、オーロラを見るには秋から春にかけてがベストシーズンだが、今回は7月の旅を決行。「白夜」とまではいかないまでも、太陽がなかなか沈まないアラスカの夏を楽しむことにした。 

 

 

レンタカー

日本に比べ、レンタカーが安いと感じる自動車大国アメリカだが、アラスカの相場は意外に高い。

インターネットでいろいろ探した結果、私たちが毎度お世話になっているHertzレンタカー提供の「店長のスペシャル」にした。

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「どんな車種になるかは、当日のお楽しみ!」との宣伝文句。まぁ、スペシャルと言っても当日空いてる車に乗れるだけなんだけれど。少し迷った。

どうでしょう班」がコールドフットめざして走った「ダルトン・ハイウェイ」は、ハイウェイとは名ばかりの砂利道の悪路だったことを思い出したからだ。

番組では、わざわざドライバーまで雇って走っていた。こんな道を走るなら、デカいアメ車、少なくとも4WDじゃなければマズイのでは・・・と考えたからだ。

「店長のスペシャル」は小型車の可能性すらあるらしい。しかし、大型車の料金はあまりにも高すぎる。

「ええい、ままよ」とばかり、7泊8日で900ドルの上記プランをネットで予約。当日を心待ちにすることにした。

なお、レンタカー会社の規約(ものすごく小さな字で書かれている)をよく読むと、「ダルトン・ハイウェイなどで事故を起こしたときの車の搬送費用等の全責任は利用者が負う」とある。さすが、自己責任の国、アメリカ。

レンタカー会社によって制限事項は異なりそうだが、アラスカをドライブする際は注意事項が多いのも事実。事前に確認しておくことをおすすめします。

なお、私たちはアンカレッジ国際空港で借りた。選べるレンタカー店も車種も多いので、これまたおすすめです!

 

  

キャンプにそなえる

アラスカを観光ドライブするだけの人はこれで準備十分。あとは、イメージを高めていくだけ。Let's go!

ここからは、キャンプを楽しみたい!というアウトドア派のみなさん向けに。

 

日本で暮らしていたときは、数えるほどしかキャンプをしたことがなかった我々2人。だが、キャンプ天国のアメリカでその魅力に目覚めてしまった。

しかも、せっかくのアラスカ。これは行くしかない。そう、デナリ国立公園に!

 

Denali National Park & Preserve (U.S. National Park Service)

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デナリ国立公園のオフィシャルサイトを開いてみる。トップ画面は北米大陸最高峰のデナリ山(旧称マッキンリー山)。この山を間近に眺めるのが、小さいころからの夢だったのだ。

もちろん、デナリ国立公園はキャンプをしなくても、ドライブだけでも十分楽しい。けれど、園内の大半は車乗り入れ禁止。バスによる観光がメインとなるが、その広さは2万4600平方㌔メートル。四国の1.3倍!

園内にただ一本だけ通る道「Park Road」を走るバスツアーが人気だが、公園入り口からバスで行ける最も奥まで片道約5時間半。

日帰りで行くと、早朝に出発して夕方に帰る人が大半となってしまうのだ。せっかく行くのに、これはもったいない。

そこで、デナリの魅力を楽しむに欠かせないのがキャンプだ。

 

デナリ国立公園には6カ所のキャンプ場がある。

熱いシャワーに水洗トイレ、コインランドリー完備で家族で楽しめるキャンプ場から、飲み水すらないキャンプ場までさまざま。当日の早い者勝ちのキャンプ場もあるが、大半は事前のネット予約も可能。

そこで、キャンプ場一覧をまとめてみた。

(2019年夏時点の情報)

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一番人気は、ビジターセンターやバス乗り場など公園の中枢機能が集まる場所にある「Riley Creek(ライリー・クリーク)」キャンプ場。

上図のように公園入り口にも近く、アクセス良好。テントサイト数も多く、予約しやすい。携帯もつながるし、近くにはシャワーがあり、コインランドリーまである。

さらに、食品、日用品、なんと冷えたビールまで買うことができる!まさにオアシス的存在だ。

「デナリの雰囲気を感じたいけれど、厳しいキャンプは心配」という人でも大丈夫。

テント横に車を横付けできるサイトは24ドル。近くには広い駐車場もあるので、ここに車を置き、テントだけかついでキャンプをすれば15ドル。

予約可能なテントサイト数も127。いずれにしても便利なこと間違いなし。

小さな子どもを連れてキャンプするにはもってこい。まさにデナリキャンプの入門編だろう。私たち2人もまずはここで1泊して雰囲気をつかむことにした。

 

残るキャンプ場は、公園を貫く道「Park Road」沿いにある。

一般車が乗り入れられるのは、「Savage River(サベージ・リバー)」キャンプ場の先まで。例外的に、「Teklanica River(テックラニカ・リバー)」キャンプ場を利用する人だけが自家用車で入ることができるが、キャンプ場まで29マイル(約50キロ)。

デナリのキャンプは、奥に進むにつれて険しくなる。

 

そして、デナリを本格的に楽しもうと私たちが目指したのが、公園の一番奥にあるキャンプサイト「Wonder Lake(ワンダー・レイク)」だ。

「ワンダーな湖!」という魅力的な響きとは裏腹に、我々は過酷なキャンプを経験することになる。

私たちがなぜデナリ国立公園の最深部を目指したのか。どうしてここに泊まることになったのか。

そこには深い深い事情があったのだった。

(なお)

  

 

★私から一言★

プロローグを書いておいて1年以上も放置って、真剣にブログを書いている人からしたらあり得ない怠慢です。日本で働くって本当に心の余裕がないってことなんだなぁ・・・と言い訳してみる。

長らく間があきましたが、当時たくさん書き留めておいたメモと記憶を頼りに、アラスカ編、頑張ってまとめてみます。

言ってるそばから、耳元でわんわん鳴ってたデナリの蚊の羽音が甦ってきました・・・。

(のん)

 

 

準備編①「アラスカとは」はおしまい。

準備編② 真のキャンプとは - アメリカ横断2人旅へ続く。 

 

アラスカ縦断 プロローグ「究極の大地へ」

さて。再び彼と旅に出ることになった。

 

と言っても去年の夏からニューヨーク、年明けに西海岸はポートランドに引っ越して、かれこれ約1年、ずっと旅をしているような気分なのだけど、そんなアメリカ生活も夏の終わりと共にもうすぐおしまい。

帰国がリアリティを帯びてきて、なんとなく、今だからこそ行ける旅に出たいな、と、私も彼もそわそわし始めていた。

 

だってアメリカに住んでいる今なら、ハワイだって「国内旅行」なわけで。

もう一度ニューヨークに行くのだって、フロリダのディズニーランドだって、十数時間ものフライト(日本は遠いね!)に耐えなくてもいいわけで。

日本に帰ったら、多分また休めない仕事の日々が待っている。こんな機会を逃す手はないのではないだろうか?!

 

そして、私たちが「国内旅行」先に選んだのはアラスカだった。

 

理由はいくつかある。デナリ山を見てみたいな、とか。氷河を見てみたいな、とか。北極圏に行ってみたい、ツンドラって実際どんなだろう? 白夜って何時まで明るいのかな・・・etc.

 

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日本に帰国してしまうと、アラスカまで旅行するのはなかなか時間的にも金銭的にも大変そう、ということも正直あった。

それに、こっちで出会った少なくないアメリカ人が「アラスカは素晴らしい!」と絶賛していたし、南米やヨーロッパから渡米してきた友人たちも「行くならハワイかアラスカ!」と口をそろえていた。

 

アラスカに行くなんて、アメリカに暮らすことと同様に私の将来予想図にはなかった。

けれど、うん、ポートランドに住んでから、キャンプしたりハイキングしたり、すっかりアウトドア派になりつつあるし、大自然いいんじゃない? 彼も「水曜どうでしょう」のアラスカ縦断編、大好きだし。

 

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水曜どうでしょうDVD第12弾「香港大観光旅行/門別沖 釣りバカ対決/北極圏突入~アラスカ半島620マイル~」|HTBオンラインショップ

 

 

・・・と、私はぼんやりと、アラスカの雄大な景色や、北の大地らしく爽やかな風が吹き抜ける冷涼な空気を想像して、彼が「キャンプしようね、(ぼそっと)3泊か4泊ぐらい。(ぼそっと)本当の大自然を体験できるキャンプもあるみたい。(ぼそっと)あと未舗装の道をドライブしたり・・・」と言うのを適当に聞き逃していた。

 

だけど、私は忘れていたのだ。

彼がどれだけ「水曜どうでしょう」が好きなのかを。

 

そして私は「アラスカだもん、どこ行っても楽しいに決まってるでしょ」とほぼ何の下調べもせず、出発の日を迎えたのだ。アラスカ縦断ドライブの旅へと。

 

まさか、大自然を究極にまで体感することになるあんな経験をすることになるなんては、このときはまだ夢にも思っていなかったのだった。

 

 

準備編① アラスカとは - アメリカ横断2人旅 へ続く。

豆知識編③ ドライブ必需品!

 

快適なドライブを演出するために

さてさて続いては、私たちがドライブ中に「あってよかった!」「持ってくればよかった・・・」と痛感したグッズたち。

ドライブ編でも少し触れましたが、ここで改めて振り返りつつ、一覧にしてみたいと思います。

アメリカにないものはない。途中で買い足すことはもちろん可能だけど、快適な車内環境をつくりあげるためにも、大陸横断の初期段階でぜひ、そろえておきたいものとは!

これまた私たちの経験に基づき、独断と偏見も少々織り交ぜながら紹介していきます。

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まずは、ぜひ用意しておきたいグッズから。

 

 

あると便利!<必需品>

①車用の携帯充電器

長時間のドライブでこれがないと困りますね。

 

②サングラス

長時間の運転には必須。特に昼間はこれがないと眩しすぎて走りづらい!

アメリカではガソリンスタンドなどでも安く買えます。

 

③リップクリーム

私たちが行った時期がそうだったのか何ともわかりませんが、アメリカはとにかく乾燥しているのです。あれば重宝すること間違いなし。私たちは旅の途中、小さなリップ1本のために広大なウォルマートを探し回りました。

 

④日焼け止め

車に乗っていても日焼けします。女性の天敵ですね。肌にあう・あわないがあるので、日本で買っていくのがベストでしょうが、忘れた場合はドライブ中に買いましょう!

もちろん男同士の旅なら不要だと思いますが・・・。

 

⑤掃除道具

私たちはドライブの途中でこの必要性に気づき、買い足しました。そう、ドライブ中はとにかくフロントガラスに虫が突撃してきます。

フロントガラスをきれいにするのとしないのとでは、景色を眺める楽しさが断然違ってきます。私たちは安いガラス用洗剤とスポンジを買いました。

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ちなみに、水切りワイパーがレンタカーのトランクに入っていました。なので、車を借りた時点で、一度トランクに何が入っているか確認してみることをオススメします!

 

iPodなど音楽を聴けるもの

孤独と眠気からあなたを救います。気分を盛り上げるためにアメリカンな選曲をするのもよし(『イージーライダー』のテーマソングとか)。

眠気をはらうために、そらで熱唱できる歌も入れておくとなおよし。

私たちは、車内で音楽を聴くために日本からFMトランスミッタを買っていきました。けれど、レンタカーにはBluetoothが標準装備されており、出番がありませんでした・・・(涙)

でも、備えあれば憂いなし!なので、事前に確認できない場合は、安いのを買っていくのもアリだと思います。

 

⑦カーナビ

準備編でも書いた通り(準備編② レンタカーと免許証 - アメリカ横断2人旅)、私たちはカーナビ搭載のレンタカーを借りました。

本当にカーナビがないとドライブは大変です。ただ、携帯をカーナビとして使う手もあるので、この辺の判断は予算との相談でしょうか。

 

 

あると便利!<買って正解>

①クーラーボックス

こちらはドライブ編でも書いた通り(DAY4 やってきたのはニューオリンズ - アメリカ横断2人旅)、ドライブ中の楽しみが広がります。

私たちが旅したのは4月でしたが、短時間だけ駐停車しても車内の温度は一気に上がりました。

冷たい飲み物、チョコレート、果物、サンドイッチ・・・などなど、クーラーボックスがあると買い物の選択も広がります。安いのでいいので、買っておくことをオススメします。

 

ミシュランの地図

日本も同じだけど、アメリカは田舎に行けば行くほど数本の道路しかありません。地図に載っている道路だけでも充分、走行プランを立てられます。

私たちが愛用したのはミシュランの地図。折りたたむと小さくなるし、広げるとアメリカを一覧できるし、通ってきたルートをペンでなぞって楽しむもよし、本当によくできた地図でした。

私たちは途中でなくしてしまい(涙)、別の全米地図を買いましたが、やっぱりミシュランの使い勝手はよかったです…。

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地球の歩き方アメリカ横断編

地球の歩き方アメリカだけでいくつもあります。が、ドライブに特化しているのがこちら。交通ルールなども載ってます。

モーテルのランキングや、各地のちょっとした立ち寄りスポットなども載っていて便利でした。ちょっと仮眠をするときにも使えます(?)。

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④ガム

眠気防止に。ブラックガム的なもの。とにかく眠くなるので。

 

 

あると便利!<買わなかったけど、あるといいかも>

①窓に貼るUVカットフィルム(?)

ガソリンスタンドなどでも売っていました。日焼けは女性の天敵なのです!一日に6時間も7時間も走るんだから、日焼けを侮ってはダメなのです!

 

②アームカバー=長手袋

改めて、日焼けは女性の天敵なのです!

 

③クッション

枕用にあるといいかもと思いました。寝る時は上着をかけて寝たけど、大きめのストールとかがあるとなおいいかもしれない。

交代しながら長時間ドライブをするためにも、仮眠を快適にとることはとても大切だということを、嫌と言うほど思い知らされる旅でした。

(のん)

 

 

★俺から一言★

豆知識編②をアップしてから2カ月。またまた遅くなりましたが、豆知識編③の完成です。ほそぼそとではありますが、アクセスも4万人を超えました。いつも読んでいただき、心から感謝です。

そして、ドライブ編を書き終えてからは、もう1年以上も経ってしまいました。こんなに時間がかかるはずではなかったのですが、これには深い理由がありまして・・・。

 

実は私たち2人、いまアメリカで暮らしています。

 

あれだけ恋い焦がれた自由の女神さまのおひざ元のNYに、留学のため今年の8月から住んでおります。たった1年間の滞在予定ではありますが、昨年の秋から準備に追われたため、ブログの更新が滞っていました。

 

そう、何をお伝えしたいのかというと、新婚旅行でアメリカ横断の旅をして本当によかった!ということなのです。

私たち2人がアメリカで暮らすことになるなんて、あのときは夢にも思っていませんでした。けれど、あの横断の旅を終えてしばらくすると、いつの間にかアメリカへの憧れのようなものが2人の間に生まれたのです。

旅行先でしかなかったアメリカだったのに、気がつけばこうして生活の場になっている・・・・・・人生は本当に不思議です。

 

なので、このブログを読んでいただいているカップル、ご夫婦、友人同士、一人旅好きのみなさん、ぜひぜひアメリカ横断に挑戦してください!

きっと、いや間違いなく、その後の人生が変わるはずです!!

(なお)

豆知識編はおしまい。

新しい旅へと続く・・・。

アラスカ縦断 プロローグ「究極の大地へ」 - アメリカ横断2人旅

 

豆知識編② お宿を探す

 

ホテル、モーテル・・・いろいろあるけれど

続いての話題は宿泊場所。

ドライブ編でも書いたけれど、はじめのうちは一日どれぐらい走れるのか目安がつかみにくく、どの街に泊まればいいのか迷うことも多い。

なので、ドライブしながら「今日はここまで行けそうだ!」と分かった時点で、車中で宿をネット予約するのが一番かもしれない。これもドライブ編で書いた通り。

そこでおススメしたいのがモーテルだ。

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というかドライブの旅をしていると、よほど大きな街に泊まらないかぎり普通のホテルなんかほとんどない。

モーテルと言えば、映画の世界では殺人事件が起こったり、売春やドラッグの取引現場だったり、幽霊が出てきたり・・・・・・なんとなく危ないイメージ。

だけど、心配することなかれ。現実のモーテルは駐車場完備、深夜チェックインOK、お値段以上のお部屋の広さ! アメリカ横断ドライブの強い味方なのだ。

では実際、モーテルの部屋はどんな感じなのか。アメニティ(女性はここ重要!)は? シャワーはちゃんと出るの?? 

ここでは、私たちの経験による独断と偏見で、横断の旅オススメのモーテルを紹介していきます。  

 

 

モーテルとは

モーテルとは、モーターホテルの略称で、車社会アメリカではとても一般的なお宿。日本で言えばビジネスホテルみたいなものだろうか。

ハイウェイ沿いには必ずと言っていいほどあり、インターチェンジが近づくと、どんなモーテルがあるのか看板も出ている。

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車でそのまま乗りつけ、フロントでチェックイン。さすがアメリカ、広々とした部屋に大きなベッド。お値段はピンきりだが、田舎町なら数十ドル、観光地でも100ドル未満で泊まれるところが多かった。

宿泊代が1人あたりではなく1部屋あたりなのも嬉しい。後述するけれど、激安の「Motel6」などでは、ちょっと田舎なら1泊25ドル、つまり2人1部屋だと1人1500円ぐらいで泊まれちゃうのだ。

ちなみに、これまた映画でおなじみ、部屋の前に車を駐車して・・・というモーテルは実はさほど多くない。部屋と駐車場が離れていることもあるので、戸惑わないように。

 

 

独断と偏見のモーテルランキング

それでは、モーテルのピンとキリを簡単にご紹介。

全米中のモーテルではなく、私たちがドライブ中に実際に泊まったり、見かけたりしたモーテルを分析していきます。

 

 

「Best Western」

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モーテルの中ではおそらく最上級。立地場所によって設備や値段はさまざまだろうけど、部屋も広く、シャワーの水圧ももちろん十分。そして何より朝食の質が高い!

アメリカの朝食と言えば、食パン、シリアル、コーヒーが定番中の定番。「え、それだけ?うそでしょ?」と思うでしょう。安宿では本当にこれがすべてです。パサパサ、冷たく、味気ない。

が、BestWesternはさすが高級モーテル! 私たちの泊まったオクラホマ州El Renoの朝食では、パンケーキやベーグルを焼くトースターがあり、あたたかいスクランブルエッグにベーコン、デザートにリンゴやオレンジなどの果物まで。

お客さんもシニアのご夫婦に家族連れなど、落ち着いた雰囲気。この旅の朝ごはんランキングでは、サンタフェのホテルを除けばダントツでBestWesternが1位だった。

 

 

「motel6」

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ピンをまず紹介したので、お次はキリを。

しかし、「キリ」と言ってしまうのは、あまりにmotel6に失礼かもしれない。というのも、motel6はとにかく安い!

私たちが宿泊したアリゾナ州Pageはアンテロープキャニオンやグランドキャニオンを巡る拠点の街だったので、モーテルも軒並み100ドル以上と強気の値段だったが、moter6は65ドルほど。他のエリアでも相場より20~30ドル安く、部屋が汚いわけでもシャワーが出ないわけでもなく、寝るだけなら何の文句もなし。

ただし、さすがに壁は薄く、私たちの泊まったPageのmotel6には深夜まできゃっきゃっ騒ぐティーンエイジャーたちの声が響いていた。

 

  

「Quality INN」

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横断ドライブ開始後、雨の夜道で疲れ切った私たちが初めて泊まったモーテル。おそらくランクは中程度。可もなく不可もなく。というか、日本のビジネスホテルの部屋の広さと値段を考えれば、十分に快適だと思う。うん。

 

 

「Super8」「Comfort INN」「Holiday Inn」「Days Inn」

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などなど、車中からは多くの看板を見かけた。全米に展開しているグループだと思われ、日本人でも安心して泊まれるレベルのモーテルだろう。宿を探す際に値段を調べた感覚から言えば、super8はmotel6よりやや質がよく、comfort INNやHoliday Inn、Days Innは中程度のmotelじゃなかろうか。

地球の歩き方 アメリカ横断』にはモーテルランキングが載っているので、よければそちらもご参照を。

「プール付き」というモーテルもよくあったので、泊まり歩き(泊まりドライブ?)しながらお気に入りのモーテルを発掘するのも横断の旅の醍醐味かも。

 

 

その他

以上は、高速道路沿いには必ずある有名どころのお宿。だが、高速を下り、田舎道をトコトコ走っていると、巡り合えるお宿がある。そう、小さな田舎町は渋いモーテルのオンパレード!!

アメリカの映画で絶対出てきそう!」なモーテルがこれでもか、これでもかと現れる。どれも古く、ひとけもなく、恐らく大半はとっくの昔に営業をやめたまま放置されているのでは・・・というぐらいにひっそり。

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でも、こうした光景は日本の田舎町にたたずむ旅館や民宿と同様か。もしかしたら、地道に営業しているのかも。こうしたお宿に泊まるのも、アメリカ横断の旅情を味わえる方法の一つ。男同士の旅でなら試してみてもいいかもしれない。

 

 

モーテルを使いこなすために

宿を決める前に、確認しておきたいのはモーテルに何を求めるかだ。

もちろん、深夜に到着し、寝るだけで早朝出発ならどんな宿でもいいだろう。だが、長いドライブの旅。徹底的にモーテルを使いこなすため、以下のことには留意したい。

 

①お風呂 

すべての宿にバスタブがあるわけではない。

アメリカだけにシャワーしかないところも多く、motel6がそうだった。連日の長時間ドライブ、「湯船にゆっくりつかって一日の疲れを・・・」。そんな願いをかなえたいひとは、予約前にバスタブの有無を確認しておきたい。

 

②アメニティ

意外に充実しているのがこちら。シャンプーやリンス、ボディソープ、ひげ剃りetc. 日本のビジネスホテルにあるものはmotel6以外なら大抵そろっていた。ただし、これは日本でも同じだけど、こだわりがあるなら持って行くのがベター。

不思議だったのは、アメニティの中に必ずと言っていいほど、ボディクリームがあったこと。日本ではあまりお目にかからないアメニティで、後々わかったのはアメリカは日本よりずっと乾燥しているから、アメリカ人はボディクリームを使う人が多いのだ。

余談ながら、くちびるも乾くのでリップクリームも必携!ただ、スーパーでも普通に1~2ドルで買えるのでそんなに心配はいらない。(どでかいウォルマートで小さなリップ1本を探すのはなかなかの宝探しだ)

 

③コインランドリー

横断の旅でアタマを悩ませることの一つが洗濯。「水曜どうでしょう」のように、部屋で手洗いをして宿を出発。ドライブ中の後部座席で乾かすという場面もしばしば。

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そこでオススメしたいのが、コインランドリー付きのモーテル。

たまった洗濯物を一気に洗うチャンスだ。予約時にコインランドリーの有無を調べておけば問題ない。旅の中盤、私たちも洗濯をする気満々で張り切ってモーテルに向かったが・・・・・・なんと、motel6は洗濯機の夜間使用ができなかった!!(あれ?なんかmotel6への悪口多い?)

使用可能な時間帯を事前に調べておくことをおすすめします。

(でもサイトにはそこまで書いてなかったりするから、結局は出たとこ勝負かも?)

 

④食事

ほとんどのモーテルは朝食付きで、ブッフェスタイルが一般的(ブッフェというほど素晴らしくはない。東横インの無料朝食を想像してください)。

日本でビジネスホテルに美味しい朝食を求めないように、アメリカのモーテルに豪華な朝食を期待するわけではないけれど、意外に差が出るのは朝食だと思った。

私たちはドライブのお供にしょっちゅうコーヒーや果物、あまつさえパンにハムを挟んでサンドイッチまで “テイクアウト” して、正直なところランチ代が結構ういた。

外食すると、マクドナルドレベルでも7、8ドルはかかる。レストランに入ればそれなりに美味しいものが食べれるのだろうけど、時間もお金もかかる。ドライブ旅で「早く・安く」を目指すなら、モーテルの朝食ブッフェは非常に使い勝手がよいのだ。

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ただし、マナーとしてOKなのかどうかは保証しません。私たちは幸い一度も怒られたことはなかったけれど・・・?

(のん)

 

 

★俺から一言★

豆知識編①をアップしてから約6カ月余り。ようやく豆知識編②が完成しました。

「私たちのこんなサイト、見てくれている人なんていないからいいよね?」なんて2人で話してはいたものの、アクセスもなんと3万人を超えました。本当にありがたいことです。

はじめにもお伝えした通り、私たちもアメリカ横断前にいろんなサイトにお世話になったので、せめてもの恩返しのつもりでコツコツと気長に書いております。

実際に私たちのサイトを見て、「よし、行ってみるか!」と思われたカップル、家族、友人同士などなどいらっしゃれば、こんなに嬉しいことはありません。

今回はモーテル特集でした。高級ホテルがいい思い出になるように、安宿の思い出もなかなかに味わい深く、いつまでも心に残りますよね。振り返ってみて、改めてそう思いました。

(なお)

 

  

豆知識編③に続く。

豆知識編③ ドライブ必需品! - アメリカ横断2人旅