アラスカ縦断 プロローグ「究極の大地へ」
さて。再び彼と旅に出ることになった。
と言っても去年の夏からニューヨーク、年明けに西海岸はポートランドに引っ越して、かれこれ約1年、ずっと旅をしているような気分なのだけど、そんなアメリカ生活も夏の終わりと共にもうすぐおしまい。
帰国がリアリティを帯びてきて、なんとなく、今だからこそ行ける旅に出たいな、と、私も彼もそわそわし始めていた。
だってアメリカに住んでいる今なら、ハワイだって「国内旅行」なわけで。
もう一度ニューヨークに行くのだって、フロリダのディズニーランドだって、十数時間ものフライト(日本は遠いね!)に耐えなくてもいいわけで。
日本に帰ったら、多分また休めない仕事の日々が待っている。こんな機会を逃す手はないのではないだろうか?!
そして、私たちが「国内旅行」先に選んだのはアラスカだった。
理由はいくつかある。デナリ山を見てみたいな、とか。氷河を見てみたいな、とか。北極圏に行ってみたい、ツンドラって実際どんなだろう? 白夜って何時まで明るいのかな・・・etc.
日本に帰国してしまうと、アラスカまで旅行するのはなかなか時間的にも金銭的にも大変そう、ということも正直あった。
それに、こっちで出会った少なくないアメリカ人が「アラスカは素晴らしい!」と絶賛していたし、南米やヨーロッパから渡米してきた友人たちも「行くならハワイかアラスカ!」と口をそろえていた。
アラスカに行くなんて、アメリカに暮らすことと同様に私の将来予想図にはなかった。
けれど、うん、ポートランドに住んでから、キャンプしたりハイキングしたり、すっかりアウトドア派になりつつあるし、大自然いいんじゃない? 彼も「水曜どうでしょう」のアラスカ縦断編、大好きだし。
水曜どうでしょうDVD第12弾「香港大観光旅行/門別沖 釣りバカ対決/北極圏突入~アラスカ半島620マイル~」|HTBオンラインショップ
・・・と、私はぼんやりと、アラスカの雄大な景色や、北の大地らしく爽やかな風が吹き抜ける冷涼な空気を想像して、彼が「キャンプしようね、(ぼそっと)3泊か4泊ぐらい。(ぼそっと)本当の大自然を体験できるキャンプもあるみたい。(ぼそっと)あと未舗装の道をドライブしたり・・・」と言うのを適当に聞き逃していた。
だけど、私は忘れていたのだ。
彼がどれだけ「水曜どうでしょう」が好きなのかを。
そして私は「アラスカだもん、どこ行っても楽しいに決まってるでしょ」とほぼ何の下調べもせず、出発の日を迎えたのだ。アラスカ縦断ドライブの旅へと。
まさか、大自然を究極にまで体感することになるあんな経験をすることになるなんては、このときはまだ夢にも思っていなかったのだった。