アメリカ横断2人旅

めざせNY→LA完全走破!新婚旅行ドライブ挑戦記

アラスカDAY4 デナリ最奥部でキャンプ

 

バックカントリー前日

5時半起床、快晴!
ついにデナリ国立公園の最深部「ワンダー・レイク」キャンプ場へ旅立つ。昨夜作っておいたおにぎりをほお張り、淹れたてのコーヒーをタンブラーにたっぷり注ぐ。

バスの出発は6時55分。「ライリー・クリーク」キャンプ場近くのバス乗り場から。カリーブーループ近くのオーバーナイト専用駐車場に車を停め、バスへ急ぐ。

しばらくは愛車ともお別れ。無事に戻れますように。朝いちのキャンパーバスだが、乗る人は結構いる様子。

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バスが到着。深いグリーン、いかついフォルム。

早速乗り込むが、座席はフカフカではなく、汚れ防止のためビニールでカバーされており、まさに「キャンパーバス」と呼ぶにふさわしい武骨さだ。

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最前列左側がベストの席と聞いていたが、運転手さんの荷物置き場になっている。

ひとまず、彼女を一番前の右側にする。運転手の名前はレックス。

「どちら側が景色を見るのにいい?」と聞くと、「どっちに動物が出るかはわからないぜ。どっちもGood」とのこと。

本当かよ、と思いつつ、バスも混んできそうだったので、一人で左側に座る。
ワイルダーネスセンター、さらにその先と、停留所に止まるたびに乗客も増え、バスはいつしか満席近くに。

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どんどん進んでいくと、やはり左側の座席の方が景色はよさそうなので、彼女を呼び寄せる。

しばらく走ると、遠くに白い峯が見えてきた。誰かが「Denali!」と叫び、みんなが一斉に写真を撮り始めた。


その後もデナリ山は断続的に姿を現した。天気が良いせいもあり、ピークまできれいに見える。これはラッキーだ。

というわけで、迷ったときは左側の席に座る方がいいのかもしれない。

 

 

ひたすらバスの旅

思っていたより動物は見えない。そもそもキャンパーバスなので、ほかの観光バスが動物観察のために止まっていても、我々はどんどん追い抜いていく。

それでも一度、バスの横をトナカイが駆け抜けたときは車内で歓声が上がった。

みんなの目的はもちろんキャンプ。だけど、野生動物を見たい気持ちも一緒なのだ。

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途中、トイレ休憩を2度ほどしながら、バスは進む。「10分程度休憩します」とレックスが車を停めた。

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快晴。青空。とても気持ちがいい。 

10分しかないのに、急いでお湯を沸かしてエスプレッソを入れるキャンパーもいた。さすがバックカントリー大好きのつわものばかりだ。

キャンパーバスは単なる移動手段かと思っていたけれど、休憩を兼ねてときどき止まってくれるので、みんなが思い思いにデナリのバス旅を楽しんでいる様子。

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バスはどんどん進む。

デナリ山に近づいていく。

なんという光景だろう。遠くから何度も見ていたはずなのに、天国に続くかのような道の先に神々しいデナリ山を見ていると、まるで初めて見る山のようにも見える。

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キャンプにばかりこだわっていたけれど、こうした風景をバスに揺られて見られるだけも幸せな気持ちになれる。多くの人がバス観光だけに訪れるのも理解できる。

遠くに砂ぼこりを巻き上げながら原野を疾走するバスも見える。大自然のまっただなかにいることを改めて感じる。

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まだまだバスの旅

バスはさらに進む。

そして、ときどき停まる。休憩場所でもないのになぜ?と思っていたら、キャンパーが降りていく。

キャンプサイトの表示がある場所で降りることもあれば、「そこで降ろしてくれ」と運転手に告げ、何の標識もない道沿いに降り立つときも。そこにはツンドラの大地が広がっているだけ。

何もない原野に分け入り、バックカントリーキャンプに向かう。寂しげな場所にただ一人降りる勇気と覚悟はいかばかりだろうか。

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そんなキャンパーがバスを降りるたびに、窓から「See you!」「Enjoy!」と声が飛ぶ。バックカントリーを愛するもの同士だからこその仲間意識だろう。

降りる人がいれば、道路で手を挙げて途中から乗り込んでくる人も。キャンパーバスは本当にキャンプのためのバスなのだ。

 

 

クマの美しさ

バスはずんずん進む。

予想していたよりは動物が見えなかったためか、乗客もみんな窓の外を食い入るように見つめている。

「そこの下にいる!」と誰かが叫び、バスが急停車。でも、見間違えだったようで、「Sorry、白い岩だった」との声が聞こえ、車内には「ドンマイドンマイ」的な笑いも起こる。


すると、レックスがバスをスローダウン。マイクなしで聞き取りにくいが、動物を見つけたようだ。

前後の乗客同士で「いま何て言ったの?」「左手にグリズリーがいるみたいだって」と教え合う。
みんな左側の窓にしがみつき、「どこだどこだ」と声をかけ合いながら探す。

いた!! 遠くにグリズリーの親子が遊んでいる。

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陽を受けた毛が金色に輝き、威風堂々とした印象。美しい。

ただ、彼女は「キレイだねぇ。でも、あまり私たちのキャンプサイトの近くでは見たくないね」と一言。その通りだ・・・。


デナリがさらに近づき、山の峰々もキレイに見え始めると、乗客から「レックス!デナリを撮りたいからストップしてくれ!」とのリクエストも。

レックスは「あと20分ぐらい行けば、もっとキレイに見える。写真も撮りたい放題だから!」と返事をしつつも、少し停めてくれた。

こういう緩さもよい。

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さらにバスを走らせ、ついに最後の休憩場所、アイルソンビジターセンター着。

ここで40分の小休止。トイレ休憩を兼ねてはいるが、中には急いで火を起こし、ラーメンをつくり出すキャンパーもいた。さすがだ。

ここで2人でリンゴを食べ、デナリを心ゆくまで堪能する。

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デナリ国立公園は、奥に行けば行くほど道も険しくなる。

それでもバスは進んでいく。そして、デナリもどんどん近くなる。そして、デナリ山は常に美しい。

雲がかかることも多く、いつもきれいに山容が見えるわけでもないらしいので、私たちはラッキーだったのだろう。

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過酷なキャンプ生活開始

いよいよバスは終点、ワンダーレイクキャンプ場へ。

バスにはまだ20人ほどのキャンパーが残っている。みんなワンダーレイクで一斉に降りて、テントサイト争奪戦が始まるのだろうか。彼女とバスを降りた後の手順を確認。

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テントサイトの条件は、デナリが見えやすい場所! なるべく早めにバスを離れて選びたい。
12時半、ようやく到着。

バス降りてキャンプ場へ急ぐ。とは言え、ここで走るのも大人げないので、もちろん平然と歩く。

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一番乗り!nと思ったらまだ前日のキャンパーが帰りじたくをしていた。連泊中のキャンパーもいる。

どこにテントを張ろうか決めかねていた。さらに、テントサイトまでの道もブッシュに隠れてわかりにくい。
それでも、静かそうでデナリ山が見える場所を確保。急いでテントを張る。

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炊事場で手早くラーメンと焼きそばをつくる。食べ終わって戻ってくると、さっきまで埋まっていたテントサイトが空いている。デナリ山が真正面に見える!

急いで引っ越し。

テントを2回も設営するとこになったが、手早くテントを張る。炊事場もトイレも近く、これまたラッキー。

 

 

クマ対策訓練

夕方までハイキングに出かける。まずは、キャンプ場の名前にもなっている湖「ワンダーレイク」へ。すぐに着いたが、観光客も多いふつうの湖。泳いでいる人もいた。早々に退散。

道を歩きがてら、誰もいないのを確認し、ベアスプレーの噴射訓練をすることにした。

説明書には「必ずクマの風上に立つように」とある。ばったりクマに遭って、そんな冷静な行動がとれるものだろうか・・・しばし考え込む。

ハイキング中に突然「クマが出たよ!」という想定までして、いかに早く安全装置を外し、噴射できるか交代で試してみた。

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思っていたよりも遠くまでスプレーが飛ぶ。だが、若干風下から噴射したせいか、風に押し戻されてきたスプレーが目や鼻に入った。すごい刺激だ。

強烈な刺激だが、本当に巨大なグリズリーに効くのだろうか。ないよりは心強いが、なんとも心もとない気も。

 

さらに歩き、デナリ山が水面に反射するという池「リフレクションポンド」をめざす。

地図で見ると近くに感じたが、実際歩くとなかなか遠い。バスが通る道を行くので日陰もなく暑いし、車が通ると砂けむりにまかれる。

40分ほど歩く。すれ違った2人にあとどれぐらいか聞いてみると、「20分ぐらいかなぁ」との返事。気力を振り絞る。

ようやく着いた! が、池には少しさざ波が立ち、デナリ山は映らず・・・しばし休憩してから戻ることにする。

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帰り道で老夫婦とすれ違ったので、あとどのぐらいか教えてあげる。「なかなか遠いねぇ」とおじいちゃん。そのお気持ち、わかります。なかなかキツいハイキングコースだった。

太陽がずっと照りつけるので、わずかな日陰を見つけては休憩。2人とも黙ってしまうと無音な景色だけが広がる世界。美しい。

そんな静かな道を2人きりで歩き続ける。

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明日に備えて
なんとかキャンプ場に戻り、夕飯の準備。

ご飯を炊き、スープをつくり、ソーセージも焼いた。周りはドライフードを食べているキャンパーも多かったので、我々の方が美味しそうだ。えへん。

食事や火を使う調理は炊事場でしかできないが、ここからもデナリ山をきれいに眺めることができる。

デナリを間近に望むことができるのがワンダーレイクキャンプ場の最大のポイントだ。

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食事を終え、コーヒーを淹れる。

自分たちのテントに戻り、備え付けのテーブルでコーヒーを飲みながら改めてデナリを眺める。これまた贅沢な時間だ。

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しかし、ものすごい蚊だ。こんなに多くの蚊、いままで見たことがない。

そして、払っても払っても関係なく飛んでくる。人間を怖がるという思考はなさそうだ。そもそも蚊に思考はあるのだろうか。

夜になっても夕焼けのまま。こんな時間にキャンプ場に現れる人もいる。バックカントリーからの帰りだろうか。

私たちの隣のテントサイトにも、スーツケースを引きずりながらインド系の大家族が現れた。

そろそろ寝る準備。とは言え、シャワーもなし。トイレ前の流し場で顔を洗って、歯を磨くだけ。それでも、気持ちがいい。

23時を過ぎてもまだ空には明るさが残る。

気温が下がり始めたためか雲も少なくなってきたので、雲に隠れていたデナリの頂上がキレイに見えるまで起きてようと思った。

テントの入り口のファスナーを下げ、寝袋に入りながら山を見ているうち、いつのまにか眠ってしまっていた。

(なお)

  

この日の走行距離=0マイル

総走行距離=465マイル

 

 

★私から一言★

写真で見ると米粒ほどにしか見えないグリズリーだけど、実際に肉眼で見ると、「こんなに離れているのにこんなに大きく見える」とその巨体さを実感するばかり。

翌日、彼らのテリトリーに分け入っていくのかと、ぶるっと身震いする思いだった。

 

デナリ山の素晴らしさは本文で彼がさんざん賛辞した通り。でも、「たいがい曇ってて、てっぺんまで見られる確率は20%」だなんて当時の私は知らず(あとで教えてもらった)、無邪気にキレイだキレイだと喜んでいた。

 

すごかったのは蚊。噂には聞いてはいたけれど、デナリ山を眺めてても食事をしてても歩いてても、追い払っても追い払っても襲ってくる。虫除けスプレーなんて気休めにもならない。養蜂家がしているような虫よけネットをしていないと、顔中刺されて真っ赤になっていたと思う。

「大げさだなぁ」と思ったけど、買ってきて本当によかった。写真で私が足にまでネットを”履いて”いたのをお気づきでしょうか?

前日のライリークリークでのキャンプは快適だったなぁ・・・。

(のん)

 

 

DAY4「デナリ最奥部でキャンプ」はおしまい。

アラスカDAY5前編 バックカントリーへ! - アメリカ横断2人旅へ続く。