アメリカ横断2人旅

めざせNY→LA完全走破!新婚旅行ドライブ挑戦記

アラスカDAY3 デナリ国立公園デビュー戦

 

デナリ国立公園へ

8時半起床、曇り。

デナリ国立公園へ出発の日。急いでホテルを出るも、まだ悩んでいた。そう、バックカントリー・キャンプを決行するかどうか。

 いまだに決めかねていて、「最後は天候次第だね」と先送りしていたけど、天気予報では数日間晴天が続くらいしい。

 

「もう、これは覚悟を決めろということに違いない」と2人で最終確認。となると、必要なのがクマ撃退用のベア―スプレー。

開店の9時をめざし、昨日のアウトドア用品店へ向かう。

ベアスプレーは47ドルと50ドルの2種類。うーん、やっぱり高い・・・・・・だけど、命に関わるものだけにお金をケチるわけにもいかない。

といいつつ、噴射距離は同じみたい。なので3ドル安いのを選んだ。

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ホテル近くのマーケットで目覚めのコーヒーを買い、出発準備OK。

バックカントリー受付の締め切りは15時半。デナリ国立公園まで5~6時間かかることもあるらしいので、先を急ぐ。

昨日の残りのサンドイッチ、ピザ、サラダをぱくつきながら、ひたすら北上。

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アンカレッジを抜けると、日差しが戻ってきた。

思っていたより道路も空いていて、すいすい進む。ワシラの街で初めての給油。

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ナビの到着予想時間が「15時40分」だったので少し焦っていたが、どうやら早めに着けそうだ。

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デナリ山とご対面

北上を続けると、突然目の前に白い大きな山が見えてきた。デナリ山だ!

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個人的には、子どもの頃に覚えた「マッキンリー山」の方がしっくりくる。

これまた個人的なことだが、私の母親は、この山で消息を絶った世界的登山家「植村直己」のファンだった。私の名前も植村さんの字にあやかってつけられたそうだ。

 

なので、いつの日か自分の目で見てみたいと思い続けてきた。遠くに小さくではあるが、初めてマッキンリー山の神々しい白い山容を目の当たりにし、息をのんだ。

マッキンリーの名称は2015年にオバマ大統領により、先住民の言葉で「偉大なもの」を意味する「デナリ山」へと改称されたばかり。

私も敬意を込め、今後はデナリ山と呼ぼう。一人、心に誓った。

 

道路が右に左にカーブするたび、デナリ山が見えたり見えなくなったり。それでも、どんどんデナリ山に近づいていく。

 

途中で路肩に車がたくさん停まり、大勢の人が三脚を出したりして川の方を見ている。

「もしやクマ?」と思い。車を止めて近寄ってみる。

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ん?何がいるんだろ・・・集まった人たちに聞いてみると、「あれあれ、あそこだよ」と指をさす。ん・・・・・・?

 

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おお!!

川でムース(ヘラジカ)が水浴びをしているではないか。

大きな野生動物が次々と登場するエリアに近づいてきた。写真を撮ろうとするも望遠レンズがないので苦戦。じっくり野生動物の観察を楽しみたい方は、望遠レンズは必需品です。

 

デナリ山を左手に眺めながら、国立公園に向けて北上。彼女の奮闘の運転の甲斐もあり、公園に13時半に到着。

ついにきた、デナリ国立公園だ!

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デナリ国立公園デビュー

まずは、本日宿泊のために予約していた「Reilly Creek」キャンプ事務所で受け付け。

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ついでに、同じくネット予約済みの「Wonder Lake」キャンプ場、さらに明日乗る予定のキャンパーバスのチェックインもしてくれた。

ワンダー・レイクはバックカントリーを断念したときのために、明日から2泊分を予約しておいた。念のために。

人気があり、当日空きがないことも多いと聞いていたためだ。

 

ライリー・クリークは、ループを描くように車が通れる道沿いに、テントサイトが点在している。ループも3種類。

どのテントサイトがいいか受付で聞くと、「小川が近くて、明日のバス停留所も近くて、駐車場までも近いのはカリブーループだ」とスタッフが教えてくれた。こういうときは聞くに限る。

ループ内を走りながらよさげなテント場所を探しに行くと、木立の中で静かそうなサイトを発見し、無事に確保。ポストに予約票を張りつけておく。

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バックカントリー挑戦へ

テントサイトも確保。いよいよバックカントリー許可証を取得しに、ビジターセンターへ向かう。

「レンジャーとの面談」と聞いていたので、アウトドア経験の質問など英語でうまくやりとりできるのか、少し気が重い。

というより、ベアースプレーまで買っておきながら、ここにきてバックカントリー・キャンプに尻込みする2人。

なので、ひとまずレンジャーと話をしてから最終決断することにした。

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ビジターセンターに入るとすぐに、バックカントリー受付所が見えた。ホワイトボードにはユニットの番号と、予約人数が書き込まれている。

予想していたよりもユニットには空きがあったので、まずは一安心。

壁に張られたバックカントリーマップを見ると気持ちもぐっと高まる。そして、緊張も高まる。

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意を決して、「バックカントリーがしたいんです!」とレンジャーに伝える。

大自然の厳しさを熟知するレンジャー。厳しい表情で・・・と思ったら予想外の気さくさだ。

レ:「OK、どんなバックカントリーがしたいの?」

私:「ワンダーレイクに前泊します。初心者向けの場所はありますか」

レ:「ユニット14、15はトレイルを歩き、川沿いに約3時間。タフではないよ」


これまた笑顔で答えてくれる。

もっと厳しくあれこれ突っ込まれると身構えていただけに、ちょっと拍子抜け。と同時に安心感もわいてくる。

 

私:「どちらがオススメですか?デナリ山をきれいに見たいんですが」

レ:「ほとんど同じかな。どちらも楽しめると思うよ!」

 

うーむ、これは私たちでもキャンプできそうな予感がする。

 

ひとまずバックカントリーの説明ビデオを見てきてと言われる。「見終わったら戻ってきて。一応15番は予約しておくね」とこれまた笑顔。

 

併設のシアターで、説明ビデオを鑑賞する。30分ほどらしい。暗くてよくわからなかったが、小さな子連れや高齢者カップルの姿もちらほら。

しかし、途中でいなくなった。恐らく、デナリの自然紹介ビデオか何かと勘違いしたのだろう。

 

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ビデオがスタート。

川を渡る方法、天候への注意など初歩的な情報から始まり、メインイベントはやはり動物への注意。もちろんクマだ。

テントの張り方、食事の場所、ベア―缶の使い方、トイレの後始末。すべてクマ対策。

 

対処方法も細かい。遠くに目撃したとき、近くでばったり遭遇したとき、威嚇されたとき・・・・・・などなど多岐にわたる。

特に驚いたのは、「アタックしてきたとき」。

「ブラックベアーに襲われたときは、すぐに反撃を」。ふむふむ。

「大声で叫び、石でも岩でも投げて、出来ることはなんでもやれ」と。なるほど、もう格闘する以外に生き残る道はないのだろう。

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しかし、驚愕したのはグリズリーに襲われたときだ。なんと、ブラックベアーとは対応が違うらしい。

「グリズリーに襲われたときは、地面に伏せて身体を守る」。ふむふむ。それでそれで?

「危害を加える相手じゃないとグリズリーが気づき、去ってくれるのを待つ」・・・・・・え、それって運まかせということ!?

 

「グリズリーがいよいよ嚙みついてきたら、反撃せよ」とも。そんな冷静に対応できるとはとても思えない。恐ろしい・・・ガクガク。

 

その他、オオカミ、ムースなど動物からどうやって身を守るかに主眼が置かれたビデオだが、アタマの中で想像してみると、さすがに怖くなってくる。

ビデオの最後には、こんなメッセージも。

「それでも、バックカントリーを恐れなくてもいいのです」。

 

あんなビデオを見せられたあとで、「恐れるな」と言われても・・・いやがおうにも緊張感が高まる。

 

 

許可証ゲット!

ビデオを見終わってから、改めて受付へ。

最後の最後までユニット14か15で迷っていたが、模型地図を見ていると、「デナリ山からの直線距離は15の方が近いよね?」ということで、2人の意見が一致。

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受付カウンターで、気合を入れて「15番にします!」と伝える。

渡された書類に必要事項を記入する。

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氏名、住所、連絡先はもとより、身長、体重、髪の毛の色。

さらには、ジャケット、パンツ、バックパック、テントの色まで記入するにいたっては、「これって、クマに食べられたときの身元確認のためだよね・・・」と2人で顔を見合わせる。

レンジャーのナイスガイ、チャドからついにベアー缶を手渡される。

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そして、チャドによる最終レクチャー。

一つ、バスが見える場所でテントを張らない。

「2人にバスが見えるということは、バスからも2人が見えるから。せっかくの大自然、お互い台無しになっちゃうからね」

 

一つ、三角形をつくるべし。

「テント、調理場、ベアー缶はそれぞれ100ヤード以上距離をとって三角形にすること。クマが来ないようにね」

 

一つ、トイレのゴミも持ち帰れ。

「トイレは穴を掘り、紙は土に埋めずに持ち帰ること。動物が掘り返しちゃうと、大自然が汚れてしまうからね」などなど。

 

最後にチャドがこう付け加えた。

「ユニットで何かあっても、すぐに探しには行けないんだ。なんせ広いからね。それじゃ、気をつけて。Enjoy!」。

こんな不吉なことを爽やかに告げるチャドよ。ますます不安になるではないか・・・。

 

とは言え、これでバックカントリーの受け付けはすべて終了。計1時間ぐらい。

予想していたよりも、あっさり終わった印象だ。ひとまず、無事にハードルを越えたことを喜び合う。

ビジターセンターにいたグリズリー君にも、「明日からお世話になります」とあいさつを入れておく。ペコリ。

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ベア―缶を小脇に抱え、軽い足取りでビジターセンターを出る。心なしか、なんだか少し強くなった気さえする。

アーバスの観光客を見ていると、「我々はバックカントリーをやるんだぞ!どうだ!!」という優越感さえ覚える。

しかし、この優越感は後に、私たちがいかにうぬぼれていたかを存分に思い知ることになる前ぶれでしかなかったのだが・・・。

ひとまず、ウキウキ気分でキャンプ場に戻る。

 

とその前に、国立公園の年間パスを購入したので、キャンパーバスに含まれていたデナリ入園料の払い戻しのためバスデポに立ち寄った。

カウンターですばやく20ドルを払い戻しもらう。

さらに、ワンダーレイク2泊分のうち、バックカントリー挑戦のため不要になる1泊分を戻してもらう。アメリカは、こういう払い戻しが気軽に出来るので楽ちんだ。

 

 

テント設営

ひと仕事終え、ようやくテントサイトに戻る。

許可証の取得に気を揉んでいたので、ほっと一息。早速テントを組み立てる。

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彼女の姉一家から借り受けた2人用テント。コンパクトで持ち運びも便利。2人で協力し、あっという間に設営完了!

 

アメリカの国立公園のキャンプ場は、隣のテントサイトとの距離も十分。木立で隔てられ、プライバシーも保たれている。本当に快適だ。

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テントでのんびり・・・と行きたいところだが、もったいないほどいい天気。散歩に出かけることにする。

ライリー・クリークというキャンプ場の名前だけに、近くにはクリーク(小川)が流れる。

 1時間ほどハイキングをした。

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きれいな小川に美しい山々。バックカントリーと違い、ここは国立公園の入り口にも近く、クマ襲来の心配の少ない。

まぁ、あくまで「少ない」というだけなのだが、のんびり2人きりで自然を満喫。

 

 

長い夜

夏のアラスカのキャンプでうれしいのは、夜の長さ。いつまでも続く夕暮れの下、ディナーの準備。

明日からは過酷な環境でのキャンプが続くので、「今夜は豪華に!」。米を炊き、野菜とチキンをたっぷり投入したカレーライス。もちろんビール付き。

おなかもいっぱいになったところで、寝る準備。

 

準備編でもお伝えした通り、このキャンプ場にはシャワー設備がある。

キャンプ受付場でお金を払うと、コインのようなものをもらえる。クマの形なのかな?ちょっと可愛い。

これをシャワーブースにあるレバーの枠の中に投入。

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すると、熱いお湯がたっぷりのシャワータイム!

シャワーブースはお世辞にも広いとは言えないが、明日から2泊はシャワーなしの生活なので、文句は言えない。

足もとが水浸しになるので、サンダルで行くことをおすすめします。

 

そして!お風呂上がりは、やっぱりビール!! なんだか飲んでばかりだけど。

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売店には飲み物の種類も多く、アイスやスナック、蚊取り線香コンタクトレンズの保存液まで各種雑貨を取り扱っていた。

悩んだあげく、地ビールを2本購入。

 

22時近くになってもまだ明るい。夕暮れ風に吹かれながら飲むビールの旨さよ・・・くー、たまらん。

明日からはしばらくビールともお別れなので、ぐびぐび飲み続けます。

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ちなみに、売店やシャワーがある受付には多くの家族連れが集い、思い思いの時間を過ごしていた。

携帯電話もつながる「デナリ最後の文化圏」だけに、PCを持ち出して調べ物をする若者も。私たちも携帯充電をしつつ、しばし夕涼み。

くどいですが、この明るさでまだ22時なのです。

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明日に備えて就寝

テントまでとぼとぼ戻る。そろそろ寝る時間だが、明るくてとても眠る気にもならない。

「明日からの作戦会議!」ということで、改めて火を起こしてお湯を沸かし、おやすみ前のコーヒータイム。

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朝食用のおにぎりもつくり、準備万端!

明日からのデナリ最深部への旅を思い描きながら、バックカントリー用にレンジャーからもらった地図を広げ、念入りにシミュレーションも繰り返す。

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デナリ国立公園での初めてのキャンプということで、どうにも興奮がおさまらず、なかなか眠気も起きない。が、明日に備えてテントに入る。

しかし、なんて楽しいんだろう。「こんなに快適なら、何泊してもいいよね」なんてことを言い合って、寝袋に入る。

すべてがうまく行きすぎている気がする・・・そんな私たちのデナリ最初の夜が静かに過ぎていった。

(なお)

  

この日の走行距離=240マイル

総走行距離=465マイル

 

 

★私から一言★

ついにデナリまで来てしまった!

最後の最後までバックカントリーをするかどうか悩んでいたけれど、青空に映えるデナリ山があまりにキレイだったこと、そして、手つかずの原野でのキャンプという魅力には抗えず、私たちはいよいよクマ缶とベアスプレーを“武器”に旅立つことになった。

だって、こんな機会、この先もうないかもしれない!女は度胸なのである。

そういえば、私はスキューバダイビングもするのだけど、「海でサメに遭遇した時」の注意をダイビングショップの人に教えてもらったことがある。曰く、「慌てず焦らず、鼻っ柱を思い切り殴りつけよ」。え、咬まれた状態で・・・?

「グリズリーに遭遇したら」のビデオを見ているとき、私の脳裏をよぎったのはものすごくいい笑顔で親指を立てる、沖縄のベテランダイバーの顔だった。

(のん)

 

 

DAY3「デナリ国立公園デビュー戦」はおしまい。

アラスカDAY4 デナリ最奥部でキャンプ - アメリカ横断2人旅へ続く。