アラスカDAY2 氷河をClimb On!
アラスカ初ドライブ
8時半起床、快晴。
いつ夜が明けたのだろうか。なんとも不思議な気持ちで朝を迎えた。
この日のミッションは明日からのキャンプの準備のため、寝袋やらベアスプレーやら必要なものを買いそろえること。そして、マタヌスカ氷河トレッキングへの挑戦だ。
ホテルを出発してアンカレッジの中心部へ。朝も早いため人もまばら。コーヒーショップで朝食用のクロワッサンサンドとコーヒーを買う。
まずは、アウトドア用品店「Alaska Mountain Hiking」へ。
氷河を歩くために、クランポン(アイゼン)をレンタルする。一日10ドル。女性店員が装着の仕方も丁寧に教えてくれたので安心。
アンカレッジから北上。
途中、Walmartによってキャンプ用に買い出し。
寝袋は2人分用意してきているけれど、デナリがどのぐらい冷え込むのか分からず、冬用の分厚い寝袋をチェックする。
実はポートランドにいる時からネットでウォルマートの寝袋をチェックしていたのだが、寒冷地用はなんせデカい。かさばるから、必要なら現地で買おうと考えていた。(だってデカすぎて絶対帰国の荷物に入らないし・・・)。
ただ、肌感覚として今のところアラスカはさほど寒くない。デナリと言っても標高の高い山に登るわけではないし、「大丈夫じゃない?」が私の結論だった。
彼はまだ悩んでいたが(→以前、5月の上高地のキャンプで凍えて眠れなかったトラウマだろう)、「絶対使わないよ」と押し切る!
ランチ用にサンドイッチも調達。
キャンプ必需品の珈琲豆も買いたかったけど、ウォルマートのはアメリカンサイズすぎたので断念。
北上するハイウェイから進路を東へ。1号線をひた走り、早速マタヌスカ川の速い流れを眺めながらドライブ。
氷河の影響で水が濁った様子や、川幅が広がった景色など、なかなか日本では見られない景色ばかり。峰に雪をいただいた山々を楽しみつつ、車を走らせる。
今回の旅の相棒も美しい景色に嬉しそう。
山裾は緑に覆われていても、標高があがるとゴツゴツした山肌が露出する。地層のように色合いが変わる山々の姿は、ずっと見ていても飽きないくらい不思議。
同じアメリカとは言え、アラスカまで来ると風景が変わるものだ。
おかげで途中、何度も寄り道してしまった。空気もすがすがしくて気持ちがいい。
いざ氷河へ
13時、約2時間のドライブでマタヌスカ氷河の分岐ポイントを発見。ナビに従って運転してきたが、注意深く見ていないと見落としてしまいそう。
到着。ここは国や州が運営する公園ではなく、一部私有地で民間人が経営しているとのこと。駐車ゲートを抜けてビジターセンターに向かう。
私有地を通らせてもらうということで、入場料は1人30ドル。
いい商売だなぁと思いつつ、仕方ないから払う。
「事故に遭っても自己責任です」という誓約書にサイン。アメリカらしい。
ビジターセンターを出ると、遠くに氷河が見える!
ついにやってきた。テンションが上がる。
なんだか急に青空まで広がってきた。
さらにテンションが上がる。いざ氷河へ向けて歩く!
観光地でもあるので歩きやすく整備はしているものの、氷河を間近に見るまではパッと見、泥にしか見えないびしょびしょ地帯を延々歩く。
ただ、泥に見えるこの地面も、よく見ると氷が泥の下でキラキラしており、氷河の一部なのだ。残念ながら写真にはうまく撮れなかったけれど・・・(どう撮ってもただの泥にしか見えない)。
氷河の上を歩く予定がなくても、近くまで行きたいなら長靴か厚底の靴の方がよさそうだ。
ご高齢のハイカーさんたちもたくさん。クランポンを見て「上まで登るの?」なんて聞かれつつ、ずんずん行く。
遠くから眺めても美しい氷河だったが、泥が混じった雪の塊のように見えていたものが、近づけば近づくほどその白さが輝いてくる。
いよいよ地表も氷で覆われはじめ、ワクワクする気持ちを落ち着かせるようにベンチでクランポンを装着する。
いざClimb on!
そこは別世界
クランポンのおかげで氷河の上も歩ける。最初はおっかなびっくりだったけれど、足裏にザクザクとあたる氷の感覚が楽しい! 少し散歩したら帰るつもりが、先へ先へと足が進んでしまった。
せっかくなのでと、少し小高い氷河の山も登ることにすると、景色はさらに変化していく。
白く輝く氷河に、青みが増してきて、辺りが神秘的な世界にみえてくる。本当にきれい。裸眼でずっと見てると、青と白のまぶしさで目がやられそうなほどだ。
ちなみに、気温は低いものの、この日は快晴。太陽にあたっているとポカポカあたたかい。歩き続けて体温も上がり、彼はTシャツではしゃいでいる。
小高い氷河の丘を越えていくと、景色はさらにどんどん変わっていく。
氷河の上を少し散歩するだけでも大満足と考えていたが、ここまで来たらドンドン先に行ってみたい気になる。
「氷河の上から滑落したらどうしよう」「クレバス(裂け目)に落ちたら・・・」と来る前は心配もあったけど、しっかり装備して注意しながら進めば、私のようなクランポンは初めてというビギナーでも大丈夫。
後ろを振り返ると、小さな子どもの手を引いたお母さんの姿が。しかも背中に赤ちゃん。アメリカのお父さんお母さんは本当にアウトドア派だ。
どうすれば子どもを連れながらでも楽しめるのか、諦めるのではなく知恵を絞っているように思う。
さらに高みをめざす。気分は完全にアイスクライマー。
ときどき現れるクレバスにはやっぱりドキドキするけれど、のぞき込んで見るとその割れ目は吸い込まれそうなほど深く青い。キューブリックかタルコフスキーの映画をなぜか思い出す。
氷河の丘をいくつか越えると、水色、いや青色に輝く氷河の池を発見。もう、言葉が出ないほど美しい。
一方で、世俗的な欲にまみれて行動する人も・・・。
私が青い池に心を奪われている間、彼は氷を採取していた。昔からやってみたいと思っていた「ウイスキー・オン・ザ・氷河ロック」のため、少しだけ持って帰りたいという。
タンブラーに入れようと、なかなか小さくならない氷を割ろうとしていた。
彼が氷と格闘している間、疲れを癒やすべく私は大きな岩に座ってサンドイッチとコーヒーで昼食(この岩はいったいどこから来たのか?)。
ほとんどの観光客は氷河の手前で散策を楽しみ、登った私たちは少数派だったけど、さらに先へと進むいかにもハイカー風のお兄さんもいた。この氷河はさらに何キロも続いているという。
かつての姿に比べれば、温暖化の影響かずいぶん小さくなったらしいマタヌスカ氷河。いつか溶けてなくなってしまう日も来るんだろうか。
そうすると入場料で商売しているビジターセンターのあの一家はどうなるんだろう・・・という卑近な想像はさておき、あの美しい青い池が地球上から消えてしまうのは、あまりにも寂しい。
言ってしまえばただの水たまりなのに、こんなにも心を打つのはどうしてなんだろう。
1時間ほどで帰るつもりが、気づけば3時間。後ろ髪を引かれる思いで、帰路につく。
帰り道、氷河から流れる小川で顔を洗ってみた。冷たくて冷たくてしばらくじんじんした。
街へ戻ってキャンプの準備
というわけでアンカレッジへ戻る。帰りは一部区間で工事渋滞が発生。
クランポンを一日レンタルで借りたので、お店が閉まる19時までに返却したかったのだが、間に合うかどうか。
大急ぎで車を走らせ、お店に着いたのは19時5分。ドアにはもうカギがかかっていて開かない・・・。
ダメ元でドアを叩いてみると、店員さんが快く迎えてくれた。笑顔で「どうでした?楽しめました?」と嫌な顔ひとつせず、返却に成功。ホッ。
すぐ近くにあったキャンプ用品店「REI」で明日からのキャンプ生活に備えて最後の買い出し。ガスやらフリーズドライなどを買う。
クマ除けのベアスプレーを買おうと思ったが、45ドルと意外に高い。バックカントリーキャンプには必須だけど、まだバックカントリーをやるかどうか決めかねていたので迷った末に買うのをやめた。もっと安いのが売っているかも、なんて考えながら。
さらにおなじみのスーパーFred Meyerに寄って食料の買い込み。
今回はなんせキャンプが3泊も続く。作りやすいもの、かつ飽きない献立で・・・とあれこれ悩んで食材を選ぶ。
面倒くさいからほとんどをキャンプ用品店で売ってるフリーズドライにしたいけど、彼はどうにもそれは嫌みたい。結構おいしそうなんだけどな。
一日の〆はやっぱりビール
買い出し後は一旦ホテルに戻り、荷物を整理してから地ビールを飲みにメインストリートまで歩く。
行ったのは「49th State Brewing」。ルーフトップの席に案内してもらえたので、景色と夕日が綺麗に見える。
夕日とは言え、すでに22時半。まだまだ明るいので「夕方」と呼ぶにはなんとも違和感。ジャーナリズムを勉強していたというご機嫌の女性店員さんのオススメを聞き、美味しいクラフトビールで乾杯。
午前0時近くにホテルに戻るが、まだ明るい。
彼は早速、氷河から持ち帰った氷でウイスキーを飲んでいる。満足そう。
ホテルの地下で洗濯、乾燥機で計4ドル。洗えるときに洗っておきたいので助かる。
洗濯を終え、荷物の整理をしたらまたまた午前2時半。明日からのキャンプに備えて急いで寝ることにするが、窓の外はまだ薄青い色を残していた。
(のん)
この日の走行距離=220マイル
総走行距離=225マイル
★俺から一言★
氷河を一度見たい。できれば歩いてみたい。
こんな夢をずっと持っていただけに、この日のドライブは大切な思い出になった。アラスカにはいくつもの氷河があり、観光名所の国立公園や氷河クルーズもある。
だけど、こうして自由自在に(あくまで自己責任だけど・・・)歩き回れる氷河も少ないのではないだろうか。
そして、もし行くなら絶対にクランポンをレンタルしていくことを強く強くおすすめします。恐らく、氷河をただ見るのと、自分の足とで歩くのとの間には質的に決定的な違いがあるはず。
カップルでもファミリーでも、そしてもちろん一人でも、氷河ハイキングは是非一度体験を!
(なお)
DAY2「氷河をClimb On!」はおしまい。
アラスカDAY3 デナリ国立公園デビュー戦 - アメリカ横断2人旅へ続く。