アメリカ横断2人旅

めざせNY→LA完全走破!新婚旅行ドライブ挑戦記

アラスカDAY9 さよならアラスカ

 

最終日もマイペース

雨。8時過ぎに起床。しとしとと一晩中降っていたようだ。

テント生活は楽しいと書いたものの、やはり雨のキャンプはつらい。片付けが少しおっくうだが、急いで撤収。屋根付きの食事スペースがあったので移動。

朝食は最後まで残ったラーメン。こんなに毎日ラーメンばかりなのに、飽きないのが不思議。

コーヒーを淹れてタンブラーにたっぷり注ぎ、のんびりと10時にキャンプ場を出発。

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あいにくの雨なので予定も狂いそうだが、帰りのフライトは深夜なので時間は十分。

まず向かったのは、100マイル(約160キロ)ほど離れた、炭鉱跡のゴーストタウン「Independence Mine」だ。

毎度ゴーストタウンに魅せられ、数々の失敗をしてきた私たち。なぜか、「ゴーストタウン」の響きにはあらがえない。

 

 

静寂の世界

雨が降ったりやんだりの中、車を走らせる。

ゴーストタウンを改めてナビで設定すると、20マイルほど迂回した幹線道路を走るよう指示された。

「20マイルも迂回できるか!」ということで、無理やり最短ルートを設定。Willowという街の手前で脇道に入った。

ところが、片側1車線の道路はあっというまに未舗装の道に早変わり。

少し焦ったが、ダルトンハイウェイを走破した私たちにとっては快適な道だ。ゴトゴト揺られながら、きれいな渓流沿いの細道を走り続けると、いつしか標高がグングンと上がってきた。

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見慣れたはずのアラスカの景色だが、標高が高いせいか不思議な世界に迷い込んだ気になる。心細くなるような道をひっそりと走ってきたと思ったら、急に開けた場所に出た。

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車がたくさん停まり、子連れの姿も多い。トレイルがいくつも整備され、思い思いにハイキングを楽しんでいる様子。思いきって歩いてみた。

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小高い山に登り、万年雪が溶け込む池などを眺める。気温が下がっているが、風が心地よい。

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やっと本物のゴーストタウン

車に戻り、少し走ると炭鉱跡についた。

ゴーストタウンと言っても、今は州政府が公園として整備しているようで、駐車料金として5ドル払って入場。

1950年に閉山したというアメリカで2番目に大きかった金鉱山。ビジターハウスやトイレなども完備しているが、行き過ぎたテーマパーク感はなく、昔の建物を再利用したり、崩れゆく建物はそのまま放置したりと雰囲気はよい。

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訪れる人もまばらで、静かな時間を楽しむ。ようやくゴーストタウンらしいゴーストタウンにめぐり会えたことに満足。1時間ほどぶらぶら散策し、ドライブを再開。

 

 

一気に南下、アラスカ湾へ

200マイル(約320キロ)南のキーナイ・フィヨルド国立公園内にある、イグジット氷河に向かう。

昨日ハイキングする予定だったが、雨のため断念した場所だ。きょうも雨のため長時間のハイキングは無理そう。それでも、少し歩けば氷河も見えると聞きチャレンジすることに。

時刻は15時半。今夜のフライトも迫るので急ぐ。

1週間ぶりのアンカレッジに到着。デナリ、フェアバンクスから来た私たちにとっては、久しぶりの「大都会」。これまた1週間ぶりの渋滞にも遭遇し、なんとか市街地を通過。

 

アンカレッジを抜けると、道路はアラスカ湾に沿って進む。

氷河にえぐられたフィヨルドの眺めも壮観。北欧に行ったことがないので比べられないが、地理の教科書の写真にあったような、いかにも「フィヨルド」な地形。

途中、湾内にクジラが泳いでいるのが見えるという場所を見つけ、探してみる。

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気持ちよくドライブを続け、湾内最深部のポーテージという地域を通過し、再び内陸へ。

美しいフィヨルドだったが、恐ろしい歴史も持つ。

1964年、アラスカを襲った巨大地震マグニチュードは9.2。記録上では北米大陸で最大の地震だったという。

アラスカ各地で計139人の死者を出したが、湾内に入り込んだ津波はポーテージの街を壊滅させた。多くの街で復興が進んだが、ポーテージだけは打ち捨てられることになったのだという。

なるほど、宅地などを造成するにの理想的な平地が広がっているのに、いまは手つかずで、ただ草原が広がっている理由が理解できた。

 

 

地球温暖を実感

雨が強まる中、約3時間ほど走ってイグジット氷河のビジターセンターに到着。思ったよりも時間がかかってしまった。

時刻は18時半。フライトは深夜0時。帰りの時間を考えれば、のんびりハイキングをする時間はなさそうだ。

氷河を見下ろすトレイルが整備されていると聞いてきたが、トレイルは往復で5時間ほどかかる。雨も本降りになってきたので、どのみち長時間ハイキングは見送る。

けど、せっかくなので氷河の近くまで歩いてみることにした。

 

説明によると、ここの氷河は年々やせ細り、後退しているとのこと。地球温暖化の影響なのだという。

駐車場からのトレイルには、氷河の先端が存在していた時期を西暦で示す看板が立てられていた。

「1917年」「1926年」「1951年」。なるほど、現在は氷河の痕跡すらないが、昔はこの辺りにまでせり出していたのだろう。

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わずか1世紀も経たないうちに、鬱蒼とした木々が生い茂り、ずいぶんと氷河が消えたことになる。

結局、氷河が見える場所までは早歩きで約10分。昔のひとは駐車場の辺りから氷河が見えていたはずだが、100年後の人はさらに長距離を歩くことになるのかもしれない。

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氷河から流れ出る河川敷にも降りてみた。

氷河特有の細かい泥の川が勢いよく流れている。どうしてもバックカントリーのときの恐怖感がフラッシュバックし、足がこわばってしまった。

 

 

名残惜しいが空港へ

アラスカ鉄道の南端の終着駅があるスワードの街で最後の給油をし、アンカレッジへ戻る。雨はいよいよ土砂降りになってきた。運転はしにくいものの、私たちにとっては恵みの雨だ。

というのも、2日前にダルトンハイウェイを激走して以来、愛車はすっかり砂ぼこりで汚れていた。

ガソリンスタンドで給油するたびに、備え付けのブラシと洗剤で念入りに洗っていたのだが、ダルトンの汚れは相当に頑固。すっきりとキレイになることはなく、最終日を迎えていたのだ。

レンタカー返却時に、「お客さん、一つうかがいますが、この汚れ。規約違反を承知で、まさかダルトンハイウェイに行ってませんよね?」と尋問されることを恐れ、キレイに洗車してから返したいと思っていた。

 

それが、空港に向かい始めた瞬間に土砂降り。

アンカレッジに近づくほど、雨はまさにスコールのように上からも横からも激しくたたきつけてきた。

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「ナイス、雨!グッドジョブだ。もっと強く!!」と願いながら、市街地へ入り、空港へと向かう道路標識を頼りにラストスパート。

 

22時、空港到着。

車から降りてびっくり。まさに「驚きのキレイさ!」だった。見違えるようにピカピカの愛車から、荷物を下ろす。

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アメリカのレンタカーは日本とは違い、返却時にいちいち係員が点検などしないケースが多い。「返却レーンに駐車したら、鍵をフロントまで」という案内にしたがい、ターミナル内へ。

おなじみのHertz。カウンターにカギを返すと、無事に旅を終えられた安堵感が広がる。

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9日間のドライブだったが、デナリ国立公園の奥地を含め計4日間のキャンプをしたり、泥の川をハラハラしながら渡ったり、クマにおびえながら森の中をさまよったりと走行距離自体は多くはなかった。

でも、ありがとう、ヤリス。今回も頼もしい相棒と旅ができたよ。

クマのイラストがキュートな標識に改めてお礼の言葉をかけ、搭乗ゲートへ向かう。

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ここまで来れば、あとは家路へつくだけ。

大きなトラブルもなく、元気にターミナルを歩いていることは、当たり前のようでもあるが幸運なことでもある。特にバックカントリーキャンプのような体験を終えただけに、一層そう感じるようになった。

キャンプとドライブの成功を祝し、搭乗ゲート横のレストランで地ビールの乾杯。サーモンステーキのハンバーグをほおばりながら、旅の思い出を振り返った。

 

深夜24時、空に明るさを残すなか、飛行機はようやくアラスカの大地を静かに飛び立った。

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ここにアラスカ縦断ドライブは幕を閉じるが、さらなるアメリカ横断ドライブに向けて2人の熱は高まるばかりだった。

(なお)

  

この日の走行距離=445マイル

総走行距離=1760マイル

 

 

★私から一言★

告白すると、ゴーストタウン好きは私です。

昔からなぜかB級観光スポットに心惹かれてしまうのですが、広大なアメリカの大地にはゴーストタウンがいくつも点在しており、行き当たりばったりの車の旅。現地で情報を見かけるたびに大して興味もなさそうな彼を無理やり誘ってしまいます。

ただ、さすがアメリカというか、うち捨てられた街のはずなのに、駐車場や散策ルートが整備されている時点で「もう公園じゃん」という思いは拭えず・・・。

いつか本物のゴーストタウンに巡り合いたいと(性懲りもなく)願っています。

 

オーロラなんてものは完全に無視した私たちのアラスカ旅行でしたが、クマの足跡にびびったり氷河の氷でお酒を飲んだり、植村直己の足跡をたどったり、晴天のデナリにも恵まれ、振り返ってみれば最高の旅でした!

アラスカ再訪を誓って、ここに筆を置きます。次回もバックカントリーキャンプをするかどうかはさておきですが・・・笑。

(のん)

 

 

「アラスカ縦断」はこれでおしまい。