アメリカ横断2人旅

めざせNY→LA完全走破!新婚旅行ドライブ挑戦記

DAY7 憧れのモニュメントバレー

 

西部劇の舞台へ

4月9日、7時半起床。薄曇り。

ホテルの可愛らしいレストランで朝食ビッフェ。メニューも豊富なので、タコスやワッフルを焼き、きょうも「ランチ用に」とナプキンに包んでこっそり持ち出す。だんだん日課になってきた。

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アメリカの薄味コーヒーに食傷気味だったので、スタバのコーヒーがおいしく感じる。こちらもドライブ用に2杯持ち出す。

この日の目標は、先住民ナバホ族居留地でもあるユタ州のモニュメントバレー。400マイル(=約640キロ)ほどしかないが、途中から下道を走るので余裕を持って出発したいところ。

加えて、バレー内の車乗り入れ可能なドライブコースは夕方までらしいので、なおさら早めに到着したい。

「さぁ、急ぐぞ!」と車を走らせたものの、数百メートルも走らないうちにサンタフェの街なかに「TRADER JOE’S」を発見。「これは行くしかないでしょ」と2人の意見が一致。急いでいるというのに・・・。

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彼女はショッピングバッグやらナッツを、私は地ビールやら地元ウイスキーを買い込む。

朝のドライブの定番曲、ヨハン・シュトラウス2世の「美しく青きドナウ」をかけながら、彼女の運転でスタート。なんだかんだで、気づけばもう9時を過ぎてしまった。

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またケンカ・・・!?

州間高速道路I-25を走り、ニューメキシコ州最大の都市アルバカーキをかすめ、州道に下りてから北西へ向かう。見渡す限り荒涼とした岩石地帯。ところどころ大きな岩山が現れる。

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帆船のマストのような巨岩が遠くに見える。「写真を撮れるような場所に車を・・・」という私のリクエストにもかかわらず、いつしか岩は後方に過ぎ去る。ちょっと不満な私と、私の不満に不満そうな彼女。

おぉ、またしても運転をめぐってケンカか・・・いやいや、2人きりのドライブももう6日目。簡単にケンカはしません。目的地へ急ぐ!

 

 

荒野を走る

岩山の数が増え、大地の色がだんだんと赤色を帯び始めた。アリゾナ州に突入。

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丘が現れるたびにアップダウンを繰り返しつつ、直線道路をひたすら飛ばす。急いでいるので何台もの車を追い抜く。

ところで、アメリカの道路でも当然、警察がスピード違反を取り締まっている。むしろ日本より多く見かけるぐらい。砂漠地帯の路肩にじっと車を停めて獲物を待ち構えているのだ。

下の写真のように、捕まっている様子もよく見かける。

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車の流れに乗らず、猛スピードで走り去る車なんかは捕まる例が多そう。我々も地平線の遥かかなたに黒い影が見えたときは、「もしや、パトカーでは!?」と細心の注意で運転した。飛ばさず、安全運転が一番なのは当然なんですが。

  

 

アメリカの景色はつまらない?

地平線を追いかけながらのドライブが続く。

アメリカに行く前、ネットの書き込みを読んでいると、「アメリカは同じような景色ばかりで運転がつまらない」なんて書き込みもあったけれど、いやいや、これが全然飽きないのだ。

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眠くなることはときどきあるけれど、雄大な景色に見とれっぱなし。もちろん、初めての横断ドライブだから飽きないということもあるんだろうけど、何もない景色こそアメリカ横断の見どころなのかもしれない。

 

 

フォレストはどこ?

遠くに巨岩が見えはじめ、モニュメントバレーが近づきつつあることがわかる。急ぎながらも、私たちが探していたのが映画「フォレスト・ガンプ」でフォレストが走るのをやめた場所。

手作りした「旅のしおり」の写真を参考に、地平線に見える岩山を見比べて撮影ポイントを探す。でも、どの道路も真っ直ぐで赤い岩山ばかり、何だかそれっぽく見えてくる。

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しかし、よーく見ると映画の岩山とは微妙に形が違うような気も。とりあえず写真は撮ったけど、時間がないので先を急ぐ。

 

 

モニュメントバレー到着

ユタ州突入。ついにモニュメントバレーにやってきた。

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バレーは気の遠くなるほどの時間をかけながら風や雨で浸食された奇岩が点在する、いかにも「アメリカの荒野」。数々の西部劇でおなじみの場所なのだ。

モニュメントバレーの観光センターに到着したのは16時ごろ。園内ドライブは何とか間に合いそう。「夕焼けを楽しむツアーがあるはず」と彼女が言うので、センター内をうろうろ探すがわからない。

困っていると、駐車場の端っこにツアー募集の小屋があった。腕っ節の強そうなお父さんが立っている。どうやらナバホ族のようだ。ツアーのことを聞いてみると、「夕焼けを見るなら、ジープより乗馬がいい」と力説する。

馬が大好きな彼女の目が輝く。料金は2時間で1人90ドル。ジープの夕焼けツアーは1時間で1人35ドル。うーむ、これは悩ましい。

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2人で協議を重ねた結果、「こんな機会はなかなかない。乗ろう!」。エンパイア・ステートビルのときといい、毎度こうした結論になるのは自明。財布のヒモが緩くなるのも新婚旅行ならではなのだ。

お父さんに乗馬ツアーに決めたと告げると、「君たちはラッキーだ。We have good horses!」と力強く握手してきた。

 

 

カローラで疾走

乗馬ツアー開始は18時。それまで1時間半ほどあるので、前金の15ドルだけ渡して後で待ち合わせをすることに。

早速、愛車カローラでバレー内をドライブする。岩山を間近に見ながら、未舗装の道を走る。道路はでこぼこ。雨が降るとぬかるむので「4WD以外は注意」との説明があったが、幸い晴れているので私たちでも余裕で走れる。

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バスでやって来た観光客は、大型車に乗り合わせるツアーで回っている様子。こんなときレンタカーで来ると、時間を気にせず走り回れる自由さを実感する。夕暮れが迫ると、ツアー客の大半が帰りじたくを始め、バレー内はほぼ貸し切り状態になった。

いくつもの巨岩を間近に見上げては、「すごいねぇ」の連発。アメリカに来ると本当に「すごいね」「きれいだね」以外の言葉が出なくなるのです。

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ジョン・フォードが愛した西部劇でおなじみの撮影ポイントも堪能。車を走らせては気になった場所に駐車、散策を繰り返してドライブを楽しむ。

 

未舗装の狭い道なので、運転には注意が必要。ついつい心配になって、「あ、そこ危ないよ」とか「そっち通った方がいいよ」と彼女の運転に口をはさんだせいか、いつしか彼女が一言も発しなくなった。

思えば、昼間にも岩山の撮影をめぐってあれこれ注文をつけたことも積み重なっていたのだろう。突然、彼女が悲しそうな顔に。目に涙をためているではないか!

おぉ、テキサス以来2度目のケンカ。しかも、原因はまた車の運転!!

圧倒的な壮大さで迫ってくるモニュメントバレーの巨岩の真下で彼女に平謝り。ケンカは本当にいけません。

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案の定、こんなときもテキサス出身の “彼女” は律義に無言を貫いていたのだった。

 

 

ナバホの地

ドライブを終え、乗馬ツアーの待ち合わせ場所へ向かう。ところが小屋はすでに閉まっていて無人。思えば電話番号を聞くのも忘れていた。ここで待っていて大丈夫なのだろうか。

「もしかして騙されたか!?」(15ドルしか払ってないけど・・・)と疑心暗鬼になっていたら、ナバホの人が現れて「先行するピックアップトラックに着いていけ」との指示。

てっきり、いまドライブしたばかりのバレー内で乗馬するのかと思っていたら、どうやら遠くまで行くようだ。

車を走らせ10分過ぎ、15分過ぎてもまだ到着する様子はない。「一体どこまで行くんだろうか」と不安になってきた私たち。

心細く荒野を走り続けていると、ピックアップが突然脇道にそれ、フェンスで閉ざされたゲート前に停車した。

一般人立ち入り禁止のナバホ族居留地なのだろうか。ゲートを抜け、さらに走るが目的地に着く気配はない。それどころか馬の姿さえ見えない。

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「ひとけのないところへ連れて行かれ、身ぐるみはがされるパターンか・・・」と身構えていたら、やっと家らしき建物と馬が見えた!

先行していたピックアップから柔和な笑顔のナバホ青年が降りてきた。手早く馬の準備を始めてくれる。

柵で囲われた中でのんびり草をはむ馬が5頭ほど。建物の周りには大きな黒いシェパードが歩き回り、人懐こく顔をこすりつけてくる。子犬たちも元気に駆け回り、なんだかとても牧歌的。

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ナバホ青年の名前はジェイク。手際よく馬具を着ける姿は頼もしく、てっきり年上だと思っていたが、生い立ちなどを聞くとまだ20代だった。

 

 

馬に揺られて

私が乗るのは白い馬。少しお年を召しているようだが、体は大きく、何事にも動じないのんびりとした顔つき。彼女の茶色の馬は、目つきが「どうだ!」と言わんばかりの元気な若い馬だ。

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彼女は乗馬経験があるものの、私は初めて。ジェイクの手助けで馬にまたがると、予想以上に視界が高い。しかも、ジェイクが手綱を引いてくれるのかと思っていたら、「3頭立てでツアーに出かけますよ」とのこと。簡単な手綱さばきを教えてもらっただけで、もう出発の時間。

「こんな素人が2時間も山道を行けるのだろうか」と不安になるが、さすが馬は賢い。ジェイクの馬を先頭に、正確に後ろをついていく。夕陽に照らされた巨岩を見ながら、モニュメントバレーの地を馬で行く。

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登ったり、下ったり、足の踏み場がない岩場でも、馬たちは足元を見ることもなく器用に歩く。本当に頼もしい。体を上下に大きく揺らしながらの駆け足は、気分も爽快。

日が沈みかけると少し肌寒くはなるものの、夕焼けに照らされたテーブル状の巨岩「メサ」は息をのむような美しさ。周囲には走り回る車もなく、私たち3人だけの世界。馬の歩みを止めると、静寂だけが広がる。

ときどき心配そうに我々を振り返る心優しいジェイク。物静かな男だけど、家族のことなどぽつりぽつり話してくれる。2時間たっぷりの乗馬体験だった。

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この旅では「迷ったらとりあえずやってみよう!」が口癖だったけれど、この乗馬ツアーは本当にやってよかった。

 

 

荒野に陽が沈み

赤ちゃんを抱いた奥さんも紹介してもらい、ジェイク一家に見送られてホテルへ戻る。帰り道はもう真っ暗。

この日の宿は、今回の横断の旅の計画段階で最も早く予約した「The View」。バレー内にある唯一のホテルで超人気なのだ。少々お高いが、その名の通り部屋のバルコニーからバレーの絶景を間近に楽しめる。

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私たちがチェックインした頃にはすっかり日も暮れ、巨岩のシルエットしか見えなかったけれど、インディアンアートをあしらった素敵な部屋だった。

 

 

バルコニーで夕食を

「とりあえず夕食にしようか」とレストランに向かったが、なんとなく部屋でゆっくり食べたい気分。レストランで持ち帰りできるかを聞くと「もちろんOK」との返事。ビュッフェ形式で、サラダバー、スープ、タコスを大皿に盛ってテイクアウト。2人で16ドル。

部屋で食べることにしたのには、実は理由があった。ここモニュメントバレーはナバホ族居留地のため、飲酒は禁止。ホテルにもお酒は売っていない。(アルコールフリーのビールは売っていたけれど)

なので、車のアイスボックスを部屋に持ち込み、冷えたビールで乾杯することにしたのだ。

部屋のバルコニーのテーブルに料理を並べての夕食。外は真っ暗だが、月明かりに浮かび上がった岩山。見上げればきれいな星空が広がる。

さすがに夜は冷える。夕食後も景色を楽しもうと、寒がりの彼女に部屋中のブランケットとバスタオルを巻き付ける。うーん、まるでミイラみたい。

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22時ごろになると決まって起きる現象が、彼女の “電池切れ” 。突然眠気に襲われるのだろう、この日も予想通りの時間にベッドに倒れ込んだ。そんな彼女を横目に、天気予報をチェックして明日のルートを組み立てる。しかし、眠気には勝てず、気づけば私も夢の中へ・・・。

(なお)

 

この日の走行距離=400マイル

総走行距離=3020マイル

 

 

★私から一言★

二度目のケンカ(?)の舞台となったのは、「Thunderbird Rock」という岩のおひざもと。 

ドライブ旅行をする人にぜひアドバイスしたいのは「ひとの運転に口出すな」ということです。うん。これはホントに。

さて、「駅馬車」や「荒野の決闘」でおなじみのモニュメントバレーはアメリカの原風景のひとつ。が、もともと道なんてなく、ジョン・フォードが映画の撮影のために道路を敷いたというから驚きです。

今から70年も前、ジョン・フォードも同じように巨大な岩山を見上げていたのかな。モニュメントバレーでは他にも「2001年宇宙の旅」や「捜索者」、「アパッチ砦」「バック・トゥ・ザ・フューチャーⅢ」などなど、色んな映画のロケが行われているので、見てから訪れてみるのもおススメです。

あと、馬でぽくぽく行く夕暮れツアーは最高!!!!!!!!

(のん)

 

DAY8に続く。

DAY8 グランドサークルとカナブの悪魔 - アメリカ横断2人旅