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アメリカ横断2人旅

結婚記念にNY→LAをレンタカーで横断した2人の旅日記

DAY8 グランドサークルとカナブの悪魔

 

夜明けの空

4月10日、4時起床。快晴。

旅も8日目。すっかり日常を忘れ、旅に没頭していた我々。さすがに残り日数の短さを感じるようになってきたけれど、まだまだドライブは続く。きょうもどんなワクワクが待っているのか、夜が明けきらないうちに目覚める。

 

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to go, or not to go

早く起きたのには理由があった。午前9時までに200マイル(=約320キロ)先にある「抽選場所」に行く計画があったからだ。

抽選というのは、全米一の絶景とも称される「The Wave」の入場許可証。

The Waveは、風雨による浸食で、まるで「波」のように奇岩がうねるエリア。その奇跡的な美しさゆえ、自然保護区内にあって入場がきびしく制限されている。通りすがりの旅人が訪れるには、ハードルが高い場所なのだ。

ちなみに国立公園のホームページによるとこんな場所を歩けるらしい。

 

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直前の抽選で選ばれるのは一日10人だけ。午前9時に行われる抽選に勝ち抜いた者だけが、翌日に入場できる権利を手にすることができる。その倍率はときに数十倍にも達するという。

無謀にもThe Waveに挑もうとしていた我々だが、いくつかの問題が浮上した。

 

  • 抽選に行くには午前4時には起き、3時間以上の運転が必要
  • 当たった場合、再訪するため近場に宿泊しなければならない
  • 悪天候の場合、散策には困難を伴う

 

これだけのリスクを冒すべきか、頭を悩ませていた。ただ、The wave周辺が雨になりそうだとの予報もあったので、「今回はやめて、部屋からゆっくり朝焼けを楽しもう」という方向で昨夜は一旦落ち着いた。

それでも、「行けるものなら行ってみたい・・・」と胸に秘めていた俺。目覚まし時計をこっそりセットし、念のため早起きしたのだった。

結論から言えば、やはり無謀な挑戦だった。

あまりの眠さに勝てなかったのだ。目覚ましを止め、迷わず二度寝。The waveは次回の楽しみにとっておこう。

 

 

朝焼けに照らされて

改めて6時に起き、朝焼けを待つ。地平線からゆっくりと陽が昇る。

日本から持参したコーヒー豆を、これまた持参したミルで挽いてコーヒーを淹れる。バルコニーに座り、ゆっくりと朝焼けを堪能。

夕焼けも見事だったが、朝日の輝きは荘厳の一言。地球のエネルギーを感じるひとときだった。

 

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フォレスト!!

9時前にホテルを出発。昨日、時間がなくて諦めたフォレストの撮影ポイントを再び探しに行く。
真っ直ぐな道をしばらく走ると、坂道のはるか遠く、車を停めている人の姿が見えた。道の真ん中に立ち、こちらを見下ろしながら写真を撮っているようにも見える。

「もしかして、フォレストポイントかも!」と彼女。

ようやく発見!! 「旅のしおり」の写真と見比べたが間違いなさそうだ。雄大な景色をたくさん見てきたが、この景色にはやっぱり圧倒される。

 

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長い長い直線の道路のため、近づいて来る車が見えても、実際にやって来るまで数分はかかる。道の真ん中に座り込んだり、大の字に寝てみたりしながら思い思いに記念写真を撮る。

キャンピングカーから老夫婦が下りてきた。ドイツから長期旅行中だと言う。おじいちゃんは元エンジニア。昔々、仕事で愛知に仕事に行ったことがあるようで、我々の車を見て、「トヨタはナイスだよ!」と笑顔。

記念に2人の写真を撮ってあげることに。カメラを構えながら、「アイン、ツヴァイ、ドラーイ!」とシャッターを切った。

唯一知ってるドイツ語、何事も勉強しておいて損はない。

 

 

アンテロープ

先を急ぐ。

当初の目的地はグランドキャニオン。しかし、午後の降水確率は60%。予定を変更し、まずは120マイル(=約190キロ)先のアリゾナ州アンテロープキャニオンを目指すことにした。

アンテロープキャニオンも浸食が生み出した絶景の渓谷だ。ロウアーとアッパーの2カ所あり、有名なのはアッパー。でも、我々は事前の情報収集から「より自由に歩き回れる」とされるロウアーを選んだ。

現地で11時半のツアーを予約。正午前後の太陽の光が差し込む時間帯が美しいと聞いていたので、ほっと一安心。受付場所からツアーメンバー15人ほどでぞろぞろと歩く。

 

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地下に向かう急な階段をゆっくり下りると、まるで別世界! なぜこんなにも美しい紋様が描かれるのか、自然の造形美に驚く。

 

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幸い天気もよい。コロラドから来た3人家族の小さな男の子が、行儀良く砂遊びを始めたのが可愛くてほほえましい。一方、中国人の団体客はガイドの注意をあまり聞かず、あちこちで写真撮影。ツアーがなかなか先に進まない。

ガイドも少し困り顔。我々も正直、「うーむ」と思っていた。

ところが、一度彼らに写真を頼んだところ、どのアングルならいい写真が撮れそうか、あれこれ必死で考えくれた。せっかくのアメリカ旅行、思い出に残るようにと、みんなが懸命に工夫してくれている様子。

そんな姿を見ていたら、「悪い人っていないよなぁ」としみじみ実感。同行者に恵まれた1時間15分の楽しいツアーだった。

 

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ちなみに、 階段を上ってキャニオンから出るときは、下の写真のように渓谷の割れ目から出てくる。何だか挟まりそう。

 

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次はどこへ

次なる目的地をめぐり再び作戦会議。グランドキャニオンで夕焼けを見ることを検討したが、天候の回復が見込めない。

初めてのキャニオン。できることならいい天気の日に訪れたい。悩んだ末、キャニオンは明日の天気に期待することにして延期。

さてさて、それならどこへ行こう。あれこれ調べていると、「ザイオン国立公園に行きたい!」と彼女が突然の提案。

ユタ、アリゾナ州を中心に、ここら一帯は「グランドサークル」とも呼ばれ、多くの国立公園が集まるアメリカ屈指の観光エリア。グランドキャニオンもその一つ。

一帯と言っても、端から端までは300マイル弱(=約460キロ)もあるらしい。アメリカは実に広大だ。

我々のような横断の旅だと、見どころが多くて迷うのもグランドサークルの特徴。

そんなわけで、彼女のリクエスト通り、110マイル(=約180キロ)先のユタ州ザイオン国立公園をめざす。

 

 

待望の国立公園めぐり

彼女の運転で、観光拠点の街の一つ、アリゾナ州ペイジを出発。下道を走り、今度はユタ州側の観光拠点カナブを通過。雲行きが怪しくなり始め、雨がぱらつく。

ようやくザイオン到着。初のアメリカ国立公園だ。受付ゲートで年間パスを購入! 園内は広大で、走れども走れどもビジターセンターにすら着かない。

道路の両側には奇岩、巨岩が続き、背後には緑の山並み。何という景色だろう。とにかくスケールが大きい。

 

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不安なバス旅

ようやくビジターセンターに到着。時刻は16時半。

 

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園内の大半は車乗り入れ不可なので、循環バスへの乗り換えが必要。ザイオンにやって来た気分だけでも味わいたいが、どこを散策すればいいのか見当さえつかない。

 

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本格的な山歩きの格好の人や、キャンプ道具を携えている家族の姿も。「一体、このバス、どこまで行くのかな。戻って来られなかったらどうする?」とびびりながらも、意を決して乗車。

ハイキングポイントらしき場所で下り、往復30分ほどの散歩。短時間だったけれど、自分の足でザイオンを歩くのは気持ちがいい。

 

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ロッジが並んでいたり、整備が行き届いたテントスペースがあったり。多くの家族連れが夕暮れ前の時間をのんびりと過ごしている。荷物を見たところ、1泊や2泊のキャンプではなく、1週間ぐらいの滞在に見える。

アメリカ人のこうした自然の楽しみ方、時間の使い方は本当にうらやましい。

日本人ものんびりと余暇を過ごせるようにしないといけないなと思った。慌ただしい横断の旅をしている我々、自戒を込めて。

最後は青空が広がり、きれいな夕日が差してきた。青空と澄み切った空気に山肌が浮かび上がる。あまりの透明感、山が近くなのか遠くなのか、距離感がわからなくなる。

 

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なんだかんだんで2時間以上もザイオンを満喫。文章や写真ではどうしてもスケールの大きさが伝わらないので、ザイオンからの帰り道の風景を動画にアップしてみました。 

ザイオン国立公園(zion national park) - YouTube

 

 

そして、あの夜がやってくる

時刻はもう19時。帰路につきたい時間だが、今夜の宿も決まっていない。

明日のグランドキャニオンに備え、少しでも近づいておきたいところだ。午前中に通過したペイジまでは100マイル(=約160キロ)。さらに先の街まで200マイル弱。

夜の山道を戻るので、どこまで走れるか様子を見ながら、車中で今夜の宿を決めることにした。

 

 

突如現れた虹

半円の虹を見たことがありますか?

日没が迫り、再び雨が降ってきたかと思ったら、急に黄金色のまぶしい夕日が差し込んできた。

そんな幻想的な空に、突然半円状の虹が出現。しかも、二重のアーチを描きながら。

 

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生まれて初めて見た半円の虹。地平線が広がるアメリカならでは。きれいだった。

車から降りてしばし見とれていたが、雨が強くなる。雨の夜道を走るのは初日のドライブで懲り懲り。急いで出発しなくては!

 

 

カナブの悪魔

いまから考えると、美しい虹は何かの予兆だったのかもしれない。

遠くに夕日の残照を残しつつ、空一面に黒い雲が垂れ込め始めた。不気味なほどに美しい、いままで見たこともない不思議な黄昏れどきだった。

 

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暗くなりかける道を急ぐ。雨のせいで時折すれ違う対向車のライトがまぶしく、運転しにくい状況が続く。

「宿が見つからなかったら、夜遅くまで運転することになるかもね」。彼女にそう話しかけ、万が一の長距離運転に備えて仮眠をとってもらうことにした。

心配そうな顔をしながら、助手席のシートを倒す彼女。オーディオの音量を小さくし、彼女が眠ったのを見届けてから、「あと100マイル頑張るぞ!」と自分に言い聞かせる。

 

山道を15分ほど走ったころだろうか。

 

左手に山、右手に牧場を見ながらアクセルを踏んでいた。不意に、牧場の柵の向こう側、大きな木の陰に黒い塊が見えた。「見えた」というより「視界に入った」という表現の方が正確かもしれない。

「ん?牛かな」と思った瞬間、車と同じスピードでついてきた。ほんの数秒だけ

牧場を過ぎた途端、急に悪寒がした。なぜだかわからないけれど、「見てはいけないものを見た」と直感した。はっきり見えなかったくせに、「これはまずいものを見た」という実感だけがあった。

よくよく考えると、牛の大きさなんかではなかった。3~4メートルほどの高さはある異様な黒い影。

さらに不思議なのは、「あれは悪魔か死神だろう」という考えが瞬時に頭に浮かんできたことだった。鳥肌がおさまらない。

このとき、何が怖かったかといえば、お化けでも幽霊でもなく、「この山道で事故を起こすのではないか」という不安だった。

真っ暗な雨の山道。疲れもあった。そこにきて、あの不吉なものを見たせいか急に事故の恐怖を感じたのだ。

スピードを思いきり落とした。音楽のボリュームも再び大きくした。真っ暗な夜道、両手でハンドルを強く握り、いつもより目を見開いて運転を続けた。

正直怖かった。彼女を起こそうかなとも考えたけれど、怖がらせるだけだろうなと思い寝かせたままにした。

 

20分ほど山道を走ると、遠くに人家の明かりが見えてきた。カナブの街だ。ようやく一息ついた。

それにしてもあの黒い影はなんだったのだろう。三十数年、幽霊なんて見たこともないのに。実に不思議な体験だった。

 

 

土砂降りの夜

ザイオンからカナブまでわずか40分。なぜかぐったり疲れていた。

夜の運転は彼女にさせないよう旅を続けてきたけれど、どうにも疲労で運転できそうにない。ガソリンスタンドで車を停め、彼女を起こし、運転を交代してもらうことに決めた。

さっきの「黒い影」のことを打ち明けずにいられなかったけれど、「絶対怖がるだろうなぁ・・・」と思い、しばらく黙っておくことにした。

彼女にはゆっくり走ってもらいつつ、俺は助手席で宿を探すことに。ところが、圏外でネットがつながらない。やむなく、80マイル(=約130キロ)先のペイジの街へ向かうことにした。

 

 

安モーテルで酒盛り

ペイジに着いたのは21時過ぎ。今夜はもう走るのをやめ、スーパーの駐車場で宿を探す。

観光拠点だけあり、モーテルも軒並み100ドル以上。それでも、コインランドリー付きのお得な宿、「モーテル6」を見つけて予約。宿が決まった安心感からか、改めて疲れがどっと出た。

気力を振り絞り、スーパーで夕食の買い出しをしてモーテルへ。ベッドへ倒れ込む。

 

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部屋は質素だけどキレイなつくり。お互い疲れ果ててはいたが、サンドイッチとサラダとスープを並べて食事。

なんだか飲まずにはいられない夜だったので(いつも飲んでいるけれど)、お土産用にアトランタで買ったビールまで開け、ワイワイと楽しく食事。

実に長い、そしてとても不思議な一日だった。

おかげで、文章まで長くなってしまった・・・。(なお)

 

 

この日の走行距離=330マイル

総走行距離=3350マイル

 

 

 

★私から一言★

Zion National Park=ザイオン国立公園を選んだのは、名前の響きに映画『マトリックス』を思い出したから。ちなみに、ザイオンヘブライ語ではシオンと発音し、「聖なる丘」を意味するそうです。英語だと「天国」「約束の地」。

マトリックス』には他に、モニュメントバレーの巨岩の一つ「センチネル」の名前も登場していて(「歩哨」という意味)、ハリウッドの映画人たちはこういうところから名前を取っているんだなぁと変に感心してしまいました。

もう一つ決め手になったのは、地球の歩き方に「谷底&崖の上の両方をドライブできるのが魅力」と紹介されていたことで、車の旅ならではのスポットかもと思ったのが結果的に大正解。

巨大な岩肌が目の前に迫り、日本ではちょっとお目にかかれない迫力の光景に大興奮でした。谷底にあたるエリアにビジターセンターやロッジがあり、ここは小さな子供連れもたくさん。日本の上高地みたいで、アメリカ国内で「Grand Canyonに次ぐ人気スポット」と言われるのも納得です。

 

ただ、帰り道は・・・。山を下りる頃に雨が降り出し、向かう先は雨雲で真っ暗なのに、日の沈む後ろ側は夕陽が赤々と照っている。美しいけれど、なんだかぞっとする一本道を対向車のないまま走り・・・途中で私は仮眠しましたが、ふもとの町に着くまで異様に長く感じたことを覚えています。

これまたなぜか異様に疲れている彼と運転を交代し(訳は翌日になって聞きました)、Pageの街を目指したのですが、雨は一向にやまないし、濡れた夜道は対向車が来るとヘッドライトが乱反射します。これが目に痛く、すごく疲れる。

ラジオも圏外で車内に響くのはエンジンと雨の音、もうかなり聞きなれてしまったiPodの音楽だけ。人家はほとんどなく、数十キロにわたって暗闇の道。

「事故を起こすとしたら今夜だ」と半ば朦朧とした意識の中で思いました。

やっとPageの街の光が見えてきた時、どれほどホッとしたことか。夜道の運転は長旅ではなおさら危険。重々お気を付けください。(のん)

 

DAY9に続く。

DAY9昼編 おいでよ、グランドキャニオン - アメリカ横断2人旅